05:死ぬべきだった…
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その夜、由良は勧誘のために叶太輔に会いに行っていた。
由良の見立てでは、太輔は能力者としては互いの気配が察知できないほど未熟であったが、自身の観察眼を信じるならば見どころはある存在だ。これからきっと開花していくだろう、と。
勝又には事前に太輔の勧誘を提案していたが、広瀬がいるからこそやめた方がいい、と渋られ、それでも諦めきれず自ら勧誘しよう足を運ぶが、太輔本人とはレンと同じく約束はしていない。
そして、太輔が友人の広瀬を探し回っているだろうと、広瀬が住んでいたマンションを訪れて太輔に再会したものの、結果は失敗だ。
由良の目指す思想が太輔には理解できなかったが、探している広瀬と幼馴染の恵が勝又側と共に行動していると知らされたところで大きく反応したものの、そこへ介入した一般人に対して由良が暴走したことでうやむやになってしまった。
由良のシャボン玉が太輔の手から発せられた熱によって爆発を起こし、爆風で飛ばされた由良は右腕を負傷した。
その際に太輔は逃走し、爆音を聞きつけた住人たちが集まってくる。警察にはすでに通報されただろう。
騒ぎに集まった住人を散らしたあと、由良は負傷した腕を左手で押さえながら外へ出た。
遠くから、パトカーのサイレンが聞こえる。
「あー、やっぱり通報されたか」
アジトに戻ろうと歩き出すと、隣の車道からバイクのエンジン音が接近して由良の横を追いこし、1台の赤と黒のオートバイが由良の目の前に回り込んで停車した。
由良は身構えたが、“仲間”の反応に気付く。
フルフェイスのヘルメットで相手の顔が見えない。
運転手がオートバイにまたがったまま赤のヘルメットを取った。
「ほーら、やっぱりやらかしてやがったな」
「あ、レン」
ヘルメットを外したレンの額には青筋が浮かんでいた。
「よく、ここがわかったな」
来るとは思ってもみなかった由良は素直に驚きを見せる。
「勝又さんから聞いた」
「ゲッ。勝っつんにバレてやんの」
「やっぱ勝手に出てったのか! 自由人め! そーゆーとこだっつってんだよ!」
レンはオートバイから降りながら上着を脱ぎ、由良の腕の血を乱暴に拭ったあと、負傷した部分にギュッと結びつけようとした。
レンの上着の下はタンクトップだ。胸のサイズを測ろうと視線を向ける由良に対し、レンはわざと力強く由良の傷口に上着を結ぶ。
「痛ででで」
由良は乱暴な処置に顔をしかめた。
「なんでおまえ…。…つーか、こんなんすぐに治るし……」
邪魔そうに上着を外そうとする由良の手をレンは子どもを𠮟りつけるように叩き落す。
「ダラダラと血ぃ流されても迷惑だ。ほら乗れよ、パトカー来る前にずらかるぞ。バイクに血をつけたら引きずり回すからな」
ハンドルに引っかけていたもうひとつ白の半ヘルメットを由良に無理やり被せた。
「キツイ」とぼやく由良は無視だ。
「大体おまえ、その状態で帰る気だったのかよ!」
そう言いながら、レンはオートバイにまたがった。
「そんなの片付けちまえば……」
手をひらひらさせて呑気に言う由良に対し、レンはヘルメットを被る前に怒鳴りつける。
「アホ!! 最近のパトカーはカメラついてんだよ! 警察署のとき、誰が監視カメラ壊してやったと思ってんだ! お尋ね者はごめんだからな!」
だから遅れたのか、と由良は警察署のレンを思い出した。
「おまえ、「勝手に行け」とか言ってなかったっけ? 天邪鬼?」
由良がそう言いながらオートバイの後ろにまたがると、レンは冷静を取り戻すために大きく息を吐いて小さく「……別に。気まぐれ」と返し、ヘルメットを被ってエンジンをかける。
レンの表情はヘルメットで覆われて読み取れなかったが、レンの予想外の行動・反応に由良は笑いが込み上げてきた。
「けなしに来たのか、心配で来たのか、どっちだよ」
オートバイが走り出すと同時に由良は口にしたが、エンジン音で聞き取れなかったレンは「なんだって?」と肩越しに聞き返す。
「おまえも、おもしれえってことー!」
「はあ!?」
「ぎゃははっ」
いきなり笑い声を上げる由良を感情のままに振り落としそうになった。
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