37:拝啓、神様へ
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広瀬の攻撃がピタリとやみ、ジャスパーは倒れた鉄塔付近の屋上から確認した。
広瀬の本体はどこへ行ってしまったのか、辺りを見回していると、鉄塔が倒壊したことで出来た割れ目から、何かが飛び出してきた。
塊だったものがボロボロの巨大な布に広がり、その布に巻きつかれた由紀恵が姿を現す。
ジャスパーは驚いてそれを見上げ、凝視した。
「……………」
由紀恵は口を塞がれ、“アクロの心臓”を手放してしまった。
それはすぐに広瀬の布に覆われ、奪われてしまう。
「むぐ…っ」
口に覆われた布を剥がそうとしたとき、布が顔間近に迫り、広瀬の顔となった。
プラットホーム上に現れた時と同じく、目は髪で隠れてわからないが、広瀬は口を開き、つい先程、「あなたひとりで死になさい」と言った由紀恵の耳元で囁く。
い や だ
同時に、広瀬の布の一部が尖り、由紀恵の胸の中心を貫いた。
由紀恵を縛っていた布は解かれ、由紀恵はそのまま真っ逆さまに落下していく。
広瀬の布は、由紀恵の“心臓の欠片”を包み、我が物にした。
そのあと、とんでもない速さで割れ目目掛けて降下する。
ジャスパーは急いで屋上の端に走り寄って下を見た。
「ぐっ!?」
広瀬はそこにいた太輔に纏わりつき、そのままプラットホーム真下の海へと引きずり込む。
始終を見ていたジャスパーは「【どうなってんだ…】」と呟いた。
*****
一方、御霊と手を繋いで海沿いの遊歩道を歩いていた恵は、向こうから来る人物に気付いた。
「恵様―――!」
「あれ? 天草さん?」
御霊と恵を追ってきた天草は、恵と御霊の前で立ち止まり、片膝をつく。
御霊に顔を向け、声を潜ませて尋ねた。
「御霊、何故恵様まで……」
「仕方ないだろう。このナリでは飛行機というものに乗れない」
御霊は天草と合わせて声を潜めることなく、当然のように言い放つ。
天草は、こちらを見下ろしている恵を一瞥し、御霊に言い聞かせるように言った。
「しかし、勝又様にはあれほど……」
「おまえも勝又のようになりたいか?」
見下す目付きで不気味な笑みを浮かべた御霊が言うと、天草はビクッと体を震わせ、勝又の胸の傷を思い出す。
「……………」
言い返すことができず、冷や汗を流し、それ以上は何も言わなかった。
恵は困惑な顔をしたまま御霊と天草を交互に見たあと、天草の手首をつかんで立ち上がらせる。
「天草さん、ほら、なにも言わずに来たことは謝るから…」
「私はそう言ってるのではなく……」
その時、ふと、恵は海の方に顔を向けた。
「……広瀬君?」
「!!」
天草が真剣な面持ちで、庇うように恵の前に立ち、右腕を硬化させて構える。
同時に御霊は目付きを鋭くさせ、海の方から迫って来た、見えない何かに怒鳴った。
「こいつに触るな! 去れ!!」
広瀬の片割れだ。
御霊を恐れ、それはビクッと怯んだあと、ゆっくりと逃げるように引き下がる。
「あ! しまった、“心臓”…!」
はっとした御霊は両手を伸ばしたが、もう遅い。
“アクロの心臓”と共に、広瀬はどこかへ飛び去ってしまった。
「………そんなはずないか」
広瀬の気配を感じた気がした恵は、気のせいかと考える。
天草は右腕を元に戻し、「ふう」と息をついた。
「恵のせいだぞ~~」
「な? なにが―――!?」
いきなり御霊に、うろん、と恨めしい目で睨みつけられ、恵は困惑する。
天草は薄笑いを浮かべたあと、恵の手から荷物を取り、先導してミケーレ達の泊まっている場所へと案内するために歩き出した。
(思春期かなぁ、2才にして…)
御霊と手を繋ぎ直し、恵がそう考えていると、御霊は海の方向を見たまま呟く。
「……まあいいや。今度、な」
3人の上空を、軍のヘリが3機通過する。
天草は海の果てに目を向け、ひとり、ジャスパーの身を案じていた。
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