短編:飛び入り転校生
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体育の時間、今日の授業は野球だった。
現在、太輔がバッター、レンがピッチャー、広瀬がキャッチャーとなっている。
レンは大きく振りかぶり、硬球を投げた。
太輔がバットを振る前に、硬球は勢いよく広瀬のグローブの中へと収まる。
広瀬は顔をしかめ、グローブを取って痛みを払うために手を上下に振った。
広「痛ったぁ」
勇「ストラ~イク」
レン「おい太輔、せめてバット振れよ」
広瀬から硬球を受け取ったあと、レンは硬球を向けて言う。
太「##NAME2##の投球が速すぎんだよ! 見えねえし!」
太輔はバッドの先端を向けながら言い返した。
その隙にレンは再びストレートでストライクを決める。
太「あ!!」
レン「油断すんな。次で打たねえと三振だぞー」
大きく振りかぶり、レンの手からボールが離れると同時に、太輔は歯を食いしばってバットを大きく振った。
ガキイイイインッ…
*****
休み時間、太輔、勇太、奈美、レン、伶でボールの捜索に向かった。
見事なホームランのあと、ボールは学校の裏にある林の中に落ちたのだ。
伶「あの硬いボール、1個しかねえってのに…」
レン「なんで1個なんだよ…」
本当は生徒4人だけで捜索をするはずだったのだが、裏の林は迷いやすいから、と担任の伶がついてきてくれることになったのである。
茂みをかき分けたり、木の枝に引っかかってないかと確認しながら進んでいく。
勇「そっちあったー?」
奈「ない」
しばらく進んでいくと、勇太があるものを発見した。
勇「おーい、こっちに泉があるぜー」
伶「泉?」
泉があるとは知らなかったのか、伶は首を傾げる。
生徒と教員は、手を振る勇太のもとへと集まった。
茂みの向こうには確かに広大とは言い難いが、泉が存在している。
伶「こんな場所があったのか…」
レン「おい、まさかここにボールが落ちたんじゃ…」
太「潜って捜せってか…」
泉をのぞいてみるが、けっこう深そうだ。誰も足がつかないだろう。
全員に諦めの色が浮かんだ途端、泉の真ん中がボコボコと泡を立たせて騒ぎ出した。
驚いてそれを凝視していると、そこから女性が出現した。
全員「!?」
泉の上に立っていることより、その女性に驚いた全員。
由紀恵だったからだ。
ユ「あなた達が落としたのは、どちらかしら?」
太「ユ、ユユユユ、ユキエさん!?」
レン「なにやってんスか、教頭先生」
2人は驚きながらも、バールを取り出し、殺気を放つ伶を取り押さえる。
ユ「私はこの泉の精です。ユキエさんでも教頭先生でもありません」
笑顔が眩しい。
伶「どの年の口が物申してんだ!!」
由「お、なんだ、おまえらも見つけたのか」
背後から茂みをかき分け、由良がやってきた。
奈「由良先生?」
レン「「おまえらも」って、由良もこの泉知ってんのか?」
由「ああ。なんかもの投げ入れてみたか?」
太「そういや、ボール…」
全員は泉の精に振り返り、泉の精が両手に持っているものに視線を移す。
泉の精は微笑みながら尋ねた。
ユ「あなた達が落としたのは、この金のボールですか? それとも、この汚らわしいボールですか?」
レン「汚らわしいの使い方間違ってないか? あたしらそれで野球してたのに…」
レンがツッコんだあと、代表として勇太が答える。
勇「オレ達が落としたのは、その汚らわしいボールです」
ユ「正直者には、この金のボールを差し上げましょう」
そのまま勇太の手に収められるかと思ったが、泉の精は大きく振りかぶり、
ゴッ!!
太「ばわあ!!?」
太輔の顔面に投げつけた。
奈「叶―――!!」
奈美は、流血して倒れている太輔に駆け寄り、お迎えにきた天使をしっしっと手を払って追い返す。
レン「生の金塊だからな…」
由「たまに荒い時があるから気ィつけろ?」
伶「先に言えよ」
太輔も蘇生し、全員は改めて泉をのぞいた。
暗くて人影どころか何も見えない。
伶「しっかし、なんでババアの姿なんだ?」
由「ある意味適任だろ」
棒付きキャンデーを舐めながら、さらりと言った。
ちょうど舐め終わり、
由「ん…」
棒を泉に放り投げる。
レン「あ、環境破壊」
由「見てろ」
再び泉の精の登場。
ユ「あなたが落としたのは、この高級砂糖味の飴ですか? それとも、このゴミですか?」
由「ゴミ」
ユ「正直者には、この高級砂糖味の飴を差し上げましょう」
由良が受け取ったあと、泉の精はさっさと帰ってしまった。
由良はさっそく新たな飴を舐め始める。
由「たまにハズレがある。この前はカマキリ味に当たった」
レン「……どこの魔法学校のお菓子だよ。カマキリ食ったことあんのか?」
そんな話をしてる間に、勇太は足下に見つけたダンゴムシを拾い、泉に放り投げた。
何度も呼び出されても、泉の精は嫌な顔ひとつせず、微笑みながら泉から登場する。
ユ「あなたが落としたのは、このヘラクレスですか? それとも、このダンゴムシですか?」
太「レベル高っ!!」
レン「ムシってことしか接点ないし」
勇太は目をキラキラと輝かせながら正直に申した。
勇「ダンゴムシです!」
ユ「正直者にはこのヘラクレスを差し上げましょう」
勇太はヘラクレスを手に入れた。
レンは足下にあった枝を拾い、泉に投げようとする。
レン「投げ入れたら、魔法の杖になるかも…」
太「あっ、次オレが入れる!」
レン「誰が入れても同じだろー」
2人とも早く試してみたいのか、枝の端同士をつかんで引っ張り合った。
伶「おい、順番だじゅんば…」
伶が2人の引っ張り合いを止めようとしたとき、
ポキッ…
枝は真ん中で折れてしまった。
2人は後ろに倒れたのだが、レンのすぐ背後には泉があったのだ。
ザバアンッ!
