26:必死なんだよ
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レンは稜と一緒に男達を地面に積み上げたあと、バイクごと稜のデコトラに乗せてもらい、盛岡に向かっていた。
助手席に座り、初めて乗ったデコトラにわずかに胸を弾ませている。
カーテン、シートカバー、ダッシュボードなどの内装も派手な花柄で装飾されていた。
「なんて礼を言っていいか…。あのままだったら、バイクと一緒に途方に暮れるとこだった。稜さんのおかげで…」
「稜でいいよ」
煙草を吸いながら、稜が笑う。
むしろ「アネゴ」と呼びたいレン。
「……稜のおかげで…本当に助かった…」
「助かったのは、さっきのヤロウ共の方だろーな」
「え…」
思わずギクッとする。
「レンだっけ? ケンカってわりには、物騒な目ェしてたからさ…」
どんな目をしていたのか自覚がないレンは、「あ―――…」と濁し、人差し指で顔を掻いた。
稜が来なければ、能力を使ってもっと酷い目に遭わせていたかもしれないのだ。
「ケンカってそもそも物騒なわけで…」
「ははっ。そりゃそうか。…で、盛岡になにしに行くんだ?」
話題を切り替える稜に、ほっとしながらレンは答える。
「思い出の場所があるんだ」
「思い出の?」
頷き、盛岡にあった屋敷のことを思い出す。
「今はもう更地だけど…。あいつが…、友達が、そこに現れるかもしれないから…。この先、しばらく、日本を離れることになるかもしれないし…」
由紀恵からの召集の連絡があるまでの暇、国内にいるうちにできるだけ手掛かりを集めたいのだ。
「彼氏?」
「はぁ!? ち、違うから!」
一気に顔が熱くなり、「友達だっつってんだろ!」と首を横に振って否定するレンに対し、「え―――。ホントに―――?」とニヤニヤと疑いの目を向ける稜。
ちょうど、広い駐車場があるコンビニが見え、稜は建物の近くに停めてデコトラから降りた。
待つ間、レンはサイドミラーに映る自分の頭にかけた眼帯を見つめる。
「……………」
(今思うと…、“心臓”に近付くっていう勝手な行動をしたのに…、一応あたしも“心臓”回収メンバーに入ってんだな…)
自分勝手な行動は太輔ほどではないけど、と思いながらも、元・勝又一派で猜疑心を持たれても仕方がない立場だ。
なのに、由紀恵はあっさりとメンバーに指名してきた。
(あと…、奈美と勇太がどこかよそよそしかったな…)
“アクロの心臓”を横取りしようとした行為について咎められることはなく、他のことを気にしている様子だった。
『レン姉ちゃん、本当になにも覚えてない?』
勇太に聞かれたが、奈美に気絶させられたあとの記憶がない。
気付けばトレーラーハウスのベッドの上だったのだ。しかも1日以上が経過していた。
(あとちょっとだったのに、って…恨み言を言うのはお門違いかもしれねーけど…。……考えなしに突っ込んでったのはまずかったよな…)
「はぁ―――」
大きくため息をつき、苛立ちを少しでも抜こうとする。
(ちゃんと奈美にお礼言えてねーや……)
「ほら、食え食え」
「!」
運転席に戻ってきた稜が、ガサガサとビニール袋からおにぎりやサンドイッチ、おつまみ系のおかずを取り出してレンの膝にのせる。
「ちょ、ちょ、こんなに!」
雑にのせられたので、レンは転げ落ちそうになるおにぎりを慌ててつかみとった。
「難しい顔してた。そういう時はなにか胃に入れとけ」
「!」
レンがはっとした顔を稜に向けると、稜は言葉を続ける。
「複雑な事情も含めてすぐにでも会いたい奴がいるんだろーが、今レンができることは食うことだ…、って似たようなこと、2年前にも誰かさんに言ったことがあるんだ、ははは…」
照れ臭そうに言う稜を見つめ、レンは小さく笑みをこぼした。
「そうだな…。ホント、今日はあんたに助けられてばかりだ」
「あとでメシ代返すよ」と言いながらおにぎりの袋を開けるレンに、稜は「いいって。気にすんな」とサンドイッチの袋を開ける。
それから他愛のない話をしながら食事を終えたあと、デコトラを発進させた。
少し離れたところでは、1台のタクシーが再び動き出し、距離を空けて稜のデコトラを追いかける。
「お客さん、もう随分と走ってるけど、お金大丈夫?」
「心配あらへんがなー。タクシーのドライバーさんってドラマとかでこういうの憧れてへん?「前の車を追ってくれ」って」
「憧れはあるけど、追いすぎじゃない? 最初追ってたのバイクだったのに、デコトラになってるし…」
「あー、おっちゃん、距離気ぃつけてな。―――“仲間”って気付かれてまうさかい」
ヘタな関西弁を使いながら意味深な言葉を口にする外国の女に、首を傾げるタクシーの運転手。
フロントガラス越しに稜のデコトラを見つめている女の目は、能力者特有の妖しい光を纏った瞳だ。
.To be continued