短編:飛び入り転校生
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消灯し、カーテンも閉め切った教室内で、生徒達は机を後ろに下げ、その前で円になって座っていた。
勇太が懐中電灯を手に、学校の七不思議について語る。
太「ゆ…、勇太…、七不思議ってなんだよ…。小学校じゃあるまいし」
早くも太輔はびびっていた。
その隣で、レンは欠伸をしている。
勇「実は、この学校にも七不思議は存在するんだ。
1つ目、午前0時に潜ると死ぬ校門。
2つ目、水浸しの職員室。
3つ目、中庭の呪いの儀式。
4つ目、更衣室の男の霊。
5つ目、血が滴る2階廊下。
6つ目、人が消える曲がり角。
7つ目、地獄に引きずりこむ女の霊」
恵「そんな話、初めて聞いた…」
勇「ま、オレも最近知ったんだけどね」
太「が…、ガキだな~。そんなウワサ…、し…、信じてんのかよ…」
太輔は余裕ぶろうとするが、体が小刻みに震えていた。
レン「震えてるぞ、太輔」
勇「ホントは怖えんだろ? 認めちまえよ♪」
太「だ…っ、誰が…!!」
森「コラァ!!」
そこへ、森尾が勢いよくガラッと扉を開けて教室に入ってきた。
レン「あ、森尾先生」
森「なんで授業の用意をしてないんだ! 電気をつけろ! カーテンも開けろ! ……ん?」
太輔は白目をむき、泡をふいて仰向けに倒れている。
恵が手を上げて報告した。
恵「森尾先生! 太輔なら気絶しています」
森「???」
森尾の突然の登場に驚いて気絶したのだ。
*****
学校の1日が過ぎ、このまま朝を待つだけかと思われたが、午後11時55分に学校の校門前に3人の男女がいた。
太輔と奈美とレンだ。
太「目が覚めたらユータに笑われるし…、オレをこんな目に合わせたウワサの真相を暴いてやる!」
まるで戦争にでも出向くような格好だ。
頭に装着されたライトが眩しい。
奈「だからって…」
レン「なんであたし達まで…」
帰宅と同時に突然呼びだされた2人。
太「だって、魔物に襲われたら、オレ一人じゃ太刀打ちできないし」
レン「遠回しにこいつあたし達に「魔物と戦え」って言ってんぞ。真相暴くんだろうが。七不思議以前に魔物を信じるな」
鋭いツッコみを入れられるが、太輔は食い下がる。
太「なあ~、頼むよ~。食堂の“幻プリン”、1週間おごるからさ~」
“幻プリン”とは、食堂で販売されている入手困難なプリンだ。
美味なうえ、数も少ない限定品なので、昼休み開始と同時に売り切れてしまう。
奈美とレンはまだ1度も食べたことがない。
2人は顔を見合わせ、ため息をついた。
奈「わかった。行こう」
レン「もうすぐ午前0時。1つ目の七不思議だ」
しかし、校門を潜ろうとしたとき、慌てて太輔は2人の肩をつかんで阻止する。
太「待て待て! いきなり“潜ると死ぬ校門”を潜るのか!?」
レン「んなこと言っても、検証しないわけにはいかねえだろ。真相暴くんじゃなかったのか?」
レンは太輔の手首をつかんで引っ張った。まるでお母さんだ。
太「わ―――っ! 引っ張んなって!」
奈「!!」
あとから校門をくぐった奈美は、殺気に気付いた。
奈「止まれ!!」
ドンッ!
太・レン「!?」
いきなり、太輔の足下の地面が抉れた。
太「な…!?」
銃の跡だ。
そう思ったとき、
ドドドンッ!
