24:あと少し…
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伶は太輔を睨みつけながら、閉ざされた出入口をコブシで叩く。
「ちくしょう! 太輔! あとでスゲーからな!?」
「ごめーん」と太輔が謝り、「少し落ち着け」とレンが伶を宥めようとした。
「あ…、待った。―――誰か来る…!」
そこで太輔は、ラボの方から来た人影に気付いてそちらに振り向き、レン、伶、奈美も太輔の視線を追う。
(……1人?)
現れた人影は、両手に持ったアサルトライフルの銃口をすっとレン達に向けた。
「!」
同時に伶は、腰に挟んでいた拳銃を取り出したが、
ドンッ
向こうの方が反応が早く、伶は左肩を撃たれてその場に倒れてしまった。
「レイ……」
「大丈夫か!?」
太輔は伶に振り返り、レンは伶に駆け寄った。
しゃがんで伶の撃たれたところを見る。
「……っ、かっ…、かは…っ」
銃で撃たれたにしては出血は少ないが、伶は噎せながら肩の激痛に悶えた。
「伶! おい!」とレンが伶に声をかける。
「弱装(火薬量減)のゴム弾です。命を奪うつもりはありません。「侵入者を生け捕りにせよ」との命に従い、あなた方を捕縛します」
発砲した人物である軍服姿の女がレン達の前にその姿を現した。
特殊部隊員の、コードネーム:D4。マクファーソンの部下だ。
「もちろん、抵抗してもらってもかまいません」
「【……………】」
D4の後ろから、マクファーソンが腕を組みながら部下の手並みを拝見している。
その位置はレン達からは見えにくい。
「……捕縛だぁ?」
レンは立ち上がり、D4に振り返って睨みつけた。
「げほっ、げぇっ」
伶の噎せは止まらない。太輔も駆け寄ってきて伶の身の心配をする。
奈美とレンはD4を見つめた。
(あの女……)
(今までの兵とは違う…)
今までの経験上、D4を一目見て、まったく隙がないことを感じ取る。
レンは無意識に天草を思い出した。精錬された雰囲気がどこか似ているからだ。
太輔は怒りの形相で立ち上がり、D4に吐き捨てる。
「ふざけんな!!」
伶は噎せがおさまると、手に持った拳銃を動かし、銃口をD4に向けた。
(…悪いな)
射撃は得意だ。横に倒れた状態でも、その気になれば相手の頭を撃ち抜くこともできる。
その覚悟もあった。
伶が引き金を引く前に、D4がわずかに動く。
パァンッ
弾道はD4のすぐ横を横切った。
(はずした!)
驚きながらも、伶は再び引き金を引こうとする。
D4の目は伶の腕の筋肉の動きを捉え、体勢をわずかに斜めにした。
撃たれたは銃弾は2発だ。
「!!」
容赦ない発砲に、太輔は驚いて伶を見下ろした。
連続で発砲された弾道は、D4を掠めることなく通過する。
「「「!」」」
その場にいた全員が驚いて目を見張った。
拳銃を撃っていた伶が一番驚いている。
(なんだ? なぜ当たらない!?)
D4は「ふっ」と一呼吸おくと、一歩一歩とゆっくりと歩を進め、太輔達に銃口を向けながら話し始めた。
「………断っておきますが、私は能力者ではありません。そして、あなた方が能力者であるという可能性を踏まえて、ここに立っています」
「!」
D4がひとりで立ち向かってくる理由は、実戦で能力者相手に自身の実力が通じるかどうか。
駆け出すと同時にD4はレン達に向け、アサルトライフルをフルオートに切り替えて連射する。
「能力(ちから)の出し惜しみはせず、全力で抵抗することをお勧めします!」
ドドドドドドッ
「うがっ」
「ぐっ」
太輔と伶は撃たれて呻き声を上げた。
「!」
奈美は2人に振り返ろうとしたが、阻止するようにレンは怒鳴る。
「奈美! 来てる!」
D4が奈美の頭部目掛けて銃のストックで殴りかかってきた。
「くっ」
間一髪、奈美は上半身を反らして、額を擦っただけで済んだ。
(強い!)
奈美はD4の後ろに回りこむと、D4の延髄目掛けて手刀を打ち込もうと素早く構える。
だが、D4は後ろに目がついているかのように素早く振り返り、銃身で奈美の手刀を受け止めた。
(え!?)
