短編:過去拍手文
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昼頃、文句を言いに由良の部屋に訪れた。
「由良、またあたしのサイフから勝手に金とったろ!? 返せよ!」
由良は平然と床に寝転びながら菓子を頬張っていた。
絶対あたしの金で買った菓子だ。
「前に取った分も合わせて、5万だぞ」
早く返せ、と左手を差し出す。
由良を頬張りながら手をヒラヒラとさせた。
「…明日な」
「明日ぁ? 明日で5万がたまってたまるか! 無職のクセに!」
次の日、部屋に来た由良が、あたしの手にポンと5万を手渡してきた。
「ほらよ」
「ええ!?」
ホントに返ってきた!
怪訝そうに由良を見つめ、収入源を考えるが、まったくわからない。
おそるおそる尋ねてみた。
「……まさかと思うが…、体……」
「売ってねえよ」
すぐにしかめっ面で否定される。
そのあと、森尾と華音があたしの部屋にやってきた。
険しい顔をしている。
どうやら、由良に用があるようだ。
「由良、オレの本破ったのおまえだろ! 高かったんだぞ、コレ!」
「華音の車に傷つけたでしょ!? 直して! それかお金払って!」
「由良、なにをムシャクシャしてたんだ…」
これもまた、由良は平然と2人に言った。
「明日弁償する」
こちらに5万も払っといて、急に明日は無理だ。
しかも、2人分だから、倍高いはず。
2人は「払う」と言った由良に驚き、文句を言いながら自分の部屋に戻っていった。
これがウソだったら、間違いなく由良はただでは済まされない。
なのに、由良は目の前で呑気で大きな欠伸をしている。
夕方、由良が街へと出かけた。
あたしは気になって、変装してあとを尾ける。
街に到着し、由良はキョロキョロとなにかを捜している。
捜しているのは人か店かわからない。
電柱の陰から由良を窺いながら、不安を募らせていた。
……まさか、ホントに……。
“オレのこと買ってくれる?”
いやいやいやいやないないない、と激しく首を横に振って、思い浮かべたものを振り払う。
やがて、由良は捜しているものが見つかったのか、走ってそこへ向かった。
急いであとを追うと、由良が店の中に入ったのを確認した。
「ケーキ屋ぁ?」
怪訝な顔をしながら、少し時間を置いてあたしも店に入る
店員に頼んで、由良のすぐ近くにある斜め後ろの席にしてもらう。
由良は鼻歌を歌いながらメニューを見ていた。
夕飯でも食べにきたのだろうか、とコーヒーを飲みながら窺う。
少ししてから由良は店員を呼んで注文した。
「コレひとつ♪」
店員は驚いた顔をしたが、メニューを取るとさっさと行ってしまった。
しばらくして、店長自らケーキを由良のテーブルに持ってきた。
ただ、そのケーキの大きさがウエディングケーキとほぼ同じで、あたしだけではなく、店内にいた客も仰天する。
慌ててメニューを開き、由良が見ていたページを見た。
“当店の名物ビッグケーキ、全部食べたら2万円差し上げます。ただし、食べられなかったら3万円支払っていただきます”
これのためにきたのか。
それでも由良の顔は余裕だ。
「5つ食ったら10万か~♪」
なんてことをほざいてる。
店長は「ムリムリ」という顔をしているが、由良の不敵な笑みを見て、あたしは確信した。
こいつは絶対たいらげる。
「店長(オッサン)、ヤバイぞ、この店…」
あたしはメニューで顔を隠しながら小さく忠告した。
その先は見るものによれば圧巻だ。
ムシャムシャと食べられて小さくなるケーキを眺めながら、あたしはコーヒーと固唾を同時に呑む。
「おかわり!」
歓喜の表情で声を上げた由良を見て、店長の血の気がどんどん失せていく。
そして、由良は最初に来たときと同じ体型を保ったまま、両手に20万を握りしめて帰っていった。
「2度と来ないでください…」
由良が店を出たあと、店長は頭を下げて懇願するように言った。
哀れでならない。
そのあと、由良は森尾と華音に渡す金を引き抜いて、余った金で洋菓子を買って帰り、夕飯まで食べてみせてくれた。
一種のホラーを見て戦慄したあたしは、今日のことは忘れることにした。
.