30:ここまで来れたのも
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チャットのスレッドを見て、雨宮は怒りを隠せなかった。
「なにこれ!? 私(レイン)のことバカにしてるわ、こいつら! レンちゃんがこんなの見たら、怒りの稲妻食らってるところよ!」
パソコンの画面を見ながら声を上げる。
雨宮と杏は、とある家の縁側に座っていた。
「おつかれ―――っス」
小田が紙袋を持って、雨宮達のいる縁側にやってきた。
髪型を少し変えたようだ。
雨宮が持ったパソコンの画面が目に入る。
「へ~、少しは見てくれてる人もいるんスね」
「やっぱし、最初はカウンタ上げたいしさ…」
杏は言いながら、横から手を伸ばしてパソコンの画面を切り替えた。
クリックすると、杏が作ったホームページが開かれる。
「ちょっとエロくしてみたんだ」
画面には、制服姿で色気を出している奈美と、スーツ姿で髪をかきあげているレンの画像が映された。
Rain探偵事務所
Profile
レイン(17)
現役女子高生&私立探偵
大事件を追跡中
その相棒 北条(20)(探偵見習い・彼女募集中)
奈美とレンの写真と一緒に、その紹介文が書かれていた。
そのホームページに、雨宮と小田は仰天する。
「なっ、奈美ちゃ―――ん!? レンちゃん、ここでも男役!? 杏ちゃんが画像作ったの!? アイコラ?」
「ん…」
杏ちゃんは素っ気無く答える。
雨宮は杏の肩に手を置き、声を上げて主張した。
「ちょっと待って。レインは元々私…! ぬ、脱げってんなら」
すると、杏は雨宮に顔を向け、悪意もなくきっぱりと言い放つ。
「エサは若い方が…」
「そーっス。雨宮さん、残念!」
小田も杏に同意した。
「……………」
散々な言われように頬を膨らませる雨宮。
杏がキーボードを打って作業をするなか、小田は杏の作ったアイコラが気に入ったのか、「今度、ボクにも作って!」と頼みごとをしている。
(と…、とりあえず、第一歩目としては、よし!! ……としよう。本当は私達も、由紀恵ママ達についていきたかったけど…)
数日前、雨宮と小田は、由紀恵達と解散する前に、由紀恵に交渉を試みていた。
『だめよ。北条さんならともかく、あなた達は連れていけないわ』
トレーラーハウスへと歩きながら、由紀恵は背を向けて言った。
レンも元から予測はしていたのか、やっぱり、と突っかかりはしなかった。それに、軍からは命を狙われている身のため、内心では同行には賛成していない。
それでも雨宮は食い下がる。
『危険は承知です! 私達も、ここまで来たら…!』
(ボカぁ別に…)
雨宮の傍らにいる小田は、どちらかといえば遠慮しておきたい気持ちだった。
『忘れたの…? 私も能力者よ。あなた方を止めるなど、造作もないこと…』
由紀恵の空気が変わる。
すぐさま雨宮と小田は、レンの背中に隠れた。
だが、気圧されそうになった雨宮はレンの後ろからずいと前に出た。
(恐れるな。ママも貧乳ぞ―――!!)
『『おおっ』』
闘志を燃やす雨宮に驚く小田とレン。
『でも、由紀恵さん!』
持ってきた大きな鞄から、資料やディスクを取り出した。
『見てください! コレ、過去2年、自殺で亡くなった方のデータです。出版社じゃ、全ボツになったけど…。中には、能力者と思しき人が何人もいました!』
『……………』
レンは物憂げな目で、その資料を見つめた。
自分の両親も、その中にいたからだ。
行方不明扱いだが、湖の戦いの最中で自ら命を絶った仲間も、レンが提言したことで名前を連ねている。
『殺された人もたくさんいたのに、もう、みんな忘れかけてる』
『……このまま、なかったことにしてもいいのかってこと。…そんなこと、絶対にさせない』
付け加えるように、レンは雨宮の言葉を継ぐ。
『……あなた方は、どうしたいの?』
由紀恵の問いに、雨宮は躊躇わず答えた。
『犠牲者をこれ以上出さないためにも、今、なにが起こってるのかを、みんなに伝えたいんです!』
その言葉に、由紀恵は困ったように微笑んだ。気持ちは伝わっている。
『―――でも、やっぱ危ないしさぁ…。今、知ってる分だけでも流せば? ネットに』
トレーラーハウスの窓から、杏が身を乗り出して提案を出した。
それから、郊外に家を借り、杏と合流したあと、一から記事を書き直すことにした。
*****
そしてつい先日、盛岡から一度東京に戻ったレンは、家の前で雨宮と小田と向き合っていた。
背中には、盛岡へ向かう時以上の荷物が入ったリュックを背負っている。
『雨宮達には悪いけど…、あたしは由紀恵さん達と行くよ。……だから……』
レンが申し訳なさそうにうつむくと、雨宮はレンの頭を優しく撫でた。
『…気をつけてね』
『………雨宮も…。ここまで来れたのも、雨宮のおかげだ。本当に、感謝してる』
『……うう…っ。レンちゃああああん!』
その言葉に耐え切れなくなって、雨宮は子どものように泣きながら、レンを抱きしめた。
レンは照れ臭そうに雨宮の背中を撫でる。1年以上一緒に行動していた二人組だ。離れがたく、後ろ髪を引かれそうになった。
『レンちゃああああん!』
小田も泣きじゃくりながら、レンにどさくさに紛れて抱きつこうと両腕を広げて飛びかかる。
そこへ、レンの真っ直ぐな蹴りが、小田の顔にめり込んだ。
『最後まで、手厳しいねえ…』
小田は顔にレンの足が入ったまま、残念そうに言った。
『小田も元気でな。論にも、「楽しかった」って言っといてくれ…』
レンは目的のために、雨宮達のもとを離れ、由紀恵についていくことになった。
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