全員「!!?」
その場にいた全員が仰天し、泉を囲ってのぞきこむ。
由「レン―――!」
プクプクと浮いていた空気の泡はやがて消えていった。
レンの姿は見えない。
太「レン―――!! うそっ、オレのせい!?」
伶「さっきのはどう見ても…」
太輔の顔がみるみる真っ青になる。
勇「次のお迎えは天使の反対だな」
太「なぅ!!?」
子供は容赦ない。
伶「とにかく、できるだけ長い棒かなにかを突っ込んで捜すしか…」
伶が言いかけたとき、泉から泉の精が登場した。
今度は両手になにも持っていない。
しかし、眩い微笑みは相変わらずだ。
ユ「あなた方が落としたのは、高校生の北条さんですか? それとも、大人の北条さんですか?」
焦っていた太輔は後先考えず答える。
太「高校生のレン!!」
由・伶・勇「あ!! バカ!!」
ユ「正直者には、大人のレンさんを差し上げましょう」
太「へ? や、ちょっと待った! 落ちた奴返してくれ!」
太輔は思わず手を伸ばしたが、泉の精は微笑んだまま泉へと帰っていった。
勇「レン姉ちゃ―――ん!!」
奈「!」
奈美は泉の中に人影を見た。
人影はこちらに近付いてきて、顔を出す。
Aレン「ぷはっ…」
レンだ。
太「レン!」
急いで引き上げる。
太「よかった。もう戻ってこないかと…」
由「待て!」
全員、由良の方に顔を向けた。
由良は真面目な顔だ。
かと思えば、
由「そいつ、大人レンだ。おっぱいがボリュームがアップしてる!」
太・勇「どんな見分け方!?」
Aレン「あ、わかった? さすが由良」
嬉しそうな笑みを浮かべる大人レン。
ちなみに、A=アダルト=大人。
伶「ちなみにいくつだよ」
Aレン「とりあえず、20代後半って言っとく」
高校生のレンより髪は肩を越し、表情は柔らかい。
奈「ややおとなしめだな」
太「大人だけに」
本人と違うところは、周りを気にすることなく由良にもたれてるところだ。
奈・伶(未来じゃ、遠慮なくなついてるのかー)
Aレン「おまえより大人になったつもり」
大人レンは由良の顔を見つめながら言った。
由良はニヤリと笑みを浮かべる。
由「「脱げ」っつったら?」
Aレン「本当に脱いでほしい?」
その時、泉から水の音が聞こえた。
全員はっとしてそちらに顔を向けると、レンがびしょ濡れの状態で這い上がってきた。
レン「う…っ」
勇「自力で這い上がってきた!」
太「レン!」
太輔が駆け寄って引っ張り上げようとしたとき、
ザバンッ
太「!?」
レンは太輔の手首をつかんで泉に引きずり下ろした。
太輔と入れ替わるように泉から上がる。
伶「……かなりキレてる」
表情が般若の如く恐ろしい。
Aレン「意外に早かったな。さっすが」
レン「自分に褒められても嬉しくねえんだよ。さっさと泉に帰れ」
泉で何があったのか、かなり不機嫌だ。
Aレン「あたしの出番、もう終わりかよ。せっかくだから残ってもいいだろ」
レン「じゃあ力尽くで…!!」
数分後、レンはうつ伏せに倒されていた。
由「まあ、経験値の差で大人が勝つだろな。同一人物だし。若いし」
当たり前のことを述べる由良。
レン「く…」
Aレン「由良ー、おまえはどっちに残ってほしい?」
由「ん―――。もったいねえけど、そいつかな。成長過程楽しみながら描きてえし…」
あまりに平然と言う由良にレンは倒れたまま茫然とし、はっと顔を真っ赤にした。
レン「どういう意味だ、それ!?」
大人レンは別にショックを受ける様子を見せることなく、笑みを浮かべる。
Aレン「だと思ったよ。それじゃ、あたし帰るわ」
レン「ま、待てよ! あたしまだ勝っても負けてもねえし、勝手に話進めて帰るな!」
Aレン「ガキ。そこは素直に「どうぞどうぞ、お帰りください」ってとこだろ。もうちょっとココ大人にしろ」
大人レンは、レンの額を小突いたあと、泉へと帰っていった。
勇「お…、大人…」
レン「いったいいつのあたしなんだ?」
突かれた額を擦りながら、レンは立ち上がり泉を見つめる。
ところでみなさん、なにか忘れてませんか?
奈「叶は!?」
そこで全員は「あ」と気付いた。
レン「そういや、あたしが落としたっきり…」
由「あがってこねえな」
勇「また泉の精が出るんじゃねえ?」
待つこと5分。
なんの反応もない。
「なんで?」と全員が首を傾げ、全員がはっと同時に気付いた。
泉の精が由紀恵そっくりだということに。
伶「サルベ―――――ジ(引き上げ作業)!!!」
くわっとした伶がバールを振り上げる。
間に合えばいいのだが…。
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