05:死ぬべきだった…
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警察署の惨劇から数時間後、勝又は一足先に広瀬という男子高校生の能力者と合流したあと、アジトへと向かった。
そのあと、案内されるままに由良に連れてこられたレンは、目の前にそびえたつ建物を見上げ、持っていた荷物を地面に落として立ち竦む。
「どうしたぁ?」
由良が呑気な声でいいながら、レンの顔を覗き込んだ。
レンの丸い目は建物を凝視したまま、少し間を置いて由良に尋ねた。
「アジトって……言ったよな?」
「言った言った♪」
「ここ……だよな?」
「イエ~~ス♪」
「面白いくらい立派なお屋敷じゃねーか…。資産家とかが住んでそうな…。絶対おまえらの家じゃねーだろ…」
後半はほとんど消え入りそうな独り言だった。
勝又と由良は、レンと出会う前から使用している、という話だ。
一体どんな手を使って手に入れたのか、聞かないことにする。
「もう勝っつん達帰ってるみたいだから早く行こうぜ」
戸惑うレンに構うことなく、ポケットに手を突っ込んだまま由良が先を行く。警察署襲撃とほとんど同じ流れだ。
待て、と言っても足を止めないのはわかりきっている。
レンは地面に落としたリュックを拾い、由良の背中を今度は見失わないように追いかけた。
レンの予想した通り、屋敷内もかなり広い。
今まで在住してきたのは一般の賃貸マンションだ。4人家族で住むには狭すぎない空間だった。
ここでしばらく過ごすことになると思うと、レンとしては落ち着かなかった。
洋館のだだっ広いエントランスホールを見回し、レンは早くも口ポカンだ。
「おまえの部屋、2階な。好きなとこ使え」
由良がエントランスホールにある階段の一番上を指さした。
「………ぁ、ああ」
レンは開けっ放しの口を閉じて平静を装うが、声がまだ震えている。
いつまでも立ち尽くしているわけにもいかず、由良を置いて2階へと向かった。
ベッドがある部屋がいい、と適当に選んだはいいが、部屋もひとりで過ごすには広く、ベッドは相撲が2人眠れそうだ。
レンは天井を仰ぐ。
(……布団で寝たい。寝袋だっていい)
半日前から不満しか浮かばないが、いつもの日常から抜け出すといっても生活が良い方向に過ごしやすくなるとは限らないのだ。早く慣れなければ、とレンは切り替えることにした。
リュックから取り出した着替えをクローゼットにしまったり、小物類を棚の引き出しにしまっていく。
掃除はいつされたのだろうか、わずかなホコリが舞って鼻をくすぐり、レンは何回かくしゃみをした。
それ以外なら一室だけでも設備がホテルみたいだ。
部屋にはトイレもシャワーも備えられ、あまり使用された形跡がなく目立った汚れも見つからない。
ある程度片付けを終えたところで、これからの生活に慣れるために、屋敷内を歩き回ることにした。
キッチン、リビング、食堂、娯楽室、書斎、来客室、ティールーム、バルコニーなど、なんでもありだ。
(さて、うまくやっていけるかな…)
「ん?」
カギがかかってる部屋を見つけた。
大袈裟に思えるほど重々しい南京錠がかけられてある。
この部屋だけなぜ、と疑問が浮かんでドアに耳を当てるが、中は静寂で物音ひとつ聞こえず、“仲間”の気配も感じない。
「何がいるんだ…?」
背中を冷たい手で撫でられるような不気味さに一度離れた。
まだ屋敷全体を把握できない状態で詮索するのは危険な気がしたのだ。
レンにとってこの手の嫌な勘は当たることが多い。
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