25:返せ!
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地下通路の入口がある倉庫の前には、大勢の兵士と、トラックやジープが停車している。
その内の、大きなトラックのコンテナの中には、傷を負い、手首と足首を結束バンドで縛られた太輔・奈美・レン・伶が放り込まれていた。
手前で倒れている3人以外より、比較的に傷が浅い伶は奥の隅に座っている。
突然、勢いよくコンテナの扉が開かれた。
「【凄いよD4! たったひとりで、これだけの能力者を生け捕るなんて!】」
興奮気味のホーナーが飛び込むようにコンテナに上がり込む。
ホーナーに褒め称えられるD4は、無表情でコンテナ内のレン達を落胆の目で眺めた。
「……………」
伶はコンテナの扉の前にいるD4達を睨みつける。
「【……手前の3人は能力者で間違いありませんが、奥の男はまだ確認取れてません】」
D4はホーナーに伶のことを報告した。力量を測る前に無力化したため、他の3人と違って能力者であることも確かめられないままだ。
それを聞いた伶は、内心焦る。
(ただの一般人だなんて知られたら、さっさと殺されそうだな)
とりあえず大物ぶっとこう、と伶は偉そうな口調で、「自分も能力者です」と主張するように話しかけた。
「【―――なあ、あんたら、“アクロの心臓”になんの用がある? 人間には手に余る代物だ。まして兵器に転用だなんて…。ははっ、できるわけがねえ】」
気絶している太輔に触れようとしたホーナーの手を止め、関心の目を伶に移して歩み寄る。
「【……キミは早耳だねぇ。それが能力(ちから)かい?】」
「【デキが違うんでね】」
伶は挑発な口調でアゴをしゃくり、威張った態度をとった。
ホーナーは不気味な笑みを浮かべ、警告するように伶に言う。
「【人を舐めてちゃいけないよ?】」
そこで、ホーナーはいきなり興奮して早口で捲し立てた。
「【ボクらは核に代わる、次世代のエネルギーを手に入れた! 強力で、しかもクリーンな負の力だ!! 先人の生み出した、後世にまでツケを回す野蛮な兵器を一掃し、血塗られた大地を、―――歴史をまっさらにして、先駆者として、為すべきことを為すのだ!! キミにも、わかりやすく説明しようか?】」
「!?」
まるで今にも踊り出す不気味な動きに、伶は思わずビクッと体を震わせる。
「【今までの面倒な兵器は全部ポイして~~、これ1本でOK!! ―――ってことさ!】」
「【今ならタワシもついてクル―――♪】」とホーナーがハイテンションで歌うように言った。
「【これからは、ボクのようなセンスある人間が、時代を創っていくんだ!】」
そう言いながら、誇らしげに自分のネクタイを締める。
「【………そのシャツで?】」
伶は苦笑いを浮かべながら、水玉のシャツというヘンテコな格好に、納得してしまうツッコミを入れた。
ホーナーは怒って飛び跳ねる。
「【なっ、なんだと―――!?】」
その背後で、コンテナの扉の前に現れたマクファーソンがホーナーに声をかけた。
「【ホーナー博士! 喋りすぎだ】」
「【いいもん。どうせ、こいつらみんなボクの実験材料だ。キミから先に切り刻んでやる!】」
ホーナーは伶を睨みつけながら指さす。
それだけは勘弁、と伶は血の気が引くのを感じた。
「【……ガッカリすんぞー?】」
「実験材料」という言葉に反応して、レンは顔を上げて怒鳴り声を上げる。
「【……ふざけんな、このイカレ科学者が!】」
レンはホーナーを睨みながら続けた。
「【アレをテメーらの好き勝手に使われてたまるか! 兵器? 時代を創る? くっっだらねえんだよ!! 脳みそチビのテメーになにができるってんだ!】」
その暴言にカチンときたホーナーが、ムキィーッと甲高い声を上げて怒鳴り返す。
「【キミから前菜(オードブル)にして、切り刻んでやろうか――!?】」
「【テメーごときにやられるかあ!!】」
レンとホーナーがバチバチに睨み合う中、伶はその光景を呆然と眺め、「やめとけ、マジでオードブルにされるぞ」とレンに聞こえるよう小声で言った。
レンはマクファーソンに視線を移し、憎々しく睨みつける。
