短編:飛び入り転校生
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七夕の前日、せっかくなのでみんなで天体観測をしようと誰かが提案し、当日、生徒8人、教員4人でキャンプ場へとバスで向かうのだった。
教員は伶、華音、由良、森尾だ。
バスの中は騒がしかった。
トランプを楽しむ太輔と奈美と広瀬と恵、バスの中を駆け回る葵と勇太。
レン「センセー、由良先生が300円以上の菓子類持ち込んでまーす」
由良の後ろの席にいたレンが手を挙げる。
由良は構わずリュックから取り出した菓子類を食べ続けた。
それで黙っている教員生徒ではない。
葵「あーっ、ずるーい!」
森「おまえ…、教師の自覚あるのか…」
由「大人は汚いってことを教えてんだ」
森「もっとマシな言い訳しろ!!」
教員も騒ぐなか、トランプの札を選びながら太輔が呟いた。
太「大丈夫なのか、このキャンプ」
伶「無事に終わったら面白くねえだろ」
煙草の煙を吐きながら伶は言う。
*****
キャンプ場に到着した。
森林に囲まれ、空は真っ青だ。
テントを張って荷物を置いたあと、生徒はエプロンを装着し、伶のもとに集合する。
伶「これから昼御飯を作ってもらう! 各人、担当を決めて作れよー」
しかし、伶は重要なことを忘れていた。
教員達は席に座って生徒達が作り終わるのを待っていたが、
ドスッ!
教員全員「!?」
いきなり包丁が飛んできて、机の真ん中に突き刺さったのだ。
華「ひゃ…!?」
レン「すんませーん」
駆け寄ってきたのはレンだ。
レン「手が滑っちゃって…」
そう言いながら突き刺さった包丁を引き抜く。
顔は申し訳なさそうだ。
伶「手が…」
森「滑った…?」
表情から見て本当のようだ。
調理場に戻るレンの背中を見送りながら、伶は忘れていたことを思い出しかけていた。
伶「そういや…」
太「わ!? 奈美!!?」
教員全員が奈美のいる方向に顔を向けると同時に、細かいニンジンや玉ねぎが飛んできた。
森「うわっ」
ズダダダダダダ!!
奈美、みじん切り中。
まな板が傷だらけになり、切った野菜はその勢いで教員達のところへ飛ぶ。
太輔達は奈美の背後で慌てふためていた。
レンはそっちのけで、これでもかってくらいの強火で野菜を炒めている。
伶「まずい! あの2人にやらせたら…!」
森「もうそのまんまの意味で…!」
伶と森尾は急いで席を立ち上がり、調理場へと走った。
由(菓子持ってきといてよかった…)
由良はそう思いながら、マシンガンのように飛んでくる野菜を皿でガードする。
華音は当たる野菜に「痛い痛い!」と騒いでいた。
昼御飯を済まし、夜までまだまだ時間があるため、生徒達だけで山の中に入り、昆虫採集へと向かった。
それぞれ、手には虫取り網、肩には虫籠をかけている。
勇「高校生にもなって虫取りかよ」
太「言っとくが、おまえら本来小学生…」
葵「やったー!」
さっそく葵がなにか捕まえたようだ。
急いで太輔に見せにくる。
葵「セミ~♪」
ミンミンゼミだ。
恵「きゃっ」
恵と奈美には不人気のようだ。
レンはそのすぐ傍で網を振った。
レン「お、見ろ!」
レンが捕まえたのはオニヤンマだ。
男子達がレンの周りに集まる。
広「すごーい」
太・勇「スッゲー」
男子達は目を輝かせるが、女子達にはいまいち価値がわからない。
ただのトンボにしか見えなかった。
勇太もあとからアゲハ蝶を捕まえ、太輔も負けじと虫を捜す。
太「こういう時は…」
太輔は手ごろな木を見つけて右脚に勢いをつけ、
ドンッ
蹴りを入れた。
ボト…
木からなにか落ち、太輔達がその周りに集まる。
同時に、全員の顔が真っ青になった。
太「……………」
勇「…なんか…、これ…」
広「っぽいよね…」
敵の襲撃にでもあったのかと聞きたくなるような穴の空いたものだ。
しかも、でかい。
穴越しから不気味な音が聞こえてきた。
レン「なんか、コレから殺意を感じ……」
レンが言いかけたところで、それは一斉に飛び出す。
ブブブブブッ!
生徒全員「ハチだ―――!!」
太輔が落としたのはハチの巣だった。
しかも、運の悪いことにスズメバチである。
住処を荒らされ、スズメバチの怒りはとどまるところを知らない。
太輔達は刺されてなるものかと全力で逃げた。
それでも振り切ることができない。
勇「なんてもん落としてくれんだバカ輔!!」
レン「あいつらどこまでも追ってくるぞ!」
その時、前方にルドガーの姿が見えた。
ルドガーの体にはオオクワガタやカブトムシがとまっていた。
レン「なんかいろいろスゲーことなってるぞ、あいつ。どうしよう、ツッコみどころに困る…」
太「逃げろ―――! ハチだ―――!」
ル「“生”とはなんだ…」
太・レン「今逃げることに決まってんだろ!!」
逃走の様子を見せないルドガーの肩を2人がかりでつかんで走る。
ブブブブブ!
