短編:過去拍手文
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「奈美って、弁当作ったことないのか?」
「!!」
そう、原因を作ったのはあたしだった。
太輔が奈美の分の弁当を作ってるのを見て、悪気なく言っただけなのに。
*****
学校から帰ってくるなり、「おかえり」と言ったあたしを素通りして、奈美はすぐに部屋へと向かい、着替えてからまた1階に下りてきて台所へと向かった。
その時、奈美の両手に提げられていたビニール袋に注目した。
奈美はエプロンと髪留めをし、包丁を片手に構える。
「ど…、どうしたんだ…」
気のせいか、奈美に殺気が纏っていた。
「……友達に、「彼氏にお弁当作ってあげるのが楽しい」と言われてしまった…」
初めはなんのことかわからなかったが、今朝の自分の一言をはっと思いだし、奈美がこれからなにをしようとしているのか察する。
「まさか、弁当作るのか? 今から?」
包丁を持ってまな板を見つめたまま、奈美がコクリと頷いた。
「これから戦いにいく」と言ってもおかしくない雰囲気だ。
「そんなに材料いらなくねえか?」
ビニール袋は2袋。
どちらもパンパンで、はちきれそうである。
しかし、奈美はそれを無視して作業に取りかかった。
袋から出したのは……タコだ。
しかも、取れたて。
「……その軟体動物をどうする気だ」
タコは奈美の手の中で暴れている。
奈美の殺気に気付いたのだろう。
「……タコさんウィンナー…」
は!!?
つっこむ前に奈美は調理を始める。
あたしはただ、台所の出入口で調理中の奈美の背中を見守ることしかできなかった。
文句に似たなにかを言えば、包丁が飛んで来そうで恐ろしい。
思わず自分自身も構えてしまう。
そのあとも、奈美はビニール袋から材料を出しては弁当の具を作り出していく。
気のせいだろうか、すごい匂いがしてきたぞ。
「……ちょっといい?」
「!!」
振り返った奈美のエプロンには、墨(返り血!?)が派手に付着していた。
頼むから、包丁を持ったまま振り返るのはやめてほしい。
「ど、どうした?」
動揺を隠し、返事を返した。
「……乱切り…って、なんだろう…」
乱切り?
あたしも知らない。
「……乱れ切りじゃねえのか?」
のち、奈美が指切った。
「―――――!!」
すぐに救急箱を取って来た。
自分の言葉には責任を持つようにしなければならない、と酷く後悔する。
*****
出来上がったものがテーブルに並べられる。
それを見て、あたしは絶句した。
卵の殻が入ったスクランブルエッグ(本来は玉子焼きなのかもしれない(卵は叩きつけたな))
液状化したニンジンとたまねぎの煮つけ(煮過ぎ)
豚肉か鶏肉か牛肉かわからない黒い物体(焼き過ぎ)
凍ったおかゆのおにぎり(無理やり凍らせたな)
かなり強烈だったのが、タコさんウィンナー(丸々のタコにウィンナーを詰め込んだもの(すごい。まだ生きてる)
もう十分なのに、奈美はまだ珍料理を次々と開発していく。
あたしはそっと台所を抜け出て、救急箱から胃薬を取り出して外へと飛び出した。
ほうきを持って庭掃除をしている太輔に声をかけ、なにも言わずにそれを渡し、「今日、晩御飯はいいから」と言ってから堂々と門を飛び出して逃走。
帰るのが恐ろしい。
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