32:望み
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「【つかまえた、って…】」
ジャスパーは、レンの瞳を見て戦慄する。
ぽっかりと空いた、底の見えない深淵のような、覗き込めばこちらが足を踏み外して吸い込まれてしまいそうな危うさを秘めていた。
漏電するレンの、青白く発光する体。
大量の電流を流される前に離れようとするが、レンは左手で骨の刃をつかんだまま放さなかった。
側面も切れ味のいい刀身だ。握れば刃が手のひらに食い込み、血がどくどくと流れる。
「【く…っ!?】」
ただの電流ではない。ジャスパーは違和感を覚えた。
耳元で、バチバチと火花が弾ける音が聞こえる。
(【なんだ…この音は…!?】)
骨から身体へ微弱な電流が流された。
「【う!?】」
まるで自身の身体が2つに引き剥がされそうな感覚に陥り、肌が粟立ち、雨粒のような冷や汗が浮かんだ。
「【やめろ!!】」
得体のしれない恐怖に耐え兼ね、咄嗟に、右手で左腕の骨の刃を砕く。
「【!】」
瞬間、レンの顔が間近に迫った。その左手にあるのは、脇腹から引き抜いたジャスパーの骨の刃だ。
振り被り、ジャスパーの右足の甲に突き立てる。
「【い゛…ッ!】」
その際にレンの眼帯を落とし、レンはすぐに拾い上げた。
「っ…!」
傷口の痛みに耐えながら、レンはジャスパーに背を向けて走り出す。
あくまで優先事項は太輔と奈美の合流だ。
「【ま…、待てよ…!】」
右脚の甲に突き立てられた骨の刃を引き抜き、ジャスパーは右腕の骨の刃をレンの背中に向かって伸ばそうとした。
レンは肩越しに振り返り、いつでも避けられるようにじぐざぐに逃げながら走る。
その時、レンの前の茂みから巨漢が飛び出した。
「!?」
「【ジャスパ―――!!】」
耳をつんざくほどの大きな声と共に現れたのは、負傷したミケーレだった。右の前腕が食い千切られたように抉れている。
レンは反射的に身構えたが、パニック状態のミケーレはレンに気付かずその横を通過し、大きな足音をばたばたと鳴らしながらジャスパーに駆け寄った。
「【タイスケのところに行ったらヤバイ連中が…! ……あれ? おまえもケガしてる?】」
「【ミッキー! そいつだよ、そいつも対象だ! 重力で捕獲してくれ!】」
「【素通りしてんじゃねーよ!】」と怒鳴りながらレンに指さすジャスパー。
「【へ?】」とミケーレがレンに振り返った時には、レンは大きく振り被り、ソフトボールサイズのプラズマを軽い力で上空へ放り投げた。
あまりのゆっくりな動きに、ジャスパーとミケーレは怪訝な顔でそれを目で追う。
レンはもう一度同じサイズのプラズマを作り出し、今度は勢いよく投げつけた。
標的は、最初に軽い力で宙へと投げたプラズマだ。
プラズマとプラズマがぶつかった瞬間、カッ、と周囲に閃光が走った。
「「【!?】」」
まるで閃光弾だ。眩い光に、近くにいたジャスパーとミケーレの視界が奪われる。
「【ぎゃあああ! 目があああ~~目があああ~~】」
ミケーレは目を覆いながら地面を転がって暴れた。
「【暴れんな巨人!】」
ジャスパーも右手で光を受けた右目を覆いながらミケーレに呼びかける。
咄嗟に閉じた左目を薄く開けて辺りを窺うが、レンは逃げ切った様子だ。木々や茂みの中に逃げられると追いづらい。
辺りに耳を澄ませると、少し離れたところでヘリコプターのプロペラ音が聞こえた。軍も近くにいるかもしれない。
(【逃げたか…。オレは追ってもいいが、ミッキーはこんな感じだし、あっちは面倒なのがいそうなんだよな…。……いったん打ち止めか…。ルドガーはどうしてるかな…】)
ため息をついて座り込み、深追いを諦めた。
少し待てば光を受けた視界も復活するだろう。ひとまずミケーレを大人しくさせる。
(【レンセンパイのあの能力(ちから)…、ただの電撃じゃなかった…。まるで、自分の体から抜け出そうな……】)
幽体離脱、と考えるだけでゾッとした。オカルトは嫌いだ。
頭を振って「【まさかな】」と思い浮かべた考えを振り払い、ミケーレに肩を貸す。
「【ミッキー、車戻るぞ】」
「【うう…。聞いてねえよ。あの女…、滅びの呪文使うのか】」
「【…しっかりしてくれよ運転手】」
.