35:わかってるからこそ…
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鉄塔の内部に入った由良は、辺りを警戒しながら、D2の行方を捜していた。
D2が落下した転落防止用の金網のフェンスがある場所から、この付近にD2が落ちたのは間違いないだろう。
壁を沿いながら、D2の潜んでいそうな場所を捜し、いるかいないか目で窺ってから素早く別の場所に走って移る。
(あのヤロウ、どこ行った…。深追いするのは危ねえが、このままにはしておけねえ……)
先程のこともある。またどこかで狙い撃ちしてくる可能性が高い。
鉄塔から落下しても撃ち殺そうという執念深さを目の当たりにしてるから尚更だ。このまま引くわけがない。
『由良!!』
鉄塔を降りた際、声が聞こえた気がして、そちらに視線を移した時にレンと目が合ったことを思い出す。
(あいつも来たか…。陸でおとなしくしときゃいいのに…)
レンの性格上、大人しくしているはずがないとわかりきっていたことだ。
アンジェラと共に軍人に追われている様子だった。
間接的に由紀恵に利用されているのではないか、と小さくため息をつく。アンジェラの思惑も謎のままだ。
(こっちを先に片付けねーと、あいつもいい的だ)
考えながら、由良は管理用通路を走りながら渡った。
(奴は銃を使う。ってことは、奴の直線上に身をさらさなきゃいい。弾はオレのと違って、真っ直ぐしか飛ばねえからな。要は……)
薄暗い狭い廊下を進んでいくと、先の廊下の床に血痕が付着しているを見つけた。
それは点々と、左右の曲がり角のうちの右に曲がって続いてる。
(わかりやすっ…)
明らかに罠であることは見え見えだ。
忍び足でゆっくりと血痕をたどっていく。
(血につられて追ってきたところを狙おうってのか? なら……)
左右の曲がり角の廊下は電気が点いて明るかった。
曲がり角を曲がる前に立ち止まり、ニヤリと口角を上げる。
(おまえが潜んでいるであろう場所ごと吹っ飛ばしてやる)
床からシャボン玉を浮かばせ、操って右の角に向かって飛ばした。
様子を窺うために明かりが点いた廊下に顔を出し、ふと左の廊下を見ると、
「!」
奥にある部屋のドアの陰から、こちらを拳銃が視界に入った。
D2には、右の廊下を窺うため顔を出した由良が見えてる。
由良が気付くと同時に引き金を引いた。
D2もこの戦いの勝利条件を把握している。
(【―――要は、この勝負、先に相手を見つけた方が勝ち】)
ドン ドン
2回発砲されたが、由良は咄嗟に飛び退いた。
ひとつめの銃弾は壁を抉り、もうひとつの銃弾は由良の右耳をかすめる。
由良は耳に痛みを覚えるとともに、目つきを鋭くさせた。
シャボン玉を浮かばせ、左の廊下に飛び出す。
「てめえ!!」
怒声を上げ、D2が隠れる扉に向かってシャボン玉を飛ばした。
D2はすぐに扉の陰から離脱し、部屋の奥へと走っていく。
扉はシャボン玉によって吹っ飛ばされ、由良はさっと部屋の傍に近付き、壊れた扉から中を窺った。
D2が逃げ込んだ部屋の中はプラットホームの中心部だ。薄暗く、倉庫のように大きなフロアになってる。床は鉄格子のパネルとなっていて、海が見えた。
中には設置されている物や木箱が多く、D2がどこに隠れてるのかわからない。
「チッ」
(繰り返しか…)
舌打ちをしたあと、自身の負傷した右耳に触れた。
血が耳の中に入って気持ち悪い。
「痛てて…」
(入り口はここしかねえ。……オレを誘い込むハラか? 上等だ)
中に一歩踏み込み、辺りを見回しながら挑発的に声をかけた。
「お―――い、イケメンく~ん。ちょっとお話しようぜぇ~」
(早く撃ってこい。おまえの位置さえ、だいたいわかれば……)
「ヘロ~~~」
警戒しながら、D2が射撃してくるのを待つ。
ドンッ
間もないうちに、銃声が聞こえ、由良の傍にあるドアの縁に銃弾が撃ち込まれた。
飛んできた方向がわかり、ほくそ笑んでシャボン玉を浮かばせ、右斜めの方向に向かって飛ばす。
「そこか!!」
バババババッ
積まれた木箱を消し飛ばした。
その後ろにD2が隠れているはずだった。
しかし、D2の死体どころか、人間を消し飛ばした際に発生する赤い霧さえない。
驚いて目を見開き、由良はフロアの中へ思わず踏み込んだ。
(いない!? そんなはずは―――)
ドンッ
どこかで拳銃が発砲され、その銃弾は鉄塔の柱にぶつかって曲がり、由良の左脇腹に撃ち込まれた。
(跳弾か!!)
そう知ったと同時に、撃たれたところから痛みが走り、血が噴き出す。
してやられたような屈辱を覚え、沸々と怒りが湧き上がった。
「くっ…そがぁ!」
その場に屈み、大量のシャボン玉を浮かばせる。
「サラ地にしてやる!!」
ゴアッ!
そこからは、周囲にあるものを見境もなく破壊し始めた。
一歩、また一歩と進みながら、目に入るものを次々と消し飛ばしていく。
D2はフロアの奥にある遮蔽物の向こう側にしゃがんで身を潜めていた。
拳銃を構え、破壊されていく音に耳を澄ます。
それは徐々にこちらに近づいてきた。
(【こっちも跳弾で仕留めようなんて思ってないよ。でも、こうすることで、キミの不安と焦りは爆発する】)
ヘリコプターデッキで、由良が兵士達を爆死させた時のことを思い出す。
飛ばしていたいくつかのシャボン玉は、由良から離れたところでひとりでに割れていた。
それを窺っていたD2は、スコープのレンズにあるミラスケールで距離を測っていたのだ。
由良と、勝手に割れたシャボン玉の距離は大体数メートルと把握している。
(【あの時は…、確信が持てなかったけど、キミはボクを殺そうとして、わざわざ鉄塔を上がってきた。つまり、能力(ちから)には射程範囲があるということ】)
そこで、由良の能力の弱点が確信へと変わる。
目の前の遮蔽物をじっと見つめ、いつでも発砲できるように由良が来るのを待ち構えた。
(【そこからじゃ、能力(ちから)は届かないはず。それさえわかれば…、キミは怒りをバラ撒きながら近づいてくる、単なる的でしかない】)
爆発音がだんだん近づいてくるのがわかる。
由良は自棄を起こしたかのような叫び声を上げ、徐々にD2との距離を縮めていった。
だが、遮蔽物が邪魔でD2の姿が未だに確認できないようだ。
由良のシャボン玉は、床、天井、設置物を破壊していく。
床には大きな穴が空き、破壊された天井から真っ青な空が見えた。
じっと息を潜めるD2は、天井を飛ぶシャボン玉を見上げ、ぼんやりと思う。
(【それにしても、綺麗だ。綺麗だな…。本当に不思議な生き物だと思うよ、キミらって。もう少し眺めていたいけど、キミを見つけたら撃つんだろうな】)
目の前の遮蔽物が上から破壊されていく。
そして、由良の後ろ姿を見つけ、素早く拳銃を構えた。
(【ボクは、そういう生き物だから】)
発砲されると同時に、由良ははっと振り返る。
バシュッ
由良の額から血が噴き出した。
周りを飛んでいたシャボン玉はすべて割れ、由良の体はその場に仰向けに倒れ、辺りは一気に静寂を取り戻す。
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