31:一度だってない
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新月の深夜、全員別荘の前に集合していた。
葵は覆面を頭に被り、純は前回と同じ、長髪のカツラと帽子を被っていた。勇太は今回、パーカーを着ている。
レンも動きやすいように黒のタンクトップに着替え、デニムパンツを履いていた。
「……よし、準備はいいな?」
「はーい!」
みんなと一緒に行動できるのが嬉しいのか、伶の言葉に葵が元気よく手を挙げて返事をする。
その声は辺りに響くほど大きく、勇太は「静かに」と人差し指を口に当てる。同じく太輔も。
「純…、みんなをお願いね。…葵達に悟られないようにね…」
純のネクタイを調節するふりをしながら、由紀恵が純に囁く。
純は黙って頷いた。
「はぁ―――!」
「あぶねっ」
「葵」
葵が勇太の迷惑顔を気にせず張り切っていると、由紀恵は葵を後ろから優しく抱きしめた。
「しっかりね……」
「う? な、なぁに―――?」
顔を赤くした葵は、照れ隠しに慌てて由紀恵から離れる。
そんな可愛らしいリアクションに「あらあ?」と由紀恵は微笑ましそうだ。
「ユータらも、気ぃつけろよ」
「おまえこそ!」
「……………」
勇太と太輔の会話中、レンと奈美は大切なことを隠している太輔を見つめていた。
「叶…」
奈美は戸惑いながら太輔に声をかけたが、その声はあまりにも小さく、太輔の耳には入らない。
レンもそんな奈美をもどかしい気持ちで見つめるだけだ。
「いざとなったら、オレの能力(ちから)でみんな守ってやるよ」と勇太の頼もしい言葉に「最強だなー」と太輔は感心する。
「そろそろ行くぞ」
肩に黒いタオルをかけた伶が、太輔に声をかけた。
「……………」
レンも結局太輔に声をかけることもできず、ぼんやりとした表情のまま、前回の作戦でも使用したFJクルーザーの後部座席に乗り込んだ。
続いて、同じく後部座席に奈美と勇太、助手席に葵、運転席に純が乗り込む。
そして、レン達―――陽動班を乗せた車は海軍基地へと向かった。
純の運転は前よりもだいぶスムーズに走れるようになっていた。
走行中、車が赤信号で一時的に止まる。
他に車は見当たらないが、行き道は警察や防犯カメラに不審な車として映らないように、最善の注意を払う。
「……………」
窓の外を眺め、レンは自分が取るべき行動を考えていた。
太輔達のところに残らなかったことを、今になってモヤモヤと後悔している。
無意識に左手が頭の眼帯に触れた。
(なにが正しい選択なのか、わからない。太輔に“心臓”を譲れば、太輔は死ぬまで眠らされてしまう…。―――でも、あたしに出来ることは…)
「……………」
同じく、奈美は思い悩んでいた。
脳裏に太輔の笑顔がよぎり、覚悟を決める。
「!?」
突然、信号で止まっているのをいいことに、ドア側に座っていた奈美が、後部座席のドアを開けて飛び出し、逆走し始めた。
「奈美姉ちゃん!?」
勇太が声をかけても、奈美は立ち止まらない。
「ごめん、先行ってて!」
奈美は肩越しに声を上げた。
ヒール付きのサンダルを履いているとは思えないほど、奈美の足は速い。
奈美は真っ直ぐに太輔達・回収班のもとへと走っていく。
奈美が走って行ったあと、あまりの出来事に驚いていたレンははっと我に返る。
(まさか、あいつ……)
「クソッ」
奈美の突然の行動の理由に勘づき、眉を顰めると、奈美と同じく車から飛び出した。
「レン姉ちゃん!?」
勇太が再度驚いて声を上げる。
「かまうな、奈美引き止めてくる!」
声を上げるレンは乱暴にドアを閉め、「行け」と車体を2回叩いて促し、奈美のあとを追いかけた。
途中で「チッ」と舌打ちが漏れる。
(……違う…。引き止めなきゃいけないのは奈美じゃない!)
「だったら、どうしろっつーんだよ!」
答えも見つからず複雑な心境のまま、暗い夜道を必死で駆けた。
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