短編:過去拍手文
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ふと彼女に聞きたいことがあった。
「オレと由良の違いってなんだろう?」
立ちながら由良のスケッチブックを見ていたオレは顔を上げ、彼女に尋ねると、一人用のソファーに腰掛けて紙を折っていた彼女は顔を上げ、こちらをキョトンとした目で見た。
「…突然どうした? 森尾」
「由良って、マイペースだし、すぐ部屋を汚くするし、常に裸足だし、風呂もあまり入らないし……」
「?」
オレがなにを言いたいのかわからないのか、首を傾げる。
オレは一拍置いてから言葉を続けた。
「なのに…、羨ましいって思う時がある」
「……………」
スケッチブックを閉じ、彼女の目の前にあるローテーブルに置く。
テーブルの上には、数々の折り紙が散乱していた。
オレは彼女の向かい側の一人用のソファーに座る。
彼女は黄色の折り紙を折りながら尋ねた。
「……どうしてそう思うんだ?」
オレは目の前にあった水色の折り紙を手に取り、それを見つめながら答える。
「オレにはないものを持ってる」
子供のような、ないものねだりだ。
「そういうのを個性っていうんだろ。森尾だって、あいつにないものあるじゃねえか」
「けど…、あいつはそれを欲しがらない。あまり執着を見せない男だからな。だから、いつの間にか、簡単に目の前からいなくなってしまいそうだ…」
それは彼女にもわかっていたことなのか、彼女は「ははっ」と笑い、「確かにな…」と続けた。
その目は少し悲しげだ。
折り紙で出来上がったものを手のひらにのせる。
不格好な鶴だった。
「ある意味、鶴の恩返しみたいな奴だよな。「正体を知られたからには、ここにいることはできません」みたいな。あたしらのことはわかってるクセに…」
一度、由良自身になってみたいものだ。
あいつはいつもなにを思っているのだろうか。
オレと違うことを思っているのだろうか。
彼女をどう思っているのだろうか。
オレ達という集まりに、執着をもっているのだろうか。
残すことが嫌いでも、それは少し悲しい。
それは被害妄想というやつかな。
「森尾も、あまり自分の正体を知ってほしくなさそうだよな」
「え?」
「自分のことになると、よく、はぐらかしたりするじゃん」
白色の折り紙でなにかを作りながらそう言われた。
なんだ、バレてたのか。
オレが黙って見つめていると、彼女は顔を上げて笑みを浮かべて言葉を続ける。
「ある意味似てるけど、違うな、おまえら。森尾だってなにもないわけじゃねえんだ。中身おんなじ奴が2人いてもつまんねえし、その点、おまえらはいいコンビだと思う。あたしは、そのままの森尾がいいな…」
由良も彼女も、オレにあるものを見つけてくれる。
それがたとえ小さなものでも、満たされるものがあった。
いつの間にか、オレも折り紙を折り始めていた。
出来上がったものは、紙飛行機だった。
彼女もマネして作る。
「できた」
彼女も完成したようだ。
すると、タイミングを狙っていたかのように、由良と華音が部屋の中に入ってきた。
2人とも、片手に紙飛行機を持っている。
「飛ばしてみるか?」
「いつからいたんだよ」
最初に足を踏み入れた由良に、オレはつっこんだ。
「細かいこと気にすんな、モリヲ」
オレ達は立ち上がり、開け放たれた窓へと移動した。
そして、華音の「せ―――の」という言葉を合図に、それぞれが作った紙飛行機を窓の向こうへと飛ばす。
1番初めに墜落したのは、華音の赤い紙飛行機だった。
「あ―――! ムカつく―――!」
2番めは、彼女の白の紙飛行機だ。
木に引っ掛かってしまった。
「しまった…」
オレと由良の紙飛行機はまだまだのびる。
そして、
「「あ!」」
由良の紫色の紙飛行機はだんだん失速し、やがて森へと墜落した。
オレはまだまだ降下の様子を見せず、そのまま真っ直ぐ飛び続け、やがて見えなくなってしまった。
「見えなくなっちゃった…」
華音が呟く。
目を細めるが、オレの紙飛行機の姿はもう見えない。
「すっげ―――…」
彼女の感心の呟きが聞こえた。
由良はムスッとした顔をこちらに向け、人差し指を立てる。
「モリヲ、もう一戦!」
真剣な顔だ。
「……ふはっ…」
思わず笑ってしまった。
慌てて手のひらを口に当てる。
「バカにしてんのか―――!」
「いや、そうじゃなくて…」
またひとつ、おまえのことがわかった。
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