08:みんなが行くなら
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屋敷内のリビングで、レン、由良、森尾の3人はテーブルを囲んで三角形をつくり、持ち込んだトランプでババ抜きをしていた。
レンは先に終わって成り行きを見守る。
「う~ん……」
由良はわかりやすく悩みながら森尾の手札を睨みつけている。
互いの手札は森尾が2枚、由良が1枚である。
由良と森尾の表情は、森尾の顔は包帯で半分隠れているが、真剣そのものだ。
由良は指先を迷わせた挙句、右の手札を引いた。
結果はジョーカーだ。
「ぐっ」
由良は唸ったあと、森尾に背中を向けてシャッフルし、手札を差し出す。
「…………」
森尾は手札を睨みつけ、左の手札を引こうとした。
だが、森尾がその手札を指でつまむと、由良から悪い笑みがこぼれる。
森尾の瞳がキラリと光り、素早く右の手札に替えて抜き取った。
「あ――――!!」
由良が嘆きの声を上げる向かいで、森尾は「あがり」と言って持っていた全ての手札をテーブルに置いた。
由良は悔しそうにジョーカーをテーブルに叩きつける。
「由良、笑うからそうなるんだ」
腕を組んだ森尾が呆れ、レンは腹を抱えて笑っていた。
「はははは!! んじゃ、先にあがった奴の言うこと、聞いてもらうぞー」
レンが言い出して始めたこのゲームは、先にあがった者がビリになった者に命令できる、というルールだ。
森尾はなんとか2番であがって逃げ切っている。
「……スカートがそんなにイヤかよ」
最初のババ抜きで由良が初めにあがり、レンがビリとなってしまい、セーラー服のスカートを穿かされていた。
華音の置き土産である。
「だから必死こいたんだろがっ」
由良がビリになったことで命令が解除され、レンはソファーの背もたれにかけていた自身のデニムパンツを穿き直し、スカートを脱ぎ捨てる。
華音に女物の服を着せられた時以来、レンはさらにスカート嫌いになっていた。
「んじゃあ、コレつけろ!」
レンがポケットから取り出したのは、赤のリボンだった。
由良は黙ってレンの手で髪に結ばれる。かわいらしくあえてポニーテールだ。
そのあと、笑いものにしてやろうと思っていたレンと森尾は、愕然とした。
てっきり、似合わないと思っていたからだ。
((なぜ似合う……!?))
由良は口を尖らせていたが、リボンが普通に似合っていた。
「これじゃあ、罰ゲームにならねぇ……」
レンが肩を落としたとき、由良は廊下に見えた広瀬に声をかける。
「ヒロセー! おまえもやろーぜー!」と手を振った。
広瀬はこちらを見ずに、「やらない」と冷たく言って行ってしまう。
(広瀬(あいつ)って、ひとりでも平気なんだな…。こんなに楽しいのに……)
レンはトランプを整えながら、ぼんやりとそう思って笑みを浮かべた。
「よし! 今度は勝つ! レンが負けたら、次はミニを穿け! モリヲは女装で街中歩いてもらうからな!」
由良はそう言いながら手札を配る。
((絶対勝たないと…!! 由良に勝たせちゃダメだ!!))
森尾とレンの心がひとつになり、どちらも集中力を高めた。
ふと、レンは森尾の包帯に視線を移す。
「森尾、包帯がずれてる」
一度立って森尾の背後に移動し、代わりに包帯を巻き直していく。
「ああ、ありがとう、レン」
「あたしはジョーカーを取ったら右端に持つから。うまくまわしてくれ」
耳打ちするレンに即座に森尾は「わかった」と表情を変えずに同じ声量で返す。
「オレは左端に持とう」
「そこ2人! 八百長禁止だからな!」
その夜、屋敷では遅くまで嘆きの声と喜びの声が上がった。
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