32:望み
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海岸から少し離れた倉庫の裏に、白のSUVが駐車されていた。
車の運転席にはミケーレ、助手席にはジャスパーが座っている。
ミケーレは、撃たれた傷口に口と左手を器用に使いながら、被っていたバンダナを巻いて止血し、ジャスパーは適当なタオルで折れた鼻を覆っていた。
レンから受けた閃光のダメージはだいぶ軽減され、今は両目が開けられる状態まで戻っている。
その時、ミケーレ側の車窓を小さくノックされた。
気付いたミケーレがそちらに振り向くと、車の傍に、仲間のルドガーが立っていた。
「【ルドガー!】」
ミケーレが後部席の鍵を開けると、ルドガーが車内に入ろうとしたところで、ミケーレはがなる。
本来ならば太輔の捕獲は、ルドガーと共に実行する予定だったのだ。
「【どこ行ってたんだよ、バカ―――!! おまえらがふらついてっから、見ろよ! 撃たれたんだぜ!?】」
自分の傷口を見せ付ける。
「【こっちは鼻折られてんだけど】」
「【痛むか?】」
車内いっぱいに響くほどのミケーレの怒声に両耳を塞いで「【災難だったのはおまえだけじゃねーんだぞ】」とジャスパーは軽く睨み、ルドガーは感情も込めずに平然と言った。
「【そんだけ!? おまえら、他に言うことが―――】」
ようやくルドガーが座席に身を預けたことで、ルドガーに怒りの形相を向けたミケーレは言葉が途切れる。ジャスパーもルームミラー越しにルドガーの有様を見てぎょっとした。
ルドガーが腹部から血を流していたからだ。普通ならば痛みで動けないほどのケガだろう。
「【おい!! どうした、そのケガ!?】」
ミケーレとジャスパーはルドガーの傷を凝視する。あきらかにこのメンバーの中で重傷を負っていた。
ジャスパーは頭をガシガシと掻きながら、「【マジか…】」と呟く。
「【……ルドガー、ミッキーと離れて、どんなバケモンと戦(や)ったんだ?】」
ジャスパーは右隣のルドガーに顔を向ける。
ルドガーは宙を見つめながら答えた。
「【……少女に会った。同じ能力者だった…】」
「【能力者ぁ!?】」
ミケーレは驚いて声を上げる。
反対に、ジャスパーは笑みを浮かべた。
「【へえ、他にもいたのか…】」
「【……とりあえず、止血しろ!】」
ミケーレは慌てて着ていたシャツを脱ぎ、ルドガーに渡した。
ルドガーは言われるままに、ミケーレのシャツを腹部の傷口に押さえつける。
「【能力者…。うう~ん、どうしよ…。出直したほうがいいかなぁ~~~】」
「【オレは戻りたい…。疲れた…】」
ミケーレが唸るような声を出したあと、ジャスパーは弱々しく言う。
だが、ルドガーはそのつもりはなかった。
「【なぜ…?】」
「「【その傷で動けると思うか!?】」」
ルドガーの命知らずな言葉に、ジャスパーとミケーレは同時に苛立ちを込めた言葉を投げ返した。
「【この傷は…、少女の傷でもあるんだ。負の記憶が、冷たい刃となっているようだった…。それでも生きる答えを、人に見出していた…。いつか…、私も答えを……】」
まるで詩のような言葉を残したあと、ルドガーは目を閉じ、眠りについた。
「【……寝たぞ。相当深かったらしいな】」
ルドガーの傷口を見つめながら、ジャスパーはミケーレに話しかける。
(【ルドガーとジャスパーを倒すメス達…】)
顔を真っ青にするミケーレの脳内では、想像上の2人の筋肉質な女が浮かび上がっていた。レンの姿は薄暗くて見えづらかった分、イメージが改竄されている。
「【う―――む。能力者といい、ヘリの連中といい…、タイスケに関わると、物騒だな!】」
ミケーレは深刻な顔で言い放つ。
(【あっちも、いい迷惑だろ】)
ジャスパーは呆れながら、窓の外を見つめた。
「【どうする? ジャスパー】」
「【……オレも寝る。あとは勝手にしてくれ】」
そう言って、目を閉じる。
しばらく考え込んだミケーレは、ハンドルを握り、エンジンをかけた。
「【勝又さんとは、タイスケともうひとりを連れ帰る約束だったけど…、今日はムリ…―――かな! いったん戻ろう!】」
そう呟くと、車を発進させ、街へと戻っていく。
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