ハチは主犯の太輔から襲いかかった。
太「うわああ!?」
奈(叶のピンチ!)
奈美は素早く両手の甲に氷の爪を構え、ハチに向かって投げつける。
しかし、数センチのハチに当たるわけがなく、そのまま通過して木に刺さった。
太「ちょっと待った! それやったら…」
ボボボボボッ!!
生徒全員「ギャ―――!!」
氷の爪は発動し、太輔達は危うく氷の刃に殺されかける。
恵「きゃああ!」
ハチは続いて恵に襲いかかった。
レン「恵!」
##NAME2##は両手にソフトボール状のプラズマを携え、
レン「ハチ公が…、人間様襲ってんじゃね―――!!」
後先考えず投げつける。
ボッ!
プラズマが当たった木に火がついた。
太・勇「火事だ―――!!」
その後、キャンプ場で伶にこっぴどく怒られた。
*****
昼のこともあり、夕飯は男子に任せ、女子達は先に風呂に入ることにした。
太輔と勇太と広瀬とルドガーが調理をしている間、伶と森尾は席座って麦茶を飲んでいた。
伶「危うく、管理人に追い出されるとこだった」
森「お疲れ様です…」
伶に同情し、ガラスのコップに麦茶を追加する。
勇「まだできてねーって」
由「もういいじゃんよぉ」
太「さっきもやっただろ」
由「足りねえよぉ」
由良はつまみ食いをしようとし、2人に目撃されて失敗した。
伶と森尾は呆れてその光景を眺めている。
伶「あいつ…」
森「子供だな…」
同時に麦茶をすすった。
その時、風呂上がりの葵が帰ってきた。
頭にタオルをかぶせたまま、太輔に近寄る。
太「お、早いな」
葵「タイ兄タイ兄!」
太「どうした?」
葵「すごかった…」
太「ん?」
葵「レンと奈美のおっぱい、すごかった―――!!」
伶・森「ぶっ!!」
太・勇・広「なっ…!!?」
由「ほー?☆」
噂をすればなんとやら、女子達は湯気を立たせながら帰ってきた。
恵「はー、さっぱりしたー」
華「ごはんできたー?」
レン「? どうした?」
由良以外、男子達は目を逸らしている。
太・勇・広・伶・森「いや…」
由(お子ちゃまめ)
その夜、キャンプファイヤーを終えたあと、全員は短冊を手に、伶のもとに集まった。
伶「全員願いこと書いたかー?」
生徒全員「はーい」
森「由良、笹持ってきたか?」
笹の担当は由良のようだ。
由良はそれを肩に担いで持ってきた。
由「心配すんなって」
全員の前にどんっと置いたのは、大きな竹だった。
森尾の前にレンがツッコむ。
レン「なぁ、それ、竹じゃね? 絶対どっかから取ってきただろ」
由「似たようなもんだろ」
アバウトである。
仕方なく、全員は願いを書いた短冊を竹に結び始めた。
奈美は願いを込めるように手を組む。
奈(“叶がこっちに振り向きますように”…!)
レン「高いな…」
奈美の短冊はてっぺんに結ばれていた。
太「“脱! 犬輔!”」
勇「“バカ犬の願い却下”」
太「んなあ!?」
勇太は先手を打っていた。
伶・森「“苦労人脱却”」
2人は手を2回鳴らしておがむ。
明らかに勘違いしている。
レン(この2人、同じ匂いがするなぁ)
密かに思うレン。
ふと目線の先にあった白い短冊を見ると、
レン「!?」
“アクロの心臓”と書かれてあった。
広瀬だとすぐに察し、周りを見回し、「願いがかなえられる前に!」と即座に回収する。
レン(そういや、由良は?)
由良が書いていた黄色の短冊を見つけ、内容を見た。
レン(“絵が描けれりゃあ、それでいい”)
てっきり“お菓子がほしい”などの子供みたいな願いごとだと思っていた。
これ以上願いはいらない、ということなのだろうか。
レン(あいつらしいっちゃ、らしいけど…)
その時、背後に気配を感じた。
同時に、後ろから左肩にアゴをのせられる。
由「レンの願いはー?“ナイスバディになりたい”?“頭が良くなりたい”?“お金持ち”?」
予想にしても、ベタな願いごとだ。
レン「んなわけねえだろ」
由良から離れ、水色の短冊を両手で隠す。
由「オレの見たくせにー」
レン「しっしっ」
由良を追い払うために短冊から片手を離したとき、由良の目がキラリと光り、由良はレンの持っている短冊に手を伸ばし、奪い取った。
レン「あ!!」
レンは声を上げ、由良は素早く短冊の内容を見る。
“先生になりたい”と書かれていた。
由「赤点がなんか言ってんぞ」
レン「うっせー! 返せ―――!!」
短冊を奪い返すために、レンは由良を追いかけまわした。
キャンプ場をグルグルと回る2人。
ほとんどの者がレンの願いの意味に気付いていた。
森「願いごとも素直じゃない…」
華「ね―――。もっと一緒にいたい、って書けばいいのにー」
葵「あ! 流れ星!」
葵が指さした方向を見上げると、またひとつ星が夜空を通過した。
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