短編:過去拍手文
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人の留守番中にそいつらはやって来た。
「た―――のも―――!!」
「!」
奈美の家の庭で、道着を着たままトレーニングしてるとき、門の方から野太い声が聞こえた。
庭から気になって行ってみると、道着を着たごつい野郎共が横に並んで門の前に立っていた。
奈美の家のお手伝いさんが困った顔でペコペコと頭を下げている。
「申し訳ございません、旦那様と奥様はただいま留守でして…」
「ならば、この道場の跡継ぎを呼んでいただこう!」
「お嬢様はただいま学校に…」
平日だからな。
太輔は奈美を迎えに行ったからいないし。
一番ごつい大将っぽい奴が腕を組んで鼻で笑った。
「フン、道場に欠かせん奴が誰もおらんとは…。抜けてるんじゃないのか」
奈美のことをバカにされた気がしてカチンときた。
「拍子抜けして看板を取る必要もないわ」
大将が笑い、他の奴らも笑う。
お手伝いさんがなにか言い返そうと口を開いたと同時に、あたしはお手伝いさんと大将の間に立った。
「おまえらみたいにヒマじゃねえんだよ」
大将を睨みつけて毒づくと、大将も睨み返してきた。
「なんだ貴様は…」
「あたしか? あたしは―――」
「ここの居候だ」という言葉を飲み込み、代わりにこう答えてやる。
「跡継ぎ、楠奈美さんの一番弟子だ!」
なんかこれ、言うの恥ずかしいな。
でも、ある意味間違ってはいない。
戦い方を教わってるわけだし。
「ほう? そのお弟子さんがわざわざなんの用だ?」
「跡継ぎが出向くまでもねえ。あたしが相手してやるよ。もちろん、全員まとめてな」
余裕の笑みを浮かべて言い放つ。
それを聞き、ごつい野郎共全員が馬鹿にするように「がははは」と笑った。
うるさくて、思わず両手で耳を塞ぐ。
「おまえが敗北すれば、ここの看板を頂戴するんだぞ。わかっているのか、小娘」
「こっちが勝つってわかってるから言ってんだろ」
完璧にナメられてるのがわかる。
叩きのめした時のこいつらの顔が楽しみになった。
おろおろとしているお手伝いさんに「大丈夫」と笑いかけてから、先導して道場へとそいつら連れて行く。
*****
ドダンッ
「次ィ!!」
8人抜き。
道場の端に座ってる奴らは愕然としている。
もちろん大将も。
あたし的に満足な反応だ。
そう考えてるうちに12人抜き終了。
いよいよ大将のお出ましだ。
「まさか、ここまでとは…」
大将は引きつった笑みを浮かべながら、あたしの向かいに立つ。
ちょっとビビってる様子もあった。
もう余裕ぶってる場合じゃないんだ、向こうとしては。
「始め!」
最初にあたしが倒した奴が叫び、大将が向かってきた。
ここで言っちゃ悪いが、全然余裕。
だって、明らかに奈美より動きが遅すぎる。
つかみかかってくる手をさっと避け、後ろに回り込み、
ガッ!
肘鉄を背中に食らわせた。
「ぐ…っ」
大将がこちらに振り返ると同時にあたしは回転をつけ、
ドゴ!
右側頭部に蹴りを打ち込んでやった。
念のため、よろめいた隙をついて左脇腹にコブシを打ち込み、勢いをつけて背中にカカトを食らわせる。
ズダンッ!
大将は派手に倒れた。
ちょっとやりすぎたか。
「あたしの勝ちだな」
最初に倒した奴に振り向いて尋ねると、そいつは恐ろしげにコクコクと何度も頷いた。
大将は気を失っているのか、ピクリとも動かない。
「そいつ持って帰って、とっとと失せろ」
その時、道場の端にいる奴らにそう言ったと同時に、背後に気配があった。
大将が勢いよく起き上がったからだ。
不意打ちしてくるかと思って振り返り、構えた時だ。
「あんたスゲエ!!」
「……はい?」
ぎょっとしていると、大将は突然その場に正座した。
「女だというのにあの身のこなし、速さと強さ…。ただ者ではないな!?」
まあ、能力者ですが。
「頼む!! オレ達を弟子にしてください!!」
「押忍!! 弟子にしてください!!」
大将の後ろに他の奴らが集まり、大将と同じく土下座する。
これにはさすがに焦った。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! あたし、弟子とらないし……」
「押忍!! 一生ついていきます!!」
「い、いいい、一生!!?」
思わずどもってしまう。予想外の事態だ。
このままでは、こいつらの師匠になってしまう。
その時、道場の障子が開き、学校から帰って来た奈美が入って来た。
「な…、なにやってる…?」
お手伝いさんからなにも聞いていないようだ。
そこではっと思いつき、急いで奈美のもとまで走った。
「師匠、御苦労さまです」
「は!?」
突然深々と礼をしたあたしに唖然とする奈美。
奈美に背を向け、あたしは大将達に言い放つ。
「このお方こそ、この道場の跡継ぎの楠奈美先生だ! あたしのように強くなりたければ、この方に教わるべきだ!」
大将達は「おお!」と声を上げた。
事情を知らない奈美はかなり困惑している。
「誰なんだ、こいつらは…」
「では師匠、十分すぎるほどしごいてやってください!!」
奈美の質問を無視して横を通過し、縁側を全力疾走する。
「ちょっと待て!! 誰なんだ、こいつらは―――!!?」
奈美が、届かぬあたしの背中に手を伸ばして叫んだあと、「師匠!」「師匠!」「押忍!!」と大将達の声が聞こえた。
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