09:なにが悪いんだよ
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岡田と合流した勝又達は山奥にある屋敷に拠点を移した。
山に囲まれた、地下もある3階建ての大きな洋館で、以前住んでいた屋敷よりは小さめであるが、勝又達が住むには十分な広さだ。
2階のバルコニーは森尾の、屋根の上はレンのお気に入りとなっている。
早朝、ランニングシャツを着たレンは屋敷の庭でトレーニングをしていた。
体力をつけるために、この習慣は昔から変わらない。
「62……63……64……」
腹筋が終わると、ランニングのために屋敷の敷地内にある門の向こうへと走り出した。
(鍛えて鍛えて鍛えまくって、いつかまた由良にリベンジしてやる)
由良に負けたあの日のことを思い出して歯を食いしばり、一気にダッシュする。
そんなレンの上空を一羽の白いハトが通過し、ランニング中のレンの真上を何度も大きく旋回した。
「おい」
白いハトに声をかけたのは、後ろ飛んできたフクロウだった。
気付いた白いハトは「ああ…」と人間のように平然と反応してフクロウと向き合う形でくるりと宙返りしてホバリングする。
「噂の、勝又の鳥か」
「偵察とは下品な真似を…。“守護者”も近くに来ているのか…」
「そういう言い方は、室を怒らすぞ。……そいつから伝言だ」
白いハトはフクロウに伝えると、クックー、とそれらしく鳴いて彼方へと飛び去った。
一方、屋敷に帰ってきたレンは、流した汗を洗い流すため、部屋の浴室で服を脱ぎ、黒いタイルの流し場で立ちながらシャワーを浴びていた。
「ふぅ…」
シャワーの湯を手にすくって顔をバシャバシャと洗い、一息ついて頭からシャワーを浴びながら目を閉じる。
浴室内に響くシャワーの水音に耳を澄ました。
『キミは、大事ななにかを忘れてないかな?』
不意に、勝又の言葉が脳裏をよぎり、はっとして目を開ける。
(……あたしが、なにを忘れたっていうんだ?)
目の前の鏡に写る自分自身に問いかけてみるが、当然答えは返ってこない。
ふと、自分の左の二の腕に視線を移し、軽く擦った。
「……筋肉…もうちょっとつけてえな…」
「あんまムキムキにならねえほうがいいぞ」
「いや、べつにそんなムキムキになるつもりは―――」
鏡に視線を戻す。
背後に、浴室のドアを豪快に開け、「いえ~い」とピースしながらレンの裸体を凝視する由良が写った。
ドオンッ!!
レンの部屋から、電撃が混じった煙が噴出した。
その部屋から舌をベッと出した由良が飛び出し、近くにいた森尾の横を通過して廊下を走る。
「?」
突然のことに、森尾は首を傾げて由良の背中を見送ったが、続いて部屋から飛び出したレンが真っ赤な鬼の形相に、森尾も壁に背中をぶつけるほど驚き、レンはその横を通過して由良を追いかけた。
レンの髪は濡れたままで、着ているシャツのボタンはかけ間違えていた。
「性懲りもなくテメーはああああああっっ!!!」
怒号を上げながら由良の背中を追いかけてプラズマを携える。
「覗く男がいるだけでもありがたいと思いやがれ!!」
まったく悪びれる様子を見せることなく肩越しに由良がレンに向かって叫ぶ。
「テメーのは“覗く”レベルじゃねえだろ―――ッッ!!!」
チョロチョロと由良が動くため、プラズマをぶつけるにもレンはうまく狙いが定められない様子だ。
由良とレンは、壁に背中をつけた森尾の前を行ったり来たりしている。
森尾からすれば、すでに見慣れてしまった光景だ。
廊下の追いかけっこがこのまま続くのかと思い、森尾はため息をつきながらも、ダメもとで2人に声をかけた。
「2人とも…、買い出しに行くけど…行かない…よな……」
すると、レンと由良は同時に森尾の前で足を止め、
「「行く!」」
ほぼ同時に言うと、レンは由良を非難の目で睨みつけたが、由良はさっと視線を逸らして口笛を吹くだけだ。
森尾は「レンは先に髪乾かしてきなよ」と言って小さく笑った。
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