48:空っぽの怪物
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大通りの車道の中央を駆ける、由良とジャスパー。
まるで鬼ごっこだ、と思う由良だったが、鬼役が本気で殺しにかかって来ているため、最早ごっこではない。
ジャスパーは先程から、飄々とした調子で逃げてばかりの由良に苛立っている様子だ。
「【このオレから、本気で逃げ切れると思ってんのかよ!?】」
脚を変形させる。
あの状態ではすぐに追いつかれるため厄介だ。
由良はシャボン玉を浮かばせ、先にあった電柱の下部分を消し飛ばした。
その電柱の後ろに回り込み、ジャスパーの方向に倒れるように軽く蹴りを入れる。
倒れる電柱は電線を切り、ジャスパーに向かって倒れていった。
「【あぶねっ!】」
ジャスパーは横に飛んでかわす。
一度動きが止まったのを見計らい、由良は途中で路地を曲がり、4階建てのビルと3階建てのビルの間を走った。
「【逃げてるだけじゃ、オレは殺せねえぞ!】」
ジャスパーが執拗に追いかけてくる。
由良はジャンプし、4階ビルと3階ビルの壁を蹴りながらジグザグに上へ上へとのぼり、4階ビルの屋上に着地した。
下にいるジャスパーは「【マジ!?】」という顔で由良を見上げている。
「ベ―――」
由良は舌を出してこれでもかというくらい挑発した。
カチン、ときたジャスパーは、物凄い剣幕で怒鳴り散らす。
「【殺す!! そこ動くな―――!!】」
「へっ、だからガキだっての」
当然、大人しく待ってあげるほど由良は親切ではない。
ジャスパーが来る前に、他のビルに飛び移っていった。
4階建てから5階建てへ、5階建てから3階建てへ、3階建てからまた4階建てへ。
「!」
右斜めの方向から、何かがピカッと光ったのが見えた。
“アクロの心臓”の反応もそちらから感じる。
(ヒロセはあそこか)
今も派手に暴れているに違いない。
5階建てのビルの屋上に飛び移り、目を凝らした。
(あれは…、学校?)
学校の屋上から煙が上がっている。
学校の周りの建物は、原型を留めていられないほど崩れ、穴が空けられていた。
十中八九、広瀬はあそこだろう。
場所は把握できた。
同じくレンも気付いていればいいのだが。
ふと後ろを見たが、ジャスパーの姿はどこにも見当たらない。
「しまった。マジで撒いちまったか?」
あえて誘っていたのに、撒いてしまうのはまずい事態だ。
ジャスパーが由良の追尾を諦めてレンの方向に転換されてしまえば、レンの戦況が非常に不利になる。
ただでさえ、“心臓の欠片”を解放させた天草が相手なのだ。
そこへジャスパーが加われば確実に追い詰められてしまうだろう。
次のビルに飛び移ろうとジャンプした時だ。頭上を影が通過した。
「!」
はっと真上を見上げると、不気味な笑みを浮かべ、腕の筋肉を強化させたジャスパーが、組んだ両手を一気に振り下ろした。
ゴッ!!
「がはっ!」
左脇に直撃し、そのままビルとビルの間を落下する。
それを追うように、ジャスパーも落下してきた。
右コブシから骨のカギ爪を飛び出させ、由良にトドメを刺そうと振り被る。
「【死ねェ!!】」
「げほっ、クソ…ヤロウが…!」
骨のカギ爪が顔面目掛けて振り下ろされると同時に、由良は右側の壁を思い切り右足で蹴った。
「【な…にィ!?】」
その反動で、振り下ろされたカギ爪をかわすことに成功する。
ジャスパーはそのまま由良をすり抜け、落下していった。
しかし、由良がこのまま落下すれば、いずれ下で待ち構えているジャスパーにいいようにやられてしまうだろう。
判断は早かった。由良は咄嗟に手を伸ばして左側のビルの3階の窓枠をつかみ、窓が開いているのをいいことに、勢いをつけて中に侵入する。
うまく着地できず、床に転がった。
「ってェ!」
左肩を打ってしまう。
だが、今は肩よりも、左脇の方が激痛ものだ。
上半身を起こして左脇を抱え、吐血する。
「が…っ、ごふっ…、はぁっ、はっ…」
(空中で威力が落ちてるとはいえ、左側のあばら骨がイッた…。肺もちょっと傷ついたか…)
壁に手をついて立ち上がり、右を見る。
(学校の方向は、こっち側だったな…)
「【見ーっけ】」
「!」
振り返ると、窓枠にはジャスパーがのっていた。すぐに壁を伝って追いかけてきた様子だ。
「【鬼ごっこは終わりか?】」
「いや、もうちょい続く」
そう答えて、由良はシャボン玉を浮かばせると、自分の足下の床を消し飛ばした。
「【!?】」
3階から2階まで消し飛ばした床の穴から下に落ち、1階に着地する。
そのあとすぐに、目の前の壁を躊躇なくシャボン玉で大きく消し飛ばして通り抜けた。
また新しい建物の壁が目の前にあれば、同じように消し飛ばして真っすぐに進んでいく。大抵の障害物は由良のシャボン玉ならばどんなものでも破壊できるのだ。
「【一方通行かよ!】」
面倒臭そうにジャスパーが後ろから追いかけてくる。
追いかける足音を背中で聞いた由良は、ほくそ笑んだ。
目の前に、広瀬によって中途半端に穴を空けられたビルの壁をシャボン玉で消し飛ばし、追いかけてくるジャスパーの姿を肩越しで確認したあと、今度は周りの柱を消し飛ばした。
同時に、新たに消し飛ばした壁から、するりと外へと脱出する。
「【!!】」
ジャスパーがそのビルに足を踏み入れた瞬間、柱を失ったビルが一気に崩れた。
幸いにも、後ろ向きに。
「潰れたか?」
由良は、落ちていたポリバケツの蓋を盾代わりに、降ってくるガラスの破片や瓦礫から頭を守った。
周囲を見渡すと、車道の向こう側は住宅街となっている。
広瀬の被害にあった家も何件か見つけた。
ビルの屋上から見えた通りならば、学校までもう少しだ。
その時、ガラ…ッ、と瓦礫が持ち上がる音が聞こえた。
「!?」
はっと振り返ると同時に、骨の刃が伸びてきた。
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