短編:過去拍手文
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伶達の住んでるマンションに遊びに来るタイミングを間違えてしまった。
なにやら、伶が妙なことを始めたようだ。
伶はソファーに腰掛け、顔をしかめたまま貧乏揺すりをしている。
あたしは、葵と太輔と純と杏と一緒にババ抜きでもして無視していたが、だんだん鬱陶しくなってきた。
下の階に響くんじゃないかと思うくらいの揺すり方だ。
「…伶、あまり人の家でこう言いたくはないが…、うるさい」
葵が差し出したカードを抜き、揃った数字を捨ててから言った。
伶はこちらを睨みつける。
かなり機嫌が悪い様子だ。
貧乏揺すりをやめ、今度は腕を組んだ状態で、人差し指を何度も自分の二の腕に連打する。
「…はあ」
胃や肺まで溜まってきた苛立ちを吐くように、ため息をついた。
「ため息もつくな」
「まだ20分しか経ってないぞ、伶兄」
太輔の話では、伶が禁煙を始めたとのことだ。
年々、タバコの量が増えることに心配を抱き、「今度こそやめる」と言って、葵にタバコとライターを預けたらしい。
禁煙開始15分後に、それを知らないあたしが呑気に遊びにきたのだ。
あたしは…、いや、あたしだけじゃないはずだ。
伶が素直に禁煙できるわけがないと思っているのは。
たぶん、この場にいる全員がそう思ってるに違いない。
もう少し様子を見ていたかったが、一応言ってみた。
「そんなにタバコが吸いたいなら、吸えばいいだろ。ただでさえ重度のヘビースモーカーなんだし、今さら禁煙なんて…」
「無理だろ」と続けようとしたところで、苛立ちを込めて言い返される。
「最近じゃ、禁煙場所が増えてきたし、よりどころがなくなる前にやめとかねえと、余計に取り返しがつかねえんだよ」
「この間、ファミレスに行ったとき、禁煙席で普通に5本以上吸ってたクセに」
大体、人間、普段摂取している好物を簡単に我慢できるわけがない。
摂取しなさすぎでキレた甘党をあたしは知っている。
まあ、伶もプライド高いから、簡単に「それじゃあ♪」と言って吸う奴でもなさそうだし、もうちょっと様子を見てみよう。
トランプでもしながら。
15:30 ガムを食べる
15:34 ポッキーを食べる(途中、吹かすような仕草あり)
15:40 ため息
15:41 家の中をひたすらウロウロ
15:50 窓から見える、銭湯の煙突を見つめる(「モクモクしてる…」と怪しげな呟き)
15:55 ため息
15:56 何度もため息
16:01 ストローを咥える(吹かすような仕草あり)
16:05 カラのライターをいじる
トランプが終わり、先に上がった葵が「また勝った~♪」と伶の隣に座る。
手のひらを口に当てて考える仕草をしていた伶は、隣の葵に顔を向け、笑顔を向けた。
「葵、おまえは出来のいい妹だなー」
「え? 伶兄?」
戸惑っている葵の頭を優しく撫でる。
「トランプ、何勝目だ?」
「えへへー。5勝目!」
葵は嬉しそうにてのひらを「5」と広げた。
伶が「そうかそうか」と笑顔のまま、何度も頷く。
「すげえなぁ。葵は足も速いし、英語もできるし、カワイイし、将来は絶対美人だな」
「そーかなー?」
照れている葵の隣で、伶は、ズボンや胸のポケットを探る仕草をしながら言った。
「ああ。将来、男共が寄って来そうで兄ちゃんは心配だ。学校でも人気みたいだし…。…あ、タバコくれるか?」
さりげなく言って、さりげなく手を出す。
「うん!」
すっかり機嫌を良くした葵は、当然のように伶にタバコとライターを渡し、「そうなの。体育でもねー」と話を続けた。
伶が禁煙していることを完全に忘れている。
伶はタバコに火をつけ、吹かしながら「うんうん」と葵の話に耳を傾けた。
それを茫然と見ていたあたしはつっこむ。
「意志弱っ!! 禁煙開始からまだ1時間も経ってねえだろ!」
しかも、妹の扱いもうまい。
「これで16回目だな…」
太輔はため息をついた。
純と杏も肩を落とす。
伶は満足そうに3本同時に吸っていた。
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