26:必死なんだよ
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奈美が太輔を連れて新幹線で盛岡まで移動する一方、レンもある程度の荷物をまとめて小田の家を出ようとしていた。
玄関先で、どこに行くのかと尋ねる雨宮に、レンは正直に答える。
「盛岡ぁ!? え…。叶君達と約束でもあるの?」
素っ頓狂な声を上げる雨宮。
雨宮の後ろで見守っていた小田の肩には、液状の論がのっていた。
「そんなんじゃない。盛岡には個人的な用があるんだ。雨宮と暮らしてた時も、暇ができれば何回も行ってただろ? “心臓”の行方がわかるまでは待機ってことだし…」
首を横に振るレンはそう言いながら、レザージャケットの胸元のチャックを上げてヘルメットの用意もする。
「で、でも…、やっと回復したところなのに…」
能力者ゆえに治りは早いが、基地から逃げ帰った時は目を逸らしたくなるほどの大怪我を負っていたのだ。
「もう少し休んでったら?」と提案する雨宮だったが、レンは「大丈夫」と薄く笑った。
「遠慮しなくていいのに…」と小田は邪な理由で、残念そうに半泣きだ。
「杏って子が遠隔で監視してくれてるとはいえ、また軍の奴らが近づくようなら、すぐに連絡してくれ」
愛用の赤の大型バイクに跨り、エンジンをかけた。
そして、2時間後、見事にエンストしてしまう。
車道沿いで、めげずにバイクを押して進んだが、途方もない道のりにうんざりして足を止める。
暑くてヘルメットを脱いだ。
「……奈美達みたいに、新幹線を使うべきだったか…」
(せめて、道具があれば自分でいじれるのに…)
ままならないこと続きに「はぁ~~~」と大きなため息をついていると、後ろから騒がしいバイク音が近付いてきた。
6台の大型バイクがレンの周りを囲む。
「!」
耳をつんざくほどのエンジン音がやみ、男達がヘルメットを取ってバイクから降りてきた。
「ほら見ろ、当たりだ」
「後ろ美人じゃなくてよかったぜ」
「よー。どうした、ねーちゃん」
「見たところ、困ってるみたいじゃねーか」
親切心で声をかけてきた様子でないのは第一声で理解する。
顔やスタイルを吟味する視線や生理的に受け付けない笑みを浮かべる男達に、レンは露骨に顔をしかめた。
「困ッテナイデス」
「オレ達が目的地まで運んでってやろーか?」
「後ろに乗れよ」
「あ、ズルいぞ!」
「なー、この中で誰がタイプ?」
「遠慮シマス。バイク置いていけないし」
(ウッッッゼ~~~~~。厄日かよ…)
面倒事は起こしたくないためレンはほとんど棒読みで答え、さっさとどっか行け、と冷え切った目つきになる。
そんなうんざりしたレンの気持ちとは裏腹に、下手に出たのがよくなかったのか、男達が調子に乗った。
「バイクのことなら心配すんなって」
「あとでオレ達が運んできてやるからよ」
「つーか、見たとこエンストしてるな。そんなオンボロバイク、乗り捨てりゃいーじゃん」
バチッ、とレンの身体から電流が漏電する。
「!?」
「……兄貴の大事なバイクだっつーの」
(イライラする…。こいつら…、黒焦げにしてやろうか)
レンの瞳が黒く濁ったその時、クラクションが大きく鳴らされた。
「!」
その場にいた全員がクラクションが鳴った方向に振り返ると、派手なデコトラがすぐ後ろに停車する。
「ひっ!!?」
「なんだなんだ!?」
派手に装飾されたデコトラの圧に男達の顔が真っ青になった。
反対に、レンの瞳が「かっこいい」と輝く。
「おお、スッゲー。デコトラだー」
運転席のドアが開いた音が聞こえ、降りてきた運転手が姿を見せた。
長い金髪の20代前半くらいの女性だ。左目には泣きホクロがあり、容姿も整っている。
もっといかつい男性が降りてくると思っていたため、予想外の運転手にその場にいる全員が目を見開いて驚く中、運転手は煙草をふかしながらレンの前に近付いた。
「なに、ケンカ?」
「……ま…、まあ…、これからしようとしてたとこ…」
レンは間をおいて答える。
(なんか…、あたしの先輩ってカンジがする…)
同じヤンキーの匂いを感じ取った。
「面白そうじゃねえか、あたしも遊ばせろよ。こいつらクズそうだし」
運転手が悪い笑みを浮かべて男達を指さし、鼻の下を伸ばしていた男達が「はあ!?」と一斉に声を荒げる。
「あのアマ、クズっつったか!?」
「美人だからってお高くとまってんじゃねーぞ!」
「女のクセにナメた口ききやがって!」
その言葉にレンと女が同時にピクリと反応する。
「「女のクセにだぁ…?」」
「元・レディース瑠璃殺陣覇、弁天の稜!! 甘く見てっと地獄見んぞ、ヤロウ共!!」
「売られた喧嘩は遠慮なく買ってやらぁ!! テメーら全員仲良く地に沈めてやるからな!!」
レンとデコトラ運転手―――吹石稜の迫力に、蛇に睨まれたカエルの如く、男達は「ひぃ!!」と身体を竦ませた。
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