27:忘れられてもいい
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
愛用の大型バイクをバイクショップに預け、稜と別れたレンは徒歩で昔住んでいた屋敷へと向かっていた。
「あ…、あんな高層マンション、いつ建ったんだ?」
どう見ても新築といった感じだ。少し立ち寄らなかっただけで景色が変化している。
辺りを見回し、見覚えのある場所を辿りながら昔のことを思い出していた。
初めて盛岡の屋敷に訪れた時は、由良をバイクの後ろに乗せてたどり着いたのだ。
鬱陶しくなったのか、由良はヘルメットも途中で頭から外して首にかけるものだから、警察の目に留まらないかはらはらした。
華音と立ち寄ったブティックは閉店し、代わりに可愛らしい雑貨屋になり、森尾と立ち寄った輸入品店は少し大きくなっている。
由良と寄り道した駄菓子屋は未だに健在だ。少し立ち寄って高齢の店主に似顔絵を見せたが、首を傾げられただけで情報は得られなかった。
駄菓子屋で買ったラムネを飲みながら歩道を歩いていると、その横をバイクに乗った巨漢の外国人が通過する。
「【イヤッホ―――!】」
「!?」
一瞬違和感を覚えたが、振り返った時には巨漢の外国人は米粒サイズに離れていた。テンションもスピードも飛ばしすぎだ。
「いいな…。あたしもバイク壊れなかったらもっと効率よく走り回ってるのに…」
ラムネの中身を全部飲み干し、たまたま見つけた自販機の横に設置されてあるゴミ籠に入れた。
(そうだ…、屋敷に寄ったあと、奈美の家に行ってみるか…。場所なら聞いてるし、奈美と太輔に会えるし……)
そこまで考えたあと、2年前に奈美と華音が戦った光景を思い出した。
未だに奈美には複雑な思いがある。
(……挨拶だけ……しとくかな…)
時間をかけて思い出を振り返りながら歩き、そろそろ目的地に近付いた時だった。
ピリピリと肌を突かれる感覚に襲われた。
「!?」
久しぶりの感覚に戸惑ったが、急いで辺りを見回す。
(能力者(仲間)の反応!? ……そうか、“心臓”が日本を離れたから…)
今までは“アクロの心臓”の波動のせいでジャミングがかかったように“仲間”を探知することはできなかった。
(この反応は…、ひとり分? 太輔か、奈美か?)
反応を追ってフェンスを飛び越え、公園を通り過ぎ、道に出た。
「ここは…!」
見覚えのある道だ。知らず知らずのうちに近道をしていたようだ。
さらに先を走ると、屋敷に向かう門を見つける。
そこで立ち止まり、先を見つめた。人影は見えない。
だが、この先に能力者がいることは確かだ。どんどん反応が強くなる。
能力者なら相手も接近するレンの気配には気付いているだろう。
(太輔と奈美がここに来る理由なんてあるのか? じゃあ勝又? あいつこそ、今更なにしに来るんだって話だ。―――じゃあ…、あいつは?)
意地悪そうにニヤついた顔を思い浮かべる。
居ても立っても居られず、その先へと走り出した。
しばらく走ると、錠のかかった見覚えのある門が現れ、よじ登って越える。
その門を越えて着地した場所は、2年前に由良達とともに壊し、今も瓦礫として残っている屋敷跡だ。
すでに売地になっているが、元々の屋敷の主が変死していたため、未だに買い手は見つからないらしい。
「あの時のままだ…」
崩れたレンガの壁にそっと触れた。風雨に晒されたせいで劣化していて、わずかに崩れる。
近くに仲間の反応があるのは確かだ。辺りを見渡す。
「どこに……」
その時、崩れかけたレンガの壁の向こうに見えた、人影を捉えた。逆光ではっきり見えない。
レンの胸は期待で高鳴り、足は弾かれたようにそこに向かって走り出し、姿を見る前に堪らず叫んだ。
「由良!!」
現れた人物は、冷笑を浮かべる。
「死んだと言っただろう」
「!?」
レンは驚いて立ち止まり、一歩後ろに下がった。
「しぶとく生きていたとはな、北条レン」
眉上で切りそろえられたボブヘアの黒髪、整った顔立ち。
上半身は白のカッターシャツ、両腕には黒のロンググローブ、下半身は黒のショートパンツ、ニーハイソックス、黒のブーツ。
腰から垂らしたベルトには、小太刀。
出会った時とまるで変わらない。
「あ…、天草…!?」
「ふん…。覚えていたか……」
レンは反射的に天草の周囲を見回した。
「勝又様はいない」
天草はくつくつと笑う。
「横須賀基地で貴様を見かけてから追っていた。己の不始末をつけるためにな…。気付かなかっただろう? くく…っ。あの男ではなくて、残念だった…」
「な」と天草が言い切る前に、レンは高くジャンプして天草の顔面目掛け右足を突き出した。
バキッ!
「!?」
天草は咄嗟に右腕で庇ったが、不意打ちに油断し、踏ん張った両足が地面を滑る。
少し距離を置いて地面に着地したレンは、「おいおい」とせせら笑った。
「残念、なんて…、寂しいこと言うなよ…」
「…っ!」
顔を上げて見せる瞳は、底なしの穴のように濁っている。
天草の背筋が思わず凍りついた。
「ジジイの手掛かりが、そっちから現れてくれたんだ…。逃がすと思うな……」
.