35:わかってるからこそ…
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
洋上のプラットホームのヘリコプターデッキは、先程の騒ぎがウソであったかのように静まり返っていた。
撃ち合いをしていた銃声も、もう聞こえない。
そこへ、タイミングを見計らった由良は、身を潜めていた哨戒艇から出て、建物の壁や突起物に飛び移りながらデッキへ到達し、辺りを見回した。
ヘリコプターデッキ上は惨状となっていた。
同士討ちをし合った兵士達の死体が無数に転がり、血と煙の臭いが鼻をつく。
(死屍累々…)
無数の死体を見回し、由良は「ひゅ~」と口笛を吹いた。
(あのオカンは娘を取り戻しに来たのか、戦争しに来たのか…)
由紀恵が引き起こしたことに、呆れを通り越して感心する。
ふと、鉄塔の上空を見上げた。
(なんだ、ありゃあ)
爆発したヘリコプターから上空へ上昇している黒煙が、途中で雲を作るように途中で溜まっている。
(煙がたまってる…。…これは、誰かの能力(ちから)?)
レンと違い、由良は誰の能力か把握していなかった。
(煙がああだってことは…、オレ達は閉じ込められたのか?)
口をあんぐりと開け、「うそ―――ん」と嘆く。
(それまで、ここじゃ逃げようがねえが…)
由良は肩を落としながら進みだした。
近くにある軍用ヘリでは、今でもぼうぼうと燃え続けて火花を飛び散らせている。
そこを通過しようとしたとき、ヘリコプターデッキに通じる扉から、バタバタと数人の兵士達が出てきた。
兵士達が由良を発見すると、声をかけることもなく、外見から侵入者と見なし、一斉にアサルトライフルやハンドガンを構える。
「!」
ダダダダダダッ
兵士達は躊躇なく一斉に銃を発砲した。
「とあっ」
由良は身体を前屈みにしながら走り出し、ヘリコプターデッキから飛び降りる。
落ちる前に、ヘリコプターデッキの端に設置されている転落防止用の金網のフェンスにつかまった。
(お仕事ゴクローさん)
兵士達は銃を構えたまま、宙ぶらりんの状態の由良に、じりじりと接近する。
(…けど、悪ぃな…。オレさ)
パシュンッ
「【!?】」
撃たれる前に、由良がシャボン玉を浮かべ、その兵士の頭部と銃を粉砕した。
死体は後ろにいる兵士達の方へと倒れる。
「【ひっ…】」
他の兵士達がぎょっと死体を凝視している隙に、由良はもう一度デッキに着地した。
(“心臓”に会うまで死ねええの♪)
ベッと舌を出し、自身の周囲にシャボン玉を浮かべる。
ボシュッ
一斉にシャボン玉を放ち、その場にいた兵士達を全て一瞬で赤い霧へと変えた。
最初に由良が殺した兵士の死体は上半身が破壊されたまま放置される。
残ったシャボン玉はふよふよと漂い、ある程度由良から離れたところで割れた。
由良は漂う赤い霧を見つめながら、自分の親指を一舐めする。
そんな由良を、スコープ越しから観察する視線があった。
鉄塔の四本場で、D2はシートの上で腹ばいになってライフルを構えていた。
スコープから目を離し、由良を見下ろす。
(【あいつだ。マクファーソン隊長の読みどおり、あの男、やっぱり来た】)
前に、由良に銃を破壊され、屈辱を受けたリベンジを含め、由良狙いの様子だ。
D2のトランシーバーが雑音をたて、男の声が聞こえた。
“ターゲット確認”
「【βかい?】」
D2はマイクを口元に近付け、βに応対する。
βも付近の建物からレンの姿を発見したと報告が入った。
「【そのまま、お嬢さんをお願い。遊んじゃダメだよ…。キミ達兄弟の悪いクセだ】」
“【ヒヒヒッ、わかってますよ…】”
返事はそう返ってくるが、D2は信用しない。
聞こえないくらいの小さなため息をつき、レンに対して同情する。
(【そう言ってるけど、全然いい評判を聞かないよ…。腕は立つのにもったいない…。あのお嬢さんもかわいそうに…】)
雑音をひとつたて、βは通信を切った。
(【今日はちゃんと】)
D2はスコープを覗き、引き金に指をかける。
(【お仕事しなきゃね】)
スコープのレンズの標準を由良の頭に合わせた。
由良は全く気付いていない様子だ。
.