02:人間じゃない
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レンの両親が死んで、7日が経とうとしていた。
日本全国、世界各国で大量自殺が発生していた。
死に方は多種多様だが、その時の自殺者の特徴は最期の瞬間に幸せそうに笑っていることだった。
のちに“悪夢の1週間”と呼ばれ、今日はその最終日である。
その夜、レンと兄が住んでいるマンションの302号室では、レンと兄はテーブルで晩御飯の冷凍スパゲッティを食べていた。
普段より会話は少ない。
兄はスパゲッティを頬張っているレンの顔をじっと見つめていた。
レンはその視線に気付いて顔を上げる。
所々に金色のメッシュが入ったショートの黒髪、目つきの悪い釣り目、運動能力の高そうなガタイのいい体をした兄だ。
「…なに?」
「……おまえは強いな。親父とおふくろが死んで間もねえのに、あんま泣いてねーし…」
兄はそう言って、フォークでスパゲッティを巻きながら、感心するように微笑んだ。
スパゲッティを咀嚼したあと、レンは目を伏せながら口を開く。
「…あたしだって、辛いよ…。現実感がなくて…思いっきり泣けねーのかも…」
最後の一口を食べ、飲み込んだ。
「兄貴だって、気をつかって残らなくてもよかったのに…。独り暮らししたかったんだろ? それにあたし達―――」
「オレは親父の連れ子だ。おまえと血なんて繋がっちゃあいない」
そう、レン達は血の繋がらない兄妹。
レンは母の連れ子だ。
(とっくに赤の他人のはずだよな。兄貴だって、そんなのわかってるはずだ)
レンはそう思うが、兄は言葉を紡ぐ。
「…けどな、そんな繋がりどうだっていい。オレは、兄貴としておまえの面倒をみるつもりだ。もうすぐ社会人ってやつになるからな」
そう言いながら、兄も最後の一口を食べる。
レンは目を丸くして兄をじっと見つめ、嬉しげに口角をわずかに上げた。
「兄貴…、あたしばっかに構ってたら、彼女が泣くぞ。面倒見てもらうのはどっちだか…」
レンは笑みを隠すように席から立ち上がり、食器を持って台所へと向かった。
「うっせえよ」
兄も口を尖らせながら食器を持って台所へと向かう。
洗い場に食器を置いたレンは、ふと思い出したように顔を上げた。
「あ、明日の朝飯、買うの忘れた。コンビニ行ってくる」
机の上に置いておいたキャスケット帽をつかんで頭に被り、上着を着て外に出ようとした。
すると、慌てて兄もつかみとった上着に袖を通しながら追いかけてくる。
「待て。オレも行く!」
「なに慌ててるんだよ?」
「バカヤロ。今何時だと思ってんだ。また補導されてぇのかよ。オレも行く!」
変質者に襲われても撃退できる力を持っていると妹だとわかっていても、心配してしまう兄なのだ。
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