短編:過去拍手文
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屋敷のメンバーはリビングに集まっていた。
あたし、森尾、華音、岡田、広瀬は大きなコタツに入ってぬくぬくと温まっている。
勝又さんがリビングに入ってきた。
「あけましておめでとう、みんな」
「あけましておめでとうございます」
全員で声を揃え、新年の挨拶をする。
あたしと森尾と華音はミカンを剥く作業を続けた。
部屋の中を見渡した勝又さんがあたし達に尋ねる。
「おや? 由良君は?」
今朝からあいつの姿は見ていない。
「たぶん、まだ部屋かと…」
寝正月をかます気か。
「人が遅れたらギャーギャーとうるさいクセに…」
岡田が眼鏡をいじりながら呟いた。
あいつじゃないのに、岡田に言われると腹が立つのはなぜだろう。
あたしの向かい側に座ってるのも気に入らない。
「ひゃ!?」
「!」
突然、華音が悲鳴を上げた。
あたし達は一斉に華音の方に顔を向ける。
「ど、どうした?」
驚いたせいでミカンを落としてしまった。
華音は、隣でコタツに足を突っ込んでいる森尾を軽く睨んだ。
「健ちゃん、華音の膝撫でたでしょ」
疑いの目を向けられた森尾は「え!?」と驚き、首を横に振って否定しようする。
「オレはそんなこと…」
そう言いかけた時だ。
「痛たぁ!!?」
今度は森尾が悲鳴を上げ、コタツから飛び出した。
「どうした!?」
あたしは2度目のびっくりに思わず声を上げて尋ねる。
森尾は顔を痛みで軽く歪め、足の甲を擦りながら答えた。
「か…、噛まれた…」
「噛まれた!?」
思わず聞き返してしまった。
その時、背筋に悪寒を覚えた。
なにかに脚を撫でられている。
いやらしい手つきでだ。
悲鳴よりも先に警告が口をついて出た。
「出ろ!! なんかいるぞ、コタツに!!」
脚を撫でる手を払い、コタツから飛び出す。
華音も広瀬もコタツから急いで出た。
岡田も出ようとしたが、
「うぎゃ!!」
立ち上がろうとして、こけてしまった。
いや、足首をつかまれたらしい。
助けを求めようと手を伸ばすが、一気にコタツの中に引っ張り込まれてしまった。
前に見た、日本のホラー映画のような光景だ。
「ギャァアアアアア!!!!」
まるで食べられてしまったかのようだ。
岡田の姿がコタツの中に消えたあと、長い静寂がリビングを支配した。
それを破るように、あたしは口を開いてコタツに声をかける。
「お…、岡田…?」
返事はない。
全員の顔が真っ青になる。
その時、ガタッ、とコタツが音を立て、ビクッと体を震わせた。
コタツからなにか出てくる。
岡田かと思っていたが違った。
「あけおめ、ことよろ」
ひょっこりとコタツから出てきたのは、由良だった。
「由良!?」
思わず声を上げる。
由良は無邪気な子供のような笑みを浮かべた。
「どうだった? 今年初めの悪戯は?」
全員の目つきが鋭くなる。
「テメーの仕業だったかコノヤロウ!」
あたしはコブシを握りしめて唸るように言い、森尾は怒りを通り越して呆れている。
「新年早々なにやってんだか」
「なにかしねーと落ち着いて新年迎えられなくてさー」
由良の言葉に、森尾は呆れから怒りへと戻る。
「だからって人の足を噛むな!!」
「「セクハラするな!!」」
あたしと華音は声を揃えた。
由良はちっとも悪びれていない。
「初噛み、初撫で、初叱られ~」
あたしは自身の額に左手を当てて、怒りを鎮めようとした。
こいつになにを言っても反省はしないだろうと確信したからだ。
「…ったく、早く岡田を解放してやれよ。コタツに足突っ込めねーだろ」
あたし達は呆れなかば、コタツに戻ろうとした。
「岡田? オレはあいつにちょっかいだしてねーぜ?」
ピタリ、とコタツに突っ込もうとした足を止め、由良に振り返る。
由良は素できょとんとした顔だ。とぼけていない。
「……え?」
森尾が聞き返す。
「つねってやろうとは思ったけどな。さすがに噛みたくねーし」
再び、リビングが静寂に包まれる。
「そういえば、あいつは?」
本気で言ってる由良に、あたし達は悲鳴を上げながらコタツから逃げた。
「なぁ、岡田は―――?」と聞いてくる由良に、なにも答えることができなかった。
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