銃撃が続いた。
太「うわわわわ!」
レン「銃弾が飛んでくるということは…!」
レンは、すぐに太輔の首にかけられた双眼鏡をつかみ取り、辺りを見回した。
すると、屋上でこちらを狙っているD2を発見する。
レン「あ! D2先生!」
D2「侵入者発見」
奈「私達だって気付いてるのか!? あの人!」
レン「任務を遂行するのが奴だ!!」
奈美とレンは、D2の銃撃をかわしながら、太輔を連れて校内へと逃げ込んだ。
*****
太輔達は早くも疲れた様子で廊下を渡っていた。
太「あんなんだったら、事務員のおっちゃんに捕まった方がまだマシだ」
レン「ま、これで1つ目は検証できたな」
太輔はメモ帳にメモをする。
“1つ目は、D2先生の狙撃”
職員室のドアに手をかけ、ゆっくりと入った。
太「お、押すなよ、レン」
レン「あたしは早く帰って寝たいんだよ」
奈「それにしても、不用心だな。なんで鍵をかけないんだ?」
その時、足下から、ピチャン、という音がした。
太・レン・奈「!」
足下が水浸しになっている。
太「ふ…、2つ目の“水浸しの職員室”…!!」
奈「み、道みたいになってる…」
まるで這いずりまわったかのようなあとがあった。
太輔達はおそるおそる、それをたどっていく。
すると、それは金庫の前で途絶えていた。
金庫の扉は、わずかだが、少し開いている。
3人は顔を見合わせ、頷いたあと、小声で「せ―――の!」とコブシを振り上げ、ジャンケンをした。
奈美とレンがチョキで、太輔がパーだ。
太「な…、なんで…」
レン「頭がパーだからだろ。ほれ、行け」
太輔は泣きながら金庫に近付く。
ドアコックをつかみ、おそるおそる金庫の扉を開けた。
ズルリとなにかが出てきた。
奈・レン「…!!」
太「未確認生物―――!!」
気絶しかけたとき、奈美ははっと気付いた。
奈「お、落ち着け、叶! よく見ろ!」
太「へ?」
論「Zz…」
よく見ると、それは液状化した論だった。
呑気に眠っている。
レン「こんなところで寝泊まりしてるのか」
怖くないのだろうか。
太輔は論を金庫に戻し、職員室を出た。
太「な、なんだよ、全然大したことねえな」
奈「物の見方によっては、大したことあると思う」
レン「この調子でどんどん解明していくか」
“2つ目、金庫で眠る論”
太輔は真っ青になっていた。
中庭から釘を打つ音が聞こえるからだ。
3つ目の“中庭の呪いの儀式”だ。
太「き…、聞こえる…!」
レン「なあ、もうやめろやそのリアクション」
奈「どうする?」
中庭は真っ暗で、入るには少し勇気がいる。
レン「怖がりもいるし、あたしらだけで行こうぜ」
太「え、オレ置いてけぼり!?」
奈「すぐに帰ってくるから…」
奈美とレンは窓を飛び越え、中庭に着地した。
太「早く帰ってこいよ~」
捨て犬のような姿だ。
2人は懐中電灯を手に、釘の音のする方へと進んでいく。
奈「予想は?」
レン「大工さんが深夜作業してんだろ」
だんだん音に近付いていく。
ここでレンは懐中電灯を消し、奈美とともに様子を窺った。
中庭に立つ大きな木の下に、何者かがいた。
森「恨めしやああああ、叶太輔ええええ!!」
森尾が呪いの衣装を着ながら、わら人形を釘で打ち付けている。
奈・レン「……!!!」
森「オレの顔にこんな…っ」
再び激しくわら人形を釘で打ち付けた。
奈美とレンは互いの顔を見合わせたあと、こくりと頷き、そっとその場を去った。
太「あ! どうだった?」
戻って来た2人を見た太輔は尻尾を振って喜んだ。
レン「あ…、ああ…」
奈「……………」
太「? どうした? 顔、真っ青だぞ。ま…、まさか……」
奈「大工さんだった」
レン「大工さんだった」
太「な、な~んだ、そっか。それじゃ、“3つ目は大工さん”、と」
正しくは、“3つ目は森尾先生の本格呪術”。
奈・レン((本当のことは言わないでおこう…))
