40:帰ってみる
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恵と御霊が出かけ、天草はいつも通り、身を潜めながら2人についていく。
近付く者は、能力者・人間に構わず容赦なく排除するのみ。
(私のやり方に、現代の者共はそれを指さして嗤う。それが嫌でお父様は自分の代で終わりにしたのだ。勝手に、娘の私をさし置いて……)
父親のようにはならない、と天草は己に言い聞かせる。
たとえ人に嗤われても、自分の使命は必ずやり遂げてみせる、と。
木陰から御霊の様子を窺いながら、自身の胸に手を当てた。
(―――この“欠片”の力を使ってでも、私は…)
しばらくして、恵が太輔と再会した。偶然だった。
天草は、そこから少し離れた木の上からその様子を窺い、どうするべきかと考えた。
叶太輔は勝又の敵であり、同時に、“アクロの心臓”にとって必要な人材。
それから、恵の友人だ。
ここで捕らえ、勝又に献上すべきか。
天草が迷っているうちに、御霊と太輔が出会う。
太輔は御霊を目の前にしてもキョトンとしている。
能力者ならば、御霊を見た瞬間にその威圧感に身体が委縮しているところだ。
(アレが小さき者…。御霊の存在に物ともしないか…)
腰に差した小太刀の柄を握りしめて構えた瞬間、御霊の鋭く射抜くような眼差しがこちらに向けられた。
「待て」と目で命じられる。
天草は構えを解いた。
仕方なく、他の仲間から能力者同士の“反応”で気付かれる恐れもあり、離れた場所からそれを見守ることにする。
今のところ、太輔は敵意を見せてはいない。
太輔はその場で恵と多少の会話をしたあと、御霊も一緒に別荘に招いた。
別荘の中には他の能力者もいたが、天草が離れたところから窓を窺ったところ、レンの存在は確認できなかった。
共に行動しているかと思えば、とっくに離反している様子だ。
ジャスパーの情報を思い出し、太輔達とは離れ、由良と共に行動しているのだろうと推測する。
胸の内がざわついた。
(北条はどこへ行った…? 勝又様には警告の電話は入れたが…)
電話の向こうの勝又も特に慌てる様子はなかったが、不安に包まれた。
移動して庭の茂みから目を凝らして中の様子を窺い、耳を澄ます。
やはり、太輔以外の能力者は全員、御霊を恐れ、必要以上に距離を置いていた。
なのに、2人用のソファーに座っている恵と御霊に、太輔が平然と近付く。
天草は歯痒くなり、窓越しに太輔を睨み付けた。
(小さき者とはいえ、無礼にもほどがある…!)
太輔の次に、ただの人間である伶が近付いた。
平気で御霊の目の前で煙草を吸っているので、天草は「御霊の前でタバコを吸うな愚か者…っ」とくわっと険しい顔になる。
伶が「出てってくれ」と御霊に刺々しく言った。
御霊は無表情のままだ。
太輔は伶の冷たい態度に、「レ、伶兄!? 待てって、せっかく…!」と戸惑っている。
伶は構わず、すべての元凶を見下ろして言葉を続けた。
「ここには“心臓”もその“欠片”もねえし。―――つーか、あんたがいると家(うち)のモンが落ち着かねえ」
「…悪いケド」と煙草をふかす伶はまったく悪びれていない。
この場に由紀恵がいれば、今頃御霊に“心臓の欠片”を奪われて殺されていたかもしれないのだ。
葵、純、杏も離れたところから御霊を強く睨んでいる。
「…タマちゃん、帰ろっか」
空気を察し、恵はできるだけ柔らかく笑いかけながら御霊を促し、立ち上がろうとした。
その時、太輔は慌てて声を上げる。
「だっ!? ダメだ! メグはオレと一緒にいろ!!」
「……………」
免疫がないため、聞き耳を立てていた天草も思わず自分の顔も赤くなってしまう。
御霊が構わず立ち上がり、出て行こうとした。
「……行こう、恵。この島にもう用はない。“心臓”だって、ここには近寄らんし」
「ま、待った! あんた、“心臓”の居場所がわかるのか…?」
今度は伶が声を上げる。
御霊は馬鹿にするように鼻で笑い、尊大な目を向けた。
“アクロの心臓”の居場所がわかるのは、御霊だけではない。“欠片持ち”もそうだ。
だから勝又、由紀恵、フリードキンも追いかけて来れたのだ。
「…なあ、メグ。広瀬なら、どこに行くと思う?」
ふと、太輔が恵に尋ねる。
「へ?? 急に言われても……。う~~ん…。…家に帰りたいんじゃない?」
悩んだ末、恵が口にする。
つまり、日本。
太輔の顔がはっとした。
「そうか…。そうだ! どこか行ったとしても、帰るなら日本だ!」
太輔が声を上げ、それを聞いた伶達も、そんなまさか、いや、ひょっとしたらと目を合わせたり、声を発したりしている。
「私もそこに行きたいなぁ、恵」
それはつまり、御霊も日本に向かうということ。
天草も目を見張った。
「太輔も来い。ふたり一緒の方がいいんだ」
(御霊が行くならば、私も同行しなければ…。勝又様に連絡しないと……)
御霊は簡単に言ってくれるが、用意や後処理をするのは天草である。
太輔達にもできれば自身の存在をばらしたくはない。
また遠くから監視しなければ。北海道でレン達を監視していたように。
(……日本…か…)
もしかしたら、と考えてみる。
レンも、日本に帰国しているのではないか、と。
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