07:嫉妬してる?
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深夜、太輔の始末に失敗して屋敷に帰ってきた森尾は、エントランスホールの鏡の前で顔の包帯をはずし、愕然としていた。
ガシャンッ
包帯を持った右手で目の前の鏡を叩き割った。
「くそっ…! オレの顔に、こんな傷を…! 叶…太輔…!!」
歯軋りする森尾の背後に、人影が近付く。
「よう、モリヲ。ずいぶん男前になったなぁ―――」
「!!」
由良は森尾の背後をとると、森尾の前髪を指でつまみ上げた。
見ると、森尾の顔の左半分が酷い火傷を負っていた。
森尾はすぐに左手で火傷を隠し、右手で由良の手を振り払う。
「おまえ、「軽い運動のつもりで行ってきますよ」とかぬかしてたっけ?」
由良が笑みを浮かべながら挑発的な口調で言った。
痛いところを突かれた森尾はうつむいて奥歯を嚙み締める。
「!」
その時、レンが階段を下りようとして2人の姿を見つけた。
(あいつら……)
不穏な空気に立ち止まってその様子を窺う。
「でも、タイスケ殺るどころかカッコよくしてもらっちゃって! おまえって、ケッサク―――!」
由良が笑うと、顔を上げた森尾の瞳が妖しく光った。
ゴウッ!
「!」
強風を起こして体に風を纏わせた森尾は、由良を睨みつける。
「由良、キサマ…!!」
「……あれ?」
由良の足下からシャボン玉が浮かび上がり、由良は舌をベッと出して挑発的な笑みを浮かべた。
「ヤル気ィ…?」
殺気立つ2人に見兼ねたレンは、「やば…」と漏らしてそこから階段の手すりを飛び越え、1階に下りて2人に駆け寄る。
「やめろ、おまえら!!」
ゴッ
その時、向き合っていた由良と森尾の間を何かが通過し、鏡ごと壁に大きな穴を空けた。
「な……!?」
森尾が驚いて壁の方に振り向いたあと、レンと由良と森尾は同時に階段を見上げる。
「「「!!」」」
「うるさい」
広瀬がこちらを睨みつけて小さく言ったあと、再び階段を上がって行った。
「…………」
今のが当たっていたらと思うと、森尾の顔が真っ青になる。
「……ったく、キレやすいガキ……」
由良は溜め息をついたあと、口を尖らせながら頭をガシガシと掻いた。
レンは再びケンカを起こさないようにと由良と森尾の間に入る。
「まったくキミ達は……もっと仲良くできないのかな」
階段から勝又が困った顔で下りてきた。
広瀬とすれ違ったのか、視線が階段の上に向けられている。
「お―――! 勝っつん。見ろよ、コイツさぁ―――!」
由良ははしゃぎながら森尾を指さす。
「やめろ!!」
「由良!」
森尾が怒鳴り、レンも「いい加減にしろ」と怒鳴った。
そこで、ふと、レンは森尾の顔を覗きこんだ。
森尾の火傷は酷いが、能力者なら回復の兆しがあるはずだ。実際、ガラスを殴って傷ついた右手の切り傷はすでに塞がりかけている。
そして、レンはその火傷に違和感を覚えた。
「……ちょっと…待てよ」
「……あれ?」
由良もその違和感に気付いて森尾の顔を覗きこむ。
森尾が帰ってきてから数時間が経過していた。
「そういや、なんでその火傷……」
森尾は先に気付いていたのか、黙ってうつむいた。
「……北条君と由良君も気づいたかい? 我々は多少のケガならすぐに治る。…が、その顔の火傷には、回復の兆しが全く見られない。……つまり、叶君の攻撃を直接受けてできたケガは―――治らない」
勝又の淡々と話す内容に、レンと由良は表情を強張らせた。
「な…に…!?」
由良が森尾の顔を凝視する。
「…………」
事実を突きつけられた森尾は歯軋りして、コブシを握り締めた。
「どうやら、彼の能力(ちから)は完全に細胞を死滅させることができるらしい……。もう1人彼に仲間がいたとはいえ、森尾君がここまでやられるとは…誤算だったよ……。叶君の評価を改めなくてはならないな」
レンが森尾の火傷を見つめていると、右手を腐食の能力でボロボロにされた水樹がフラッシュバックし、怒りが沸々と湧き上がってきた。
(許さねぇ……!)
「勝又さん、あたしに行かせてください!」
そう言って、一歩前に乗り出す。
「レン?」
森尾が驚いてレンの表情を見つめた。
レンはコブシを握り締める。
「その叶太輔ってのが邪魔なら、今度は、あたしが…!」
「ダメだよ」
「!?」
勝又はレンの言葉を遮るように言った。
レンは戸惑いの色を浮かべる。
「……森尾君の二の舞になるのがオチだ」
「―――っ!」
思わず勝又を睨みつけてしまったが、勝又は穴の空いた壁の方に振り返ってレン達に背中を向ける。
「……とにかく、今は休みなさい」
レンは由良に促されるように軽く背中を押され、しぶしぶそこを離れた。
森尾は広瀬が空けた穴を見上げている勝又に近付き、申し訳なさそうに頭を下げる。
「………お役に立てず、すみませんでした」
「―――森尾君」
名前を呼ばれて顔を上げる。
勝又は断面に手を触れて背中を向けたまま静かに言った。
「私には仲間には有能であってほしい…。笑って許すのは、一度だけだよ」
「……!」
圧を感じた言葉に森尾はツバを呑んだあと、そこから離れる。
残った勝又は綺麗に切り取られたかのような穴を見つめ、目を細めた。
(ふむ…。広瀬君もなかなか順調に成長しているようだ。頼もしいな。最終的に北へ向かうまでの間に、あと数人“仲間”を集めなければな…。あの方に会うまでに……)
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