36:さよなら
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太輔が軍と共にプラットホームを訪れる少し前に、すでに内部に潜入していた能力者がいる。
(【おいおい、えらいことになってるじゃねえの…】)
プラットホームの通路で、ジャスパーは、潜入すると同時に、近くにいた兵士から服を奪って身を潜ませていた。
先程の放送を聞いて、兵士として紛れている分、ただじっと待ってるわけにはいかないと思い、それらしく行動する。その方が賢明な気がしたからだ。
カメラの位置を確認し、向こうから兵士達が来たと同時にそれに交じってついていく。
兵士達はジャスパーを怪しがることなく先を急いだ。
仲間の顔くらい覚えとけ、と馬鹿にしたくなる。
向こうの通路からもバタバタと騒がしい音が聞こえた。
(【偵察に来ただけだってのにこの騒ぎ。ヘタすりゃ、オレ様まで投降しなきゃなんないわけ? 兵士に紛れるって作戦は正解だな。“お仲間”もやらかしてくれるぜ、まったく…】)
うんざりした顔をしながら、周りの兵士達にバレないようにため息をついた。
潜入する前、宿泊先のホテルで交わした、ミケーレとの会話を思い出す。
『【ええ!? なんでオレ様が偵察に行かなきゃいけないわけ!?】』
『【そういうなよ、ジャスパー。勝又さんの指示なんだし】』
ジャスパーは勝又のことは嫌いではないが、いつも唐突な指示をするのはやめてほしかった。
楽しめることも混ざっているがほとんど面倒事ばかりで、大概が遠出しなければならない。
「【ミッキーが行けばいいだろ。つーか、アキセンパイはどうした? こっちに来るんだろ?】」
最初はジャスパー、ミケーレ、ルドガーで島を訪れたが、あとから天草も合流するとのことだ。
勝又のメンバーの中で、偵察に向いているのは誰が見ても天草でである。
提案するが、ミケーレは首を横に振った。
「【アキはここで待機しているように、ってことだ。なんか…アキが持ってるものを取られるのは…まずいって…】」
難しい顔で勝又の言葉を思い出しながら口にするミケーレに、ジャスパーは『【はあ!?】』と不服を表す。
『【意味わっかんねえ! ついに痴呆か、おっさん!】』
ゴン、とミケーレにコブシで小突かれた。
『【とにかくそういうことなんだ。ルドガーはまだ傷が完全に塞がってないし、オレじゃ嫌でも目立つ。いい加減にしないと勝又さんと御霊に怒られる…】』
見事な失敗続きで何かを成し遂げたいのだろう。
『【……わかった、わかったって。“心臓”絡みじゃ仕方ない】』
(【だからこそ、正直、勝又のおっさんに怒られるより、御霊を怒らせる方がよっぽど恐ろしい】)
そして、今に至る。
(【とことんツイてないってのが嫌でもわかるぜ。最悪、今日で“アクロの心臓”が引き上げられるかもしれない。その役目が、太輔って奴か、レンセンパイかはわからないが、どちらかに“心臓”が収められたとき、オレが指示なしでそれを拉致ってとんずらするしかない…】)
肉を取り合う虎と獅子の群れから、肉を取り上げて逃げるような至難な業が求められた。
どう考えても無傷で済むとは思えない。
(【アキセンパイ…、オレ様今日死ぬかも…】)
潜入前に、天草に電話をかけた時のことを思い出す。
『無理はするな。貴様が強いことはわかっている。…だが、これから行く場所は、我々能力者にとって最も危険な場所だ。アレには、厄介なものまでついている…。私が行けば……』
一旦間を置き、電話越しの天草は、自身の胸に手を当てて目を伏せ、言葉を継いだ。
『とにかく、無事に帰ってきてくれ』
(【……センパイ、あの時、なにを考えてたんだろ…】)
天草の中には勝又と同じ“心臓の欠片”がある、と天草本人から聞かされていた。
ジャスパーには理解できないものだ。深く知る必要もないと思っていた。
だが、電話のやり取りの中で、普段は冷たい態度を見せる天草がこちらをいじらしく心配するのは珍しいことだった。
(【きっと危ないんだろうな…。でも…、やり遂げてやるよ…】)
達成すれば天草は喜んでくれるだろうか、と胸を馳せる。
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