短編:雪化粧
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「ほ―――ど―――け―――よ―――」
由良は3人の手によって、布団でスマキにされ、隅に転がされていた。
3人は由良の要求を当然のように無視する。
「チッ、布団一枚使っちまった」
ガムを噛みながら、レンがボソリと呟いた。
「おい、聞いてんのか!」
背後で由良が吠える。
無視して3人は固まって話し合った。
「ここで寝ちゃったら、凍死しない?」
華音が心配そうにそう言って、森尾も腕を組みながら考える。
「電気が回復するまで、待った方が……」
そこでレンが立ち上がった。
「いつになるかわからないだろ。あたしが薪集めてくる!」
そう言って、ソファーに置いてあったジャケットをつかんで、すぐにリビングを飛び出した。
「レン!」
森尾は叫んだが、レンは立ち止まらずに玄関の扉を開けて外へと飛び出す。
華音は森尾の腕をつかんで揺すった。
「ね、ねえ、ヤバくない!?」
「せーのっ」
その背後で、由良は勢いをつけて立ち上がる。
よろよろとなったが、シャボン玉で自分を包んでいる布団を粉砕して自由になった。
同時に、レンのあとを追いかける。
「由良! おまっ、貴重な布団を!」」
森尾は叫んだが、由良もレンと同様止まらなかった。
玄関を開け、外へ飛び出す。
だが…、
「た、たたたたただいま…っっ」
「わあ!?」
由良は雪まみれになってすぐに戻ってきた。
寒さで体を震わせている。
驚いた森尾は急いで雪を払い、由良に自分の毛布を被せた。
「バッカじゃない!? 裸足でツナギ一枚じゃ死んじゃうって!」
華音が呆れて声を上げると、由良は華音を睨んでなにか言い返そうとしたが、寒さのあまり声がうまく出せない。
「……仕方ない。レンが帰ってくるまで待とう。ヘタに追いかけると遭難する…」
森尾の言葉に、華音と由良は同時に頷いた。
*****
30分が経過した。
レンはまだ戻ってこない。
3人の額から嫌な汗が流れた。
「帰ってこないね…」
先に華音が言い出し、由良は不吉なことを言う。
「まさか…、レンの方が遭難……」
「「「……………」」」
3人は防寒着をつかみ(由良は森尾に借りた)、玄関を飛び出した。
吹雪で視界を塞がれるが、立ち止まっている暇はない。
こんなところに長時間いれば、凍死して死んでしまう。
レンがどこかでそうなっていないか心配だ。
「レンちゃ―――ん!」
「レン―――! どこだ―――!?」
「レン―――! お菓子あるから出てこ―――い!」
懐中電灯を片手に、辺りを見回して歩きながらレンを捜索するが、どこにも見当たらない。
あまり先に進みすぎると、こっちまで遭難してしまいそうだ。
「おい、かくれんぼじゃねえんだぞ!」
由良がそう叫んだが、レンの返事は返ってこない。
「ねえ、もう戻ってるんじゃない?」
不安な顔をした華音が言った。
森尾はそれを聞いても「戻ろう」とは言わない。
「もう少し捜そう」
小さく言って、捜索の続きを再開した。
由良は体に張り付いた雪を左手で払い、その場でゆっくりと回りながらライトを照らす。
目を凝らしても吹雪に邪魔された。
ザクザクと森尾達からあまり離れない程度で先に進んでいくと、
「!」
足下に、見覚えのある手袋を見つけた。
(レンのだ…)
その場にしゃがんで、手袋を拾おうとするが、
「?」
手袋がその場に繋がっているかのように取れないうえに、なにか詰まっているのか硬かった。
おそるおそる手袋の下を掘ってみた。
「!?」
手首が見えてぎょっとする。
「レンいた―――!! うわ、手ぇ冷たっ」
森尾と華音がはっとして由良のもとに駆け寄った。
由良はせっせと雪を掘る。
「ここにいる!」
森尾と華音も掘り始めた。
やがて、レンの頭が出てきた。
レンは目を閉じて眠っている。
由良達はその手首をつかみ、力いっぱい引っ張った。
ずるりとレンの体が引っ張り出される。
レンのもう片方の手には薪が抱えられていた。
そのあと、由良がレンを抱きかかえ、森尾と華音と一緒に屋敷へと戻った。
*****
リビングに到着したあと、由良はジャケットを脱がせてレンを毛布で包み、森尾は薪をくべて暖炉を焚き、華音はレンの具合を窺う。
レンの肌の色は、だんだんもとの肌色を取り戻してきた。
3人は同時に安堵のため息をつく。
「ど…、どうやら、凍死は免れたようだな」
森尾はほっとして言った。
華音はその場に倒れ、眠りにつこうとする。
由良はレンの頬を撫で、少しつねった。
「必死こいて捜してたってのに…。ムカつく」
そして朝を迎え、寝不足の4人は雪かきをさせられていた。
森尾と華音は玄関前を、由良とレンは屋根の上だ。
レンは、恵の部屋の真上の屋根の雪をシャベルで落としながら、昨夜のことを恵に話していた。
恵の部屋の窓は開け放たれ、向こうからもこちらからも声が聞こえる。
「なんで埋まってたんですか?」
「それがさぁ……」
レンは雪かきする手をいったん止め、思い返しながら話した。
「薪を集めて帰ろうとしたとき、穴があってさ。そこに落ちて、出ようにも右脚が引っかかって出れなかったんだ。そのあとだんだん雪に埋もれていって……。しばらく足掻いてたら、だんだん、眠くなってきて……」
「オレが発見しなかったら、冬眠してたな」
間に由良が入ってくる。
レンはなにも言い返せず、黙って雪かきの続きを始めた。
「……………」
早朝に目が覚めると、みんなとひとつの大きな毛布に包まって眠っていたことを思い出し、顔を赤くする。
聞いていた恵は、途中で「ん?」という顔をして、窓に近付いて言った。
「でも、リビングにコタツあるなら、一時的でもレンさんの能力で電源入れればよかったんじゃ……」
「「あ…」」
雪を被ったわけでもないのに、レンと由良は同時に真っ白になってシャベルを落としたのだった。
.END