40:帰ってみる
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稜に東京まで送ってもらったあと、レンと由良は街中にあるネットカフェに訪れていた。
ペアシートはちょうどいい。このまま宿泊できるくらいだ。
レンはパソコンを起動させてから、マウスを動かしたり、キーボードを叩いたりする。
片手作業は時間がかかるのでもどかしく、無意識に眉間に皴が寄った。
ネットカフェに来たのは、雨宮が開設したサイトで情報を得るためだ。
レンはまだそのサイトを見たことがない。
背後からレン越しに画面を覗く由良に声をかけられる。
「それってオープンで公開されてるモンなのか?」
「ああ。より情報が集まりやすいようにな」
「口封じとかされねえの?」
「杏(プロのハッカー)がついてる。大丈夫なはずだ。それに、今のタイミングでこのサイトの管理者を襲えば、怪しまれるのは軍の奴らだ。奴らだって、自分の首締めることくらいわかるさ」
(だから今のところ、雨宮達に害が及ぶことは、まず、ない)
「……そいつのところには?」
世話になった居候先のサイトだということは、ネットカフェに入る前に由良に説明していた。
海外にいた時も、メールでのやり取りはしていた。レンの現状も知られている。
「一度こっちにおいで」とは言われたが、「大丈夫」とだけ返しておいた。
「……軍に追われてる身だからな。あまり出入りするのは向こうが危ない」
画面を見つめながら答える。
サイトを見つけ、マウスのボタンを押そうとした時だ。
「ちょっと飲み物入れてくる」
水分を摂取していないことを思い出し、腰を上げる。
せっかくのドリンクバーだ。もとは取りたい。
「……由良、なに飲みたい?」
「アイスココア♪」
「わかった」
個室から出たあと、カチッとレンの背後から音が聞こえた。
サイトがどんなものか気になった由良がマウスを押したのだろう。
別に気にはしなかった。どうせ、一緒にサイトを見るつもりだったのだから。
ドリンクバーはオープン席の傍を通った先にある。
誰もが周囲を気にすることなく画面に集中していた。
普通の足どりで間を通る。
ふと右横の、2人の女子高生が座っている席を見た。
「ねえ知ってる? この話」
「あ、知ってる知ってる! これってホントに起きたんでしょ? レインってやっぱ探偵なんだー」
雨宮のサイトだとわかり、思わず立ち止まる。
「最初は、この北条って人が目的で覗いてたんだけどねー」
「私もっ。カッコいいよねー、北条様。女の人みたいに美人だもん」
「!!?」
レンは画面を見て仰天し、我が目を疑った。
同時に、顔が真っ青になる。
雨の中で哀愁漂う目を向ける、シャツをはだけさせた男体の自分が画面の中にいた。
「あんた、「北条様」って崇拝しす……」
笑いながら、2人の女子高生の視線が、硬直して画面を見つめているレンに移る。
レンははっとしたが、遅かった。
「「北条様!!?」」
ネットカフェ内に女子高生達の黄色い声が轟く。
そして、画面を見ていた者達が一斉に顔を上げてこちらを見た。
大半の者がそのサイトを見ていたのか、レンの顔を見て「あ!!」と声を上げる。
レンは即座に踵を返し、個室席まで全力で走った。
突入すると、最悪なことに、由良が今まさにその画面にくぎ付けだ。
気配を察しておそるおそるこちらに振り返り、真っ青な顔を向け、画面を指さす。
「お…、おまえ…、男……」
「バカか!!!」
レンは今すぐ、目の前のパソコンを容赦なく叩き壊して今見た記憶がぶっ飛ぶほど由良の頭を力いっぱい殴ってやりたかったが、そんな暇はない。
先程の女子高生達だけではない、レンの顔をサイトで見た客が確認しようと行動する足音がこちらに接近していた。
すぐに由良の手を引っ張ってそこから逃走する。
(雨宮ああああああああああ!!!)
レンは激怒した。必ず、肖像権の侵害で訴えてやると決意した。
次に雨宮に会う時は、法廷かもしれない。
近々、掲示板に書きこまれる内容はおそらくこれだろう。
“○○インターネットカフェに、レイン探偵事務所の北条が出現!!”
プラットホームの一件で雨宮のサイトは大ヒットしたそうだ。
閲覧もどんどん増えていることだろう。
しばらく情報機器には近寄りたくないレンだった。
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