02:人間じゃない
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レンと兄は人通りの少ない歩道を歩いた。
辺りはすっかり暗い。
「別に兄貴がついてこなくても大丈夫だっての」
レンは気になって隣を歩く兄に声をかける。
「最近、ここら辺でも通り魔による殺人事件が起こってんだ。無視できるか。単独犯でもないらしいしな」
「通り魔って普通は単独じゃねーの?」
レンも何回かテレビで見たことはある。
自殺騒動が始まってからすぐだった。
自殺だけでなく、それに伴って殺人事件まで各地で発生しているのだ。しかも共通点はほとんどが変死。
レンの住む町でも同様の事件が多発していた。
生徒を早めに帰宅させる学校も多い。レンの高校も含まれていた。
「返り討ちにしてやるよ、そんな奴ら」
レンの言葉に兄は呆れて肩を竦ませ、「だから男ができねーんだろ」
とこぼすと、気を悪くしたレンが噛みついた。
「はぁ!? んなもんいらねえよ!」
「じゃあ聞くが、どういう男が好きなんだよ?」
「あたしより強いやつ」
「オレじゃん」
「兄貴は論外」
「ひどっ」
「そもそもケンカ教えてくれたの兄貴だろが」
その時のことを思い出したのか、兄は懐かしそうに目を細め、困ったように自身の後頭部を掻く。
「ったく、血の気多めに育ちやがって…。イケメンが好きとか…、あの男性アイドルグループかっこいいよねとか、たまにはそういう女らしいこと言えよ」
「テメーは妹に何を求めてんだ」とレンは口を尖らせた。
あからさまなため息を吐いて視線を上げると、コンビニの明かりが見えてくる。
その時だった。
レンに向かって何かが降ってきた。
ドスンッ!
「!?」
衝撃を受け、そのまま地面にうつ伏せに倒れる。
(―――なんだ、ここ…?)
周りが暗い宇宙空間となり、浮遊感と、とてつもない孤独感に襲われた。
同時に脳内を駆け巡るトラウマ。
レンの目の奥が濁り、幸福にも似た渇望感が沸き上がった。
「レン!!」
兄の声と共に左頬にパンッと軽い平手を打たれ、はっとすると、視界は元の景色を取り戻す。
うつ伏せで放心状態のレンは、いつの間にか兄に仰向けにされていた。
自力で半身を起こし、やや茫然とした表情のまま右手で顔を覆う。
兄は心配そうにレンを覗き込んだ。
「…大丈夫か? 急に倒れた上に、呼びかけても全然反応がなかったから…」
「あ、ああ…」
(さっきのは、いったいなんだったんだ? あたし…、今…、何を考えて……)
レンの頭の中はまだ混乱していたが、先程沸き上がった衝動と感情を思い出して寒気を覚える。
そのあと振り払うように頭を振って立ち上がり、服を払った。
「大丈…」
言いかけた時だ。
不穏な気配がすぐそこまで来ていた。
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