34:ブッ壊せないかな
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レンの恰好は、黒のタンクトップ、迷彩柄のカーゴパンツ、両手には黒の指ぬきレザーグローブをはめ、腰にはスタンガン4つ入りの携帯ポーチを装着していた。
左側頭部にかけた眼帯には、星形の缶バッジをつけている。
知った顔に会えてぱっと表情を明るくするアンジェラ。
「まいどどーも、レンちゃん。ユラ君には会え…」
瞬間、レンの表情の変化を見て察し、言葉を一度詰まらせた。
「……会えた…みたいやけど…、なんかあった? ……おらんの?」
「まあ…、行き先の見当はついてるけどな…」
無愛想にそう言いながら、レンはアンジェラの前を通過し、港に係留・停泊しているクルーザーを露骨に物色し始める。
「……なにしとん?」
「ちょっとそこのプラットホームまでレンタルしようかと。運転手つきで。あたし、船舶免許ないし」
「シージャック犯の顔しとる!!」
「大型バイク乗る感覚だったらいけるか…?」
「いけへんいけへん!」
気持ちが急いていることも相まって本気なのだろう、真面目な顔をして発言するレンに、アンジェラはつっこみ役にまわった。
「もう…、なんちゅームチャクチャな…。……ユラ君は間違いなくそこ行くん?」
「たぶん。どう来るかわかんないけど、来なかったらそれでいい」
「来なかったらって…」
(【来てもらわないと困るんだけど…】)
肩を落としながら、アンジェラは「こっち」とレンの右手を引いて港の隅へと案内する。
そこにあったのは、白と黒のツートンカラーで船外機式のありきたりなモーターボートだった。
「…モーターボート?」
「ウチが運転するから乗ってき」
アンジェラは先にモーターボートに乗り込む。
汎用モーターボートに対し、アンジェラの、髪・耳・首を隠すように巻いた黒のヘッドスカーフと薄紫のワンピースの衣装が、レンには不釣り合いに見えた。
「これ、アンジェラの?」
「こんなこともあろうかと買(こ)うた」
「こうたって…。……前に話してくれた予言書みたいなのって、どこまであたしのこと見えてんの?」
「それは言われへんよ。でも、言うても言わんでも行くんやろ? 早よ乗り」
すでにモーターボートのエンジンは動かしていた。
いつでも出発することはできる。
レンは一度後ろに振り返った。由良の気配も、太輔達の気配もない。もしかしたら、すでに向かっているのかもしれない。
ちょうど、遠くの空に、プラットホームへと向かう軍用ヘリを見つけた。
モーターボートに飛び乗り、「頼んだ」とアンジェラに声をかける。
「ほな、乗り込みますか。撃たれそうなったらなんとかしてなー」
「もう銃撃はカンベンしてほしい…。20年の内に何回銃口向けられてると思ってんだ…」
モーターボートを出港させ、目的地へと向かった。
運転するアンジェラの姿は、衣装のせいでやはりシュールだ。アウトドアとは程遠い。
「そのカッコ、暑くねーの?」
「正直暑い! でも、脱いだら脱いだで肌が火傷しそうや」
「アンジェラ見てたら、昔、深夜にやってた映画を思い出したわ。毛皮を着た金持ちのヒロインが、ひとりモーターボートに乗ってるシーン」
「鳥がたくさん襲ってくるやつ?」
「そうそう」
「かなり古い映画やな。そもそも生まれてへんやろ」
「まあな。深夜映画ってそういうの多かったし。…子どもの頃、暗い部屋が怖くて眠れない時によく見てたんだ。親が起きないよう、部屋の電気も点けず、音なしでな。明かりはテレビの光で十分。字幕はあったけど読めないから、頑張って雰囲気でストーリーについてったなぁ…。中でも、パニック系はわかりやすくて助かった」
「複雑なストーリーもなく、ひたすら人間襲われるだけやしな」
「見てたの別にそればっかりじゃなかったけど」
「フフ…。状況把握能力は養えそ…」
肩越しに振り向いて言いかけたところで、アンジェラははっとする。
一隻の艦艇がこちらに向かっていた。
「まずい! 軍の哨戒艇や!」
レンも振り返り、哨戒艇を確認する。
見据える目付きは鋭くなり、左手指から電流を漏電させた。
「迎え撃つ?」
「ちょい待ちぃな!」
「なんでもかんでも暴力で解決したらアカン!」と慌ててレンを阻止するアンジェラ。
「声かけられても、釣りしてましたとか泳ごうとしてましたとか言い訳したらどーにでもなるから!」
「今のカッコじゃ無理あるだろ、そんな言い訳! あたしなんか戦闘態勢だぞ!」
哨戒艇の全長は50メートルはある。武装も備えた相手に、モーターボートで太刀打ちできるはずがない。
哨戒艇の乗員も30~40はいるだろう。
「……?」
いつでも攻撃できるよう、身構えたレンだったが、哨戒艇の様子に違和感を覚えた。
静かすぎる。無人のはずはないのに、甲板には銃を構える軍人の姿もなかった。
そろそろ互いに数メートルの距離だ。普通ならこの距離の時点で、不審なモーターボートに対してスピーカーで呼びかけているものだが、それもない。
どんどん接近しているのに減速もしなかった。
「……アンジェラ、止まらず艇から少し避けてくれ」
「え…」
言われるままにアンジェラは哨戒艇の進行方向に逸れるようにモーターボートを移動させる。
特に哨戒艇から喚起はない。
そのまま注意深く様子見していたが、あちらはまるでモーターボートが見えてないかのように横を素通りしてしまう。
ぽかん、とレンとアンジェラは哨戒艇を見送った。
「…自分で言うんもアレやけど…、けっこう怪しいで、ウチら。なのになんで……」
「……………」
怪訝そうな顔をするアンジェラの横で、レンは目を細める。
哨戒艇の航路は、速度を緩めず真っすぐにプラットホームに向かっていた。
胸騒ぎがする。脳内に思い浮かぶのは、ある可能性だ。
「急いで追いかけよう!」
「え? あ、ちょっと!」
船尾に移動したレンは、エンジンを無理やりこじ開けて配線を引っ張り出す。
「なにして…!」
「運転よろしく!」
戸惑うアンジェラをよそに、レンは引っ張り出した配線をいじり、能力で電圧を上げた。
ぐんっ、とボートの速度が急激に速くなり、速すぎて海面を何度もバウンドする。
「Yikes!?」
アンジェラは振り落とされそうになったが、必死にハンドルにしがみつき、レンも電流を調整しながらボートの端につかまり、「そのまま向かって!」と促した。
(間に合ってくれ…!)
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