短編:飛び入り転校生
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勝又に眼帯のことを注意されたあと、森尾健一郎は手鏡に映る自分の顔を見つめながら考える。
森(取れと言われても、肉球をさらけ出して歩けるわけないじゃないか…)
そっと眼帯を取り、左頬の肉球型の火傷を憎々しく睨みつけた。
「くっ…」
そこでふと気付く。
「そうだ…、別に眼帯じゃなくても……」
*****
翌日、森尾はガーゼを火傷の部分に貼り付けて学校の門を潜った。
ガーゼのおかげで、火傷はしっかりと覆われている。
久しぶりの両目に映る世界は眩しかった。
1時間目から担当の数学だ。
教材を抱え、生徒達の教室へと向かう。
廊下を渡りながら、頬のガーゼに手を当てた。
森(違和感あるけど…、みんなびっくりするだろうなぁ。ちょっとしたイメチェンだし…)
生徒達の反応が楽しみで、口元に笑みが浮かぶ。
その時、ちょうど授業の始まりのチャイムが鳴り響いた。
教室の扉に手をかけ、スライドさせて開ける。
中を見ると、生徒達は雑談に花を咲かせていた。
森「おはよう」
しかし、森尾が声をかけても生徒達は見向きもしない。
声が聞こえなかったのだろうかと思った森尾は、もう一度声をかけた。
森「おい、授業だぞ」
それでも生徒達は構うことなく雑談を続ける。
タチの悪いボイコットだと思った森尾が生徒達に向かって怒鳴ろうと口を開けたとき、レンが教卓に顔を向けた。
レン「先生、遅くないか?」
太「あ、そういやそうだな。とっくにチャイム鳴ったのに…」
森(へ?)
生徒達のわけのわからない発言に森尾は困惑する。
勇「自習になるわけ?」
恵「も、もう少し待ってようよ…」
広「呼びに行った方がいいんじゃない?」
生徒達のそんな会話を聞きながら、森尾は手を振ったり声をかけたりしたが、生徒達は気付かないどころか目も合わなかった。
森(……無視?)
*****
いったん教室を出た森尾は、職員室へとやってきた。
今日は一言も他の教員達と会話をかわしていない。
森「伶先せ…」
伶「そろそろ次の授業か…」
森「麻生せ…」
麻「論君、今日も勧誘作業のお手伝いお願いしますねー」
論「はーい」
生徒どころか、教員達まで森尾をシカトした。
無人となった職員室の自分の席にぽつんと座った森尾健一郎は考える。
森(なんで先生達まで…。もしかしてオレのこと、見えてない!?)
困惑のあまり、非現実的なことを考えてしまう。
手鏡でさっと自分の顔を見た。
森「…よかった…、映ってる」
そうでなくては困る。
ほっと胸をなで下ろしたあと、はっと気付いた。
森「まさかあいつら、アレでオレを識別してたのか!?」
▼←アレ
すぐに引き出しにしまった眼帯を探し出す。
森「あいつらぁ…っ、オレのこと再確認できたら皆殺しにしてやる!」
しかし、しまっておいたはずの眼帯が、いくら探しても出てこない。
森「あ…、あれ…? 眼帯が…」
かき回して捜しても、眼帯は出てこなかった。
しばし、放心状態となる。
森「……もしかして…、ずっとシカトモード…?」
不安に駆りたてられ、勢いよく席から立ち上がり、廊下を飛び出した。
由良と華音の反応はどうか気になったからだ。
ちょうど、廊下の先に2人の背中があった。
肩を並んで歩く2人は、会話に盛り上がっている。
森「由良! 華音!」
大声で呼んでも、2人はこちらに振り向かない。
さすがに泣きたくなってきた。
森「華の…、由……」
実際、森尾の目に涙が浮かぶ。
森尾は走って由良の背部の服をつかんで止めた。
森「む…、無視…するなよ…。オレ…、ちゃんと…ここに……」
由「……………」
由良はゆっくりと森尾に振り返る。
森「!」
由良は意地悪な笑みを浮かべ、その左目には森尾の眼帯がかけられていた。
眼帯には白の文字で“ドッキリ”と書かれている。
隣の華音が耐え切れずに噴き出した。
華「ひゃはははは! 健ちゃんマジ泣き―――!」
由「ぎゃはははっ、オレらに相手してもらえなかったのがそんなに悲しかったか!?」
ブチィッ!!
その日は珍しく、森尾がマジギレした。
*****
その乱闘騒ぎは教室まで轟いていた。
太「あ、やっぱり始まった」
勇「そりゃ当然だろ。オレでもキレる」
生徒と教員達もドッキリ企画に参加させられていたのだ。
計画の発案者は由良である。
レン「だからあんまし乗り気じゃなかったんだ。森尾先生可哀そうだろ…」
森「由良―――!!」
生徒達が話していると、廊下から騒がしい足音が近付いてきた。
由良が教室に突入し、後ろからカマイタチが飛んでくる。
生徒全員「わ―――!!?」
巻き添えを食らう生徒達。
*****
校長からのお知らせ
以下の2名は校内器物破損で1週間の謹慎処分に処する
由良匠
森尾健一郎
レン(扱いがすでに生徒…)
掲示板に貼られた連絡を見てレンは肩を落とした。
レン(森尾先生が戻って来るまでに、お詫びの品買っとくか…)
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