*****
続いて、太輔達は2階の突き当たりにある女子更衣室へと向かった。
レン「待て。まずあたし達が確認しにいくから」
奈「女子更衣室だし」
太「わ…、わかったよ…」
先程のこともあり、奈美とレンはおそるおそる中に入った。
更衣室の中は真っ暗で、唯一、窓から射し込む月明かりだけが頼りだ。
レン「霊…いないな…」
奈「男の霊だから、男子更衣室じゃないのか?」
そう思って更衣室を出ようとしたとき、
ガタン…
レン・奈「!?」
突然、奥のロッカーから音がした。
レンと奈美はおそるおそる振り返り、じりじりとロッカーに近付く。
レン「太輔つれてくればよかった…」
奈「押しつけるな」
小声で言い合ったあと、奈美は手を伸ばし、ゆっくりと扉を開けた。
奈・レン「!!」
岡「ご…、ごめん、挟まっちゃって…」
岡田がロッカーの中におさまっていた。
奈美とレンは青筋を立たせる。
レン「……なんでいる?」
岡「え…と…、間違えちゃって…。体操服、忘れちゃった♪」
2人は笑みを浮かべた。
奈「そうか、体操服か…」
レン「真っ暗だしな、そりゃ間違えるよな~」
はははははっ。
奈美はロッカーの扉を閉め、レンは窓を開ける。
そのあと、2人がかりで岡田の入ったロッカーを持ち上げた。
奈「それ以前に!!」
レン「生徒じゃねえだろ!!」
ブンッ
岡「ぷぎゃああああ!!」
ドスン…
太「な、何事!?」
奈・レン「お祓い」
“4つ目、不審者侵入”
*****
女子更衣室をあとにし、太輔達は廊下を渡り歩いた。
レン「もう帰りたい…」
奈「私も…。知りたくなかったことを知って疲れた…」
太「あと3つだし、もうちょっと頑張ろうぜ」
レン「全部解明するまで付き合うけどさー…」
太「そう言ってもらえると助か…、つめたっ」
突然、太輔が立ち止まり、2人も立ち止まった。
奈「どうした?」
太「いや…、首に水滴が……」
太輔はうなじを擦り、てのひらを見る。
太「!!?」
奈・レン「!!」
赤い水滴が付着していた。
太「こ…、これ…っ、ちちち、血…」
レン「バ…、バカ…、そんなはず…」
太輔の恐怖心が移る。
その時、ボタボタと天井から再び赤い水滴が落ちてきた。
奈・レン「――――!!」
太「ぎゃあ―――!!」
耐えられなくなった太輔は、廊下を駆けた。
太「わ―――!! わ―――!!」
逃げる太輔を、奈美とレンが追いかける。
奈「待て叶!!」
レン「ダメだ、あいつパニック起こしてる!」
太輔は階段をおりようとしたが、何者かにぶつかってしまった。
太「わぶっ」
?「!?」
太「すみません―――! もうしません―――!!」
踵を返し、3階へとのぼっていく。
?「な、なにをだ…?」
奈「あれ? 森尾先生!?」
森「あ、おまえ達、なんて時間に来てるんだ。学校はお遊び場じゃないんだぞ」
レン(学校を儀式場に使うような人に言われたくない)
太「ぎゃあ―――!!」
上からまた太輔の悲鳴が聞こえた。
奈「またなにかあったのか?」
レン「そういえば、この上の曲がり角って6つ目の…」
“人が消える曲がり角”の場所だ。
奈「叶!」
森「あ、おい、どこへ行く!?」
レンと奈美は急いで上へと上がる。
森尾もあとを追った。
奈「!?」
レン「な!?」
森「うわっ!?」
太輔の上半身が壁に埋まっている。
いや、よく見れば、壁に挟まれていた。
太輔は足をバタバタをさせながらそこを抜け出ようとしている。
レン「回転扉? 忍者屋敷みたいだ」
森「誰が作ったんだ?」
太「抜いてくれ―――!」
奈美達の気配に気づき、太輔は壁の向こうから訴えた。
奈美は太輔の足をつかんで引っ張るが、太輔が痛がるだけだった。
レン「右しか回らないようだな…、と…なると……」
奈・レン・森「せ――の!」
3人は勢いをつけて回転扉の壁にぶつかる。
ドン!
