46:あの時、出会ってなかったら…
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どこに広瀬が現れるかは、東京ということだけしか判明していない。それが、家なのか、思い入れのある場所なのか、友人(太輔・恵)のもとなのか。
広瀬がこちらに到来する前に、レンには立ち寄りたい場所があった。
目的地に到着し、レンはゴーグルごとヘルメットを脱ぐ。
「懐かしいな…」
由良と初めて出会った、あの横断歩道だ。
周りには車も人も見つからない。近隣住民は避難したのだろう。
こちらもすっかり閑散とした空間と化している。
足下に落ちていた新聞紙が風に飛ばされた。
信号は青も赤も点いていない。
バイクから降りたレンは由良を置いて、横断歩道の中央に立った。
「あたしはここで、由良はそこ」
そう言いながら自身の足下と、信号機の下付近を指さす。
出会いの距離は、ちょうど、この位置だ。
由良が信号を落としたことで、レンは何事かと振り返り、目が合ったのだ。
信号機の下に移動した由良はニヤリと笑い、あの言葉を口にした。
「おまえ、赤信号無視できるんだな」
一瞬戸惑ったレンだったが、すぐに当時の自身の顔と言葉を思い出しながら言い返す。
「……珍しくないだろ。あたしの学校でも、普通に無視してる奴いるし…。渡る時は自己責任になっちまうけど」
「学校? おまえ学生?」
由良の問いにレンは「まあ…」と頷いた。
「で、信号機壊してどーすんだよ?」
「……見てるとイライラすんだよ、こういうの…ぶはっ」
「あっはははっ!」
耐え切れずに先に噴き出して笑ったのは、由良だった。
続いて、レンもつられるように腹を抱えて笑う。
「なんで全部覚えてんだよ!」
「レンこそ、セリフ長えのにスゲー!」
散々笑ったあと、レンは由良の立つ信号の下に歩み寄った。
「あの時のレン、けっこう荒んだ目してたよな。顔面にリュックぶつけられたし…」
「初めて由良見たとき、正直、100%不審者と思ってた」
「なにー?」と由良がわざとらしく頬を膨らませたのを見て、また笑う。
(―――でも、あの時、出会ってなかったら…)
今のレンはここに存在していない。
「……怖えか?」
由良は空を見上げながら言った。
現実に引き戻される。
「……怖いに決まってる…」
素直な言葉で答え、由良と同じく空を見上げた。
澄んだ青空だ。
案外、世界の終わりにふさわしい空色かもしれない。
「由良…」
コブシを握りしめ、震えを止めようとした。だが、うまくいかない。
それでも声を振り絞った。
「―――あたしが死んでも、あたしを忘れないで」
その言葉に、視線をレンに戻した由良が、レンの震える左手を握る。
レンも握り返した。
どちらが震えているのか、どちらの汗でしっとりしているのか、重ねてしまえばわからない。
由良は舌を出して応える。
「忘れてほしくなかったら、オレより長生きしろよ」
似たようなことを、2年前にレンが由良に言ったことがある。
覚えていたレンは、くすっと笑った。少しだけ肩の力が抜ける。
手を握ったまま、その胸にそっと身を寄せた。微かに、由良の穏やかな心音が聞こえる。
(もうすぐ世界が終わるかもしれない…。だから、少しだけでいい…、今はこの瞬間を……)
由良と目を合わせ、つま先立ちをして唇を重ねた。
どれくらいそうしていたのか、閑散とした街の彼方で、ついに、終わりを告げる轟音が無情に響く。
.To be continued