28:殺さなくてよかった
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夜を迎えたニューヨークの、とあるマンションに勝又達のアジトがある。
裏道を進まなければたどり着かないため、目立たない場所にあり、住人のいない空き室ばかりのため、メンバーは各部屋を所持していた。
その中のひとつ、勝又の部屋は緊迫した空気に包まれている。
勝又は腕を組みながら、窓の外を眺めていた。表情は困ったように苦笑いを浮かべていた。
目の前には、アジトに帰還したばかりの天草とジャスパーが並んでいた。
申し訳なさそうに俯いている天草と、その横で面倒臭そうに頭を掻くジャスパー。
「……どうして、すぐに帰って来なかったのかな?」
「そ…、それは……」
天草が口ごもった。
隣のジャスパーは、表情を曇らせる天草を横目で見つめている。
「せめて、私に一声をかけてほしかったよ…。キミの中には“カケラ”がある…。それを他の能力者に奪われてしまえば、面倒を増やすだけだとわかるはずだ…」
「……………」
穏やかに言う勝又に、天草はぐっと唇を噛んだ。
「なにしに行ったのかな?」
再び同じ質問を繰り返す勝又に、天草が口を開いた時だ。
「【レンセンパイに会いに行ったらしい】」
「ジャ……」
天草は止めようとするが、ジャスパーは無視して続ける。
「【勝又のおっさんのために始末をつけようとしただけだ。おっさん、レンセンパイにだいぶ恨まれてるらしいじゃねーか。これからの計画に不都合で、邪魔しそうな人間なら、早めに摘み取るべきだろ? …ま、オレ様からすれば、仲間に戻ってもらってまた仲良く…】」
「ジャスパー君…、私は今、天草君と話している」
「【……………】」
部屋の空気が凍り付く。
勝又の口元には薄笑みが浮かんでいたが、その低い声を聞いたジャスパーは口を噤み、天草は小さく震えた。
「結局…、彼女は殺せなかったわけだ」
「も、申し訳ありません…」
「……勝手に“欠片”の力は使わなかったようだね…。その前に、ジャスパー君に助けられたか…」
「【!】」
まるでその場にいたかのような言い方だ。
ジャスパーは驚くが、天草は「はい」と素直に頷くだけだ。
(【知ってるなら聞く必要ないじゃん】)
口を尖らせるジャスパーは小さくため息をついた。
(【……“欠片”の力ってなんだ…?】)
そこで、勝又の口から出た言葉が気になる。
詳しくは知らないが、天草が勝又と同じく、“御霊”から大事な物を預かっているということしか聞かされていない。
「……北条君は……彼女は、元気だったかい?」
「…………はい」
躊躇いながら答える天草。本当なら話題にもしたくない。
「【恨み言たっぷりの伝言あるけど、聞く? 痛でで!】」
横から天草がジャスパーの右足を踏みつけた。
「……そうだね…」
少し黙って勝又は頷く。懐かしそうに目を細めていた。
ジャスパーはレンが最後に叫んだ伝言を勝又に伝えたあと、天草の手首を引っ張って勝又の部屋から出て行った。
*****
しばらく薄暗い廊下進んだあと、天草はジャスパーの手を振りほどいて声を上げる。
「ジャスパー! また貴様は余計なことを…!」
「【おっさんが聞きたいっつーから言っただけぢゃん。アキセンパイももごもごしすぎ】」
子どものようにむくれるジャスパーに、天草は「貴様は…、まったく…」と頭を抱えた。
怒りを通り越して呆れてしまう。
「……今回は私の勝手な行動で、貴様までお叱りを受けてしまったな…」
「【なに言ってんの。センパイのサポートをするのはコーハイなんだから当たり前…】」
「あれ、2人ともおかえりー!」
そこへ、目の前から恵が手を振ってやってきた。
「【あ、メグミちゃ~ん♪】」
良いことを言いかけていたジャスパーは途中で話を切って恵に手を振り返し、駆け寄る。
「【ミッキー知らねえ?】」
「【え、まだ帰ってきてないの!?】」
一緒に帰ってきたものだと思っていた恵。
勝又達に内緒で、似顔絵と太輔からもらった花を頼りに、太輔を探してもらおうと頼んでいたのだ。
「も…、申し訳ない、恵様!!」
天草は恵の前で片膝をついた。
恵とジャスパーはぎょっとして天草を見下ろす。
「すぐに帰還できず、恵様と“御霊”のお傍をしばらく離れてしまい…。私は“守護者”だというのに…!」
「お…、落ち着いて…。天草さんも久しぶりの日本(故郷)なんだし、ゆっくり息抜きしてきていいのに…」
おろおろと恵はなだめようとしたが、天草の勢いは止まらない。
謝罪の言葉が天草の口から溢れ出てくる。
「【謝罪の言葉だけでも付き合ってあげてよ、恵ちゃん。じゃないとアキセンパイ、切腹しちゃう】」
「セップク!?」
茶化すジャスパーの言われるままに、恵は棒立ちになりながら、天草の謝罪の言葉に耳を傾けていた。
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