27:忘れられてもいい
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稜のデコトラは、休憩を挟みながら一夜を越えて走り続けたのち、盛岡市内にあるバイクショップに到着した。
レンと稜は協力してバイクをコンテナから下ろし、ショップ店員に故障の原因を診てもらう。
店員の何人かは、隣に駐車場に停められた稜のデコトラを見上げ、「うわ」と顔を真っ青にする者もいれば、「カッケー」と目を輝かせる者もいる。
その間、ショップの前にある自販機の前で缶コーヒーを飲みながら雑談していた。
「ありがとな。結局、盛岡まで送ってくれて…」
「気にすんな。どうせ通り道だったし」
レンは「ホントかよ…」と苦笑する。
稜とはここでお別れだ。わずかな時間だったが、少し寂しくなる。
「ケンカに巻き込まれたら、また混ぜてくれよな」
「ははっ。もちろん」
「……だから、レンの連絡先と、探してる奴の特徴も教えてくれよ」
「え?」
「人海戦術ってやつだ。知り合いにも声かけて、見つけたら逐一連絡してやる」
「……稜サン、いい人すぎません?」
眩しい人柄に思わず敬語になって目を細めるレン。
「これもなにかの縁だ。そいつの写真とか持ってねーの?」
「写真…。あいつそういうの嫌いだったから…」
自分を残すことに興味がない人間だ。
写真なんて撮らせてくれたことはない。
「似顔絵は?」
「似顔絵…」
「描くだけ描いてみろよ」と稜は後ろポケットからメモ用紙とボールペンを取り出してレンの目前に差し出した。
「……………」
普段、絵を描いたことがないレンだったが、躊躇いながらそれらを受け取り、特徴を思い出しながらボールペンを紙に走らせる。
完成して手渡した紙には、大の字ポーズのひとりの男が描かれていた。
ワカメのような髪、目付きの悪い目の下には隈、ニヤつく口から覗く上の歯は2本のキバ、齧歯類のような下の歯、服装はツナギ、左腕はなく、左下には“ユラ タクミ”とカタカナで書いてある。
まじまじと、怪訝そうに絵を見つめる稜。
「……人間?」
「……一応」
「やっぱなし」と恥ずかしくなって稜の手から紙を取り上げたかったが、稜は上に伸ばしてその手を避ける。
「見つけやすそうでいいじゃねえか。口で特徴言われるよりずっといい」
レンは「え―――」と顔をしかめたが、稜は「何枚か描いとけよ」とアドバイスして渋々描かせた。左利きのため、相手の名前を横文字で書くと、手の側面がボールペンのインクで汚れてしまう。
そうして時間を潰していると、ショップの店員が話しかけてきた。
バイクの部品がいくつか劣化しているので、部品交換・修理に時間がかかるとのことだ。
修理費もバカにならず、盛岡を探索したのちすぐにでも北海道に行く予定だったが、レンは肩を落として諦める。
「運よく、この場所で見つかったらいいんだけどな…。……そもそも、あいつがそこにいるって確証はまったくないし、一度自分達の手で壊したところだし、最後はあんなことになったし…。あいつ…、本当は2年前のこととか、あたしのことも忘れたいんじゃ……」
「コラ」
横から伸びた稜の手がレンのあごをつかむ。
優しい力で、むに、と頬を持ち上げられた。
「おまえが忘れたくないから、長い間探し回ってんだろ。シケたツラしてんじゃねーよ。忘れたいのか忘れたくないのか、本人に直接会って聞けばいいだろ」
「……そうだな」
背中を押す言葉に、少し、元気づけられた。
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