28:殺さなくてよかった
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レンが目覚めた時、最初に天井が目に映った。
次に、顔を覗き込んだ太輔の顔が映る。
「あ、レン!」
「太……輔…?」
目を動かして周りを見ると、和室ということがわかり、自分は今、布団に寝かされているのだと理解する。
「ここは……」
「私の家」
太輔の向かいに正座している奈美が言った。
「奈美…。…? あたし…、たしか…屋敷に……」
1日で色々ありすぎて整理するのがやっとだ。
稜と別れたあとの記憶を辿る。
盛岡を歩き回り、昔住んでいた屋敷にたどり着いたかと思えば天草と戦闘、のちに自分を追っているというアンジェラと関わり、能力を使用して治療されたのだ。
まさに荒療治というにふさわしい、激痛を伴った治療だった。
輸血の途中で気を失ったところまではなんとか思い出すことができた。
あれだけの痛みだったというのに、天草に負わされた傷がほとんど完治している。気分は最悪だが、身体の調子は憎らしいほど良好だ。
奈美は「なんだかツヤツヤしてる」と指摘するが、地獄のような痛みを思い返すと素直に喜べない。
ふと、頭に触れると、いつも付けている森尾の眼帯がなくなっていることに気付いて「眼帯は!?」と慌てた。
「これこれ!」と太輔は枕元に置かれていた眼帯をつかんでレンに手渡す。
「よかったぁ―――」と心底ほっとして自身の額を手で覆うレンに、タイミングを窺って奈美がゆっくりと経緯を話し始めた。
「外国の女の人が、北条をここまで運んで来たんだ。能力者みたいだったけど…」
『まいどおおきにー。夜分、すんまへんなぁ』
日もとっぷり暮れた頃、アンジェラは気を失ったレンを背負って奈美の道場を訪ねてきたという。
仲間の反応に警戒し、太輔と奈美は一緒に玄関に出てきた。
『レン!?』
『なぜこんなことに……』
屍の如くぐったりとしているレンを見て、ただ事ではないとすぐに駆け寄る。
『ウチの治療でだいぶ疲れたらしい。さすがに女の子をこの時間に道端に放置しておくんもあかんと思て、荷物漁ったらここの住所書いたメモ用紙見つけてなぁ』
苦笑するアンジェラはレンを太輔と奈美に預けた。
その際に、『友達でええんやな?』と確認し、太輔の頷きを確認する。
『ほな、ウチはこれで。他の野暮用もあんねん。レンちゃんに「また会おう」言うといて』
そう言ってさっさと玄関から出て行った。
「他の野暮用ってなに…」
太輔と奈美は首を傾げるだけだ。
「急に押しかけて悪かったな。少し休んだら出ていくから…」
遠慮するレンに、奈美は首を横に振った。
「もう遅いから、このまま泊まっていくといい…。部屋ならたくさんある…」
「……じゃあ…、お言葉に甘えて…。ありがとな」
少し照れた表情を見せるレンは、このまま奈美の家で宿泊することにした。
「あ、これ、レンの荷物」
太輔が布団の脇に置いていたレンのリュックを手渡す。
アンジェラが漁ったせいで少し中がごちゃついていた。
「ああ、サンキュ…。……あれ?」
着替えも財布もあるが、あるものがなくなっている。
「どうした?」と太輔。
「なにか盗られたのか?」と奈美。
少し焦って中を探ったりひっくり返して中身を出すが、やはりない。
(由良の似顔絵がない…!)
稜に渡したものと、ほとんど絵柄が一緒の追加分だ。
まさか、と羞恥で赤くなる。
*****
その頃、タクシーに乗り込んだアンジェラは、レンの荷物から見つけた由良の似顔絵をじっと怪訝そうに見つめていた。
「……人間?」
「お客さーん、今度はどこまでー?」
レンを追跡してくれたタクシーを再び利用している。
「とりあえず、空港までよろしゅう~♪」
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