35:わかってるからこそ…
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レンの足下には6人の兵士が身体を痙攣させながら転がっていた。
見守っていたアンジェラは、そろりそろりと近付き、哀れな兵士達を見下ろす。
「しゅ…、瞬殺…。ほんで、生きとるし…」
レンは鼻をフンと鳴らし、スタンガンで自身の電力を再び充電する。
いちいちまどろっこしいので、「あたしに近づくなよ」とアンジェラに注意してから、2つのスタンガンを両手に持ち、首に当ててスイッチを入れた。
アンジェラは「痛ないん…?」と両手を口に当てながら凝視する。
「今、外に出るのは危ないか…」
レンは呟きながら、窓の向こうを窺った。
いきなり手榴弾や銃で攻撃してきた相手は、おそらくこの建物の3階にいるだろう。
廊下の床に転がっている兵士達よりは警戒した方がよさそうだ。
使い終わったスタンガンをその場に捨て、思案した。
(窓から撃ってきた奴…、前会ったキザったい奴とは違うな…。射撃が荒い。あのキザヤロウの腕前なら、とっくにあたしかアンジェラの頭が吹っ飛ばされてる…)
海岸でD2と対峙した時のことを思い出す。
足先ギリギリを狙うほど弾道は正確、当てようと思えばいつでも当てられる自信と腕前が見受けられた。
先程攻撃してきた人間と同一人物とは到底思えない。
「アンジェラ、悪いけどしばらく付き合って。誰も来なさそうな安全な場所を見つけたら、隠れてほしい」
「全然付き合うで~」
そうは言っても、アンジェラはどう見ても戦闘向きではない。
守りながら戦うのは慣れていないため、レンとしては、できれば戦線離脱させたかった。
(勇太の“隔離”のおかげで“心臓”の影響を受けないから、この空間限定で“能力者(仲間)の位置がつかみやすい状況だ…。由良や太輔達とどこかで会えるかもしれない)
「部外者は能力者判定になるんか容赦ないカンジやったけど、ユラ君は大丈夫なんかな…」
「あいつなら大丈夫。強すぎて軍人がかわいそうになるくらいだ」
「それでも探すん?」
「……ああ。由良の目当ては純粋に“心臓”だ。軍の味方でも、太輔達の味方でもない…。このプラットホームの中で誰よりも自由が利くから面倒なんだよ…。目的到達までの過程が読めなくて困る…」
(今までだってそうだ。あいつの行動を読めた試しがない…)
この戦場のジョーカーになりかねない由良の立ち位置に、レンは苦々しい表情を浮かべ、自身の左手を見つめる。
(“心臓”に近づこうとしたら、力づくで止めてやる…。たとえ、あいつに嫌われても…!)
迷う想いを潰すように左手を握りしめた時、ガチャ、と銃を構える音が聞こえた。
「「!?」」
レンとアンジェラは割れた窓の方に振り返る。
そこには、ワイヤーを使用して3階の窓から一気に降りたβがいた。
アサルトライフルを構え、興奮気味に声を上げる。
「【小鹿ちゃん見~~っけ!】」
銃口はレンに向けられていた。
「レンちゃん!」
「【ヒハハハハ!!】」
撃たれる寸前、レンは押された感覚に驚く。
傍にいたアンジェラがレンを突き飛ばしたのだ。
ドドドッ
レンの代わりにアンジェラが左腕から背中にかけて弾丸を浴びてしまう。
「アンジェラ!!」
叫ぶレンはアンジェラから視線を移し、βを強く睨みつけた。
「てめえ!!」
左手に作り出した粗いプラズマをβに投げつける。
バチッ!
「【がっ…!】」
ぶつけられたβは一瞬痙攣し、ガクッとワイヤーに吊るされたまま脱力して宙ぶらりんの状態になった。
レンはすぐに、横たわったアンジェラに駆け寄り、片膝をつく。
「おい!!」
「い…、生きとるよ…。めちゃくちゃ痛かったけど…」
「!」
呻きながらも苦笑するアンジェラに、レンは安堵の息をつき、怪我の具合を確認した。
銃弾を受けた部分は血が滲んでいたが、アンジェラの身体を貫通していない。
床には見覚えのある、潰れた銃弾が落ちていた。ひとつ指で拾い、嫌な経験を思い出す。
「これ…、ゴム弾か…!」
初めてD4と戦った時に喰らった銃弾と同じ物だ。
「ふざけやがって」と拾ったゴム弾を床に投げ捨てた。
本物の銃弾だったら蜂の巣になっていたところだ。
レンは冷や汗を拭い、アンジェラの肩を抱く。
「起きれるか?」
「うぅ…っ」
銃声を聞きつけて他の兵士が来るかもしれないため、あまり長居もできない。
アンジェラが所持していた白いハンカチで、アンジェラの怪我を負った左腕を縛り、もう一度その体を抱えて「つかまれ。とにかく移動しよう」と提案し、立ち上がった。
近くにあった廊下の角を左に曲がろうとした時だ。
肌が粟立つ気配に、レンははっとして肩越しに振り返る。
気を失っていたと思っていたβが、口元に不気味な笑みを浮かべ、再びアサルトライフルを構えていた。
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