「【そこの鼻なしヤロウも、あとで黒っこげにしてやるよ! 雨宮を殺そうとしやがって……】」
ドンッ
見兼ねたD4はさっと銃口をレンに向けて発砲した。
「レン!」
「……っ、う…っ」
ゴム弾で背中を撃たれ、呻き声を上げながらさらにうずくまる。
D4はレンに冷ややかな目を向けた。
レンは顔を上げ、目を合わせると嘲笑を浮かべながら、舌をベッと出す。
「【……………】」
「【かまわん、D4。“心臓”を艦に積むぞ】」
そう言って、マクファーソンは港に向かおうとコンテナに背を向けて歩き出した。
D4は銃を下ろして、コンテナからおりようとする。
「【はぁ―――い♪】」
ホーナーはマクファーソンを追いかけようと、D4に続いてコンテナから降りようとした時だ。
「待っ…」
太輔が顔を上げて振り絞るような声を出した。
コンテナから降りようとしたホーナーが動きを止めたのを見て、太輔は言葉を継ぐ。
「し…、“心臓”…、手…出すな…っ。みんな…、こっ、殺される…っ」
ホーナー達に訴えるが、ホーナーは聞く耳を持たなかった。
「【使い方次第だよ。ボクはそんな失敗しないしね】」
対して、英語が伝わらない太輔は訴え続ける。
「早く…逃げろよ! あいつは……広瀬は、ひとりになるまで、殺し続ける……」
そこで、D4にストックで後頭部を撲られ、太輔はぐったりと気を失った。
「静かにしてください」
D4が気絶した太輔を見下ろす。
「太輔…っ」
レンは思わず声をかけた。
伶がD4を睨みつける。
「【このままオレ達がおとなしくしてると思うなよ…。だいたい――― こんなモンで、能力(ちから)が防げると思ってるのか?】」
結束バンドで縛られている両手首を動かす。きつく締められているため、痛みが走った。
「【今のあなた方には十分です】」
D4は冷ややかに言い放ち、レンはキッとD4を睨みつけた。こめかみには青筋を浮かべている。
(覚えとけよ、あの女…)
コンテナが閉められたあと、伶は気絶している太輔と奈美に呼びかけていた。
「……太輔、奈美! 大丈夫か? 早く逃げねえと殺されるぞ、おい!」
「う…っ」
先に気がついた奈美は体を起こそうとするが、D4に撃たれた部分が痛み、呻き声を一声上げる。
「あれだけの銃弾を浴びたんだ…」
伶に言いながら、歯を食いしばって身を起こしたレンは壁際に背中をもたせかけた。
痛みで顔をしかめる。
「わ、悪かった…。作戦は…、失敗だ」
うつむいた伶が弱々しく言った。
「……っ」
レンは、聞きたくなかった結果を言われ、悔しげに奥歯を噛みしめながらうつむく。
意識の奥で、太輔は伶の言葉を聞いていた。
(失敗……。目の前に、いたのに。もう、すぐそこに、広瀬がいるのに…!)
このトラックの近くにある別のトラックから“アクロの心臓”の気配を感じながら、自分の無力さを悔やんだ。
(チクショウ! チクショ…)
目をギュッとつぶり、歯を噛みしめた時だ。
“生きている岩”が積まれたトラックから、白い煙のようなものがその形を成し、太輔の前に座った状態で現れた。
広瀬だ。
広瀬は手の指を組みながら太輔を見下ろし、嘲笑いを浮かべた。
“……無力だね、キミは…”
夢か現実か、広瀬の言葉で太輔は目を大きく見開いて目覚める。
目の前には広瀬はいなかった。
だが、太輔はギリッと歯軋りすると、結束バンドに手を触れ、能力を発動させる。
「「!?」」
太輔の取った行動に、レンと伶が同時に驚く。
結束バンドは焼き切れ、太輔は腕が自由になると、身体の痛みに耐えながら身を起こそうとした。
「太輔…!」
伶の呼ぶ声も、太輔の耳には聞こえていない。
太輔は足首の結束バンドも焼き切ったあと、立がってコンテナの扉に手を触れて溶かす。
ゴキッ バキンッ
ある程度溶かしたあと、荒々しい音を立てながら扉を何度も蹴り、そのまま大きな音に伴って勢い良く扉を蹴破り、飛び出した。
「太輔!!」
レンは声を上げるが、太輔は見張り番をしていたD4に撃たれても止まらず、“アクロの心臓”の乗ったトラックを目指して走る。
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