4人は向こう側の床に倒れ込んだ。
由「よう、なにやってんだおまえら?」
そこには作品を制作中の由良がいた。
筆を持ったままこちらに振り向き、首を傾げる。
森「おまえがなにやってるんだ!?」
そこは異空間でも霊界でもなかった。
見覚えのある場所だ。
レン「美術室に繋がってたのか」
由「学校が終わると、校長のヤロウが鍵閉めるからな」
描きたくても美術室に行けず、隠し扉を作ったのだ。
一度、壁をシャボン玉で破壊し、こつこつと回転扉を作ったそうだ。
森「校長先生に見つかったら辞職ものだぞ」
奈「!」
そこで奈美は床に油絵の具の入ったバケツが倒れていることに気付いた。
床に広がる色は赤色だ。
よく見ると、床にヒビが見当たった。
由「あ、それ、爪先ぶつけてこかした」
奈「……なるほど、これが5つ目の七不思議か。この絵の具が2階の廊下に雨漏りとなって落ちたんだ」
血だと思っていたのが、ただの絵の具だったということだ。
1回では七不思議は生まれないので、何回もやらかしていたのだろう。
*****
美術室をあとにした太輔達5人は、廊下を渡り、玄関へと向かっていた。
太「5つ目は“3階美術室から漏れた赤い絵の具”、6つ目は“美術室へと続く回転扉”」
廊下を渡りながら、太輔はメモをする。
森「美術室の床のヒビ、修理しておかないと」
由「なに、おまえら七不思議でここにきたわけ?」
奈・レン「お恥ずかしい話」
その時、太輔は急に立ち止まり、レン達に振り返った。
太「あ、そうだ! 七不思議、あとひとつ残ってるじゃん!“地獄に引きずりこむ女の霊”」
だが、レン達は太輔の横を通過しようとする。
レン「どうせ、女装した不審者とかそんなだろ」
奈「霊だけは信じない」
森「オレ達が教師だということを忘れるな」
由「ふわぁ…」
全員の反応は冷たかった。
太「ちょ…、待っ…。うわっ」
みんなを止めようと振り返って追いかけようとした太輔だが、突然、その場に転んだ。
さすがにレン達も、転んだ者を見捨てていくほど、冷めてはいなかった。
奈「まったく…」
レン「なにやって……」
呆れた顔で太輔に振り返る。
瞬間、、全員の血の気が引いた。
太「痛…っ。なにかに引っ掛かって……」
レン「た…、太輔…!」
森「おまえ、足…、足に…!」
太「?」
太輔はうつ伏せの状態から上半身を起こして自身の足に目をやると、髪の長い女がしがみついていた。
目は髪で隠れ、太輔の方に顔を上げ、笑みを浮かべる。
女「イッショニ、イキマショオォォォォ」
太「ぎゃあ―――!! ぎゃ―――!? きゃ―――!!!」
女「アナタモォォォォ」
由「うお!?」
女の霊は素早くもう片方の手を伸ばし、由良の片足をつかんだ。
由良はその場に転び、太輔と一緒に女に引きずられていく。
細腕だというのに、とんでもない力だ。
由「どこつれてく気だ―――!!?」
太「南無阿弥陀仏! 悪霊退散! エコエコアザラク!」
奈「叶―――!!」
レン「由良―――!!」
奈美は太輔の、レンは由良の手を両手でつかんで引っ張った。
太「片足が千切れる~!」
森「そのまま踏ん張れ!」
森尾はカマイタチを女の霊に向けて飛ばす。
女「キャア!」
女の霊はカマイタチの風にかき消された。
同時に、太輔と由良は解放される。
太「助かった~」
由「うわっ、手跡があるっ。キモッ」
森「やっつけられたのか…?」
フフフフフフ。
全員「!!」
どこからか笑い声が聞こえた。
レン「倒せてない!」
奈「不死身か!?」
太「全員退却―――!!」
全員、息を合わせたように玄関を飛び出し、道中、狙撃されながらも学校から走り去った。
*****
翌日、校長室に由紀恵が呼び出されていた。
勝「手塚教頭、生徒達の何人かが夜中に廊下を彷徨うあなたの姿を目撃しているのですが。中には、引きずりこまれそうになったとか……」
ユ「あら、いやですわ、勝又校長。私、夜はずっと家にいますわよ。子供達が証人ですわ」
勝「…そうですか。やはりウワサでしたか」
ユ「フフフ。そうです、ただのウワサです」
皆さんは、生霊というものをご存知でしょうか。
夜の学校は忍びこまない方がいいですよ。
2度と家に帰れなくなることに…。
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