奈美が驚いたと同時に、アサルトライフルから弾が発砲される。
ドッ
単射された銃弾は、近距離にいる奈美のあばら骨に当たった。
骨にヒビが入るほどの威力だ。白いセーラー服に血が滲む。
「ごほっ、くはっ…」
奈美は唾液交じりに吐血し、後ろに飛び退いてD4から距離を置いた。
それを見計らい、レンがD4に殴りかかる。
右頬目掛けてコブシを振る、と見せかけて細い首をつかもうとした。
相手の一部をつかめば、そのまま電流を流して気絶させることができる。
「!?」
しかし、フェイントを入れてつかむ直前に銃身で腕を払われてしまった。
一瞬、レンが動きを止めると、
ドドドッ
レンの腹に3発の弾がめり込んだ。
「あ…、がはっ…」
あまりの痛みに目眩を起こしかけるレン。
「……………」
D4は走り出すと、レンと奈美目掛けて無数の銃弾を撃ってきた。
その間に、太輔はD4の傍のトラックの上に飛び乗り、D4目掛けて飛び降りる。
(あの銃さえ奪っちまえば!)
こちらに来るとき、奈美に銃口を向けた兵士に使った手口と同じだ。
(上から…、風)
D4の耳が、周囲の空気の乱れを捉える。
直後、素早く真上を見上げ、太輔に銃口を向けた。
「な!?」
ドドドドッ
太輔は空中で身動きができず、そのままD4に撃たれ、激痛を伴いコンクリートの床に落下してうずくまる。
その光景を目の当たりにしたレンは、口端から流れる血を手の甲で拭い、こちらに振り返って再び銃口を向けるD4を睨んだ。
(紙一重で避けられるし、先も読まれてる…! 能力者じゃないなら、なんなんだ、あの女…!?)
レン達はD4に攻撃は繰り出してはいるものの、全て回避され、その隙を狙われては銃で撃たれと、苦戦を強いられていた。
太輔と奈美が同時に殴りかかっても、D4はあっさりと避けてものともしない。
太輔がD4にうしろ蹴りを食らわそうと勢いをつける。
(次は…、ここ)
D4は太輔が蹴りをつき出す前に一歩後ろに下がってかわし、太輔の背中に銃口を向ける。
「!?」
ドドドドドッ
「がっ」
背中を撃たれた太輔は呻き声を上げて倒れるが、それでも銃弾の雨はすぐには止まない。
すぐにレンが攻める。
(指先一本触れるだけでいい…! あと少し…!)
“心臓”を載せたトラックを一瞥し、視線を奈美に移した。目が合い、互いにアイコンタクトをとる。
(ここで捕まるわけにはいかねえんだよ)
銃口の動きに集中してコブシを構えた。
(左、からの右足…)
D4の読み通り、レンは左のコブシを突き出し、顔を逸らされて避けた瞬間に右足でミドルキックを食らわせようとするが、銃のストックで右足を撲られ防がれる。
「っ!」
(ここ)
D4が銃を構え直そうとしたところでレンは素早く避けようと左に大きく飛び退いたが、D4はレンの避ける場所を予測していたかのように、その場所に銃を向け、銃弾を連射する。
ドドドドドドッ
「うああっ!」
体に直撃する銃弾の雨に耐えきれず、叫び声を上げた。
D4を睨みつけながら、コンクリートの床に崩れ落ちる。
「く…、うぅっ…」
立ち上がろうと膝と手をついたが、体に激痛が走り、再びその場にうつ伏せに倒れてしまった。
「レン!」
太輔が叫ぶ。
同時に奈美が動いた。
D4の意識が未だにレンに集中している間、頭部目掛けて足を突きだそうと勢いをつける。
(女は…、ここ)
D4は奈美の足が突き出る場所を読み、身を軽くよじらせ、奈美の勢いのついた蹴りを避けた。
「!?」
避けると同時に、D4は銃口を奈美に向けて引き金を引く。
足を突きだしままの奈美は、銃口から避けることができない。
ドドドドドドッ
レンと同じく、銃弾の雨を浴びた。
「ナミ!」
「きゃあああ!!」
奈美の悲鳴が駐車場に響き渡る。
太輔は奈美を銃弾の雨から押しのけると、代わりとなって銃弾の雨を浴びようと怯む素振りは見せず、そのままD4に直進する。
「!」
一度引き金から指を外したD4は身構えた。
(来る!)
相手が能力者であること以外、肝心の能力の詳細は判明していない。
肉弾戦と違い、能力は先を読むことができなかった。
太輔の瞳は妖しく光り、手に能力を集中させてD4につかみかかろうとした。
そこでふと、由紀恵の言葉が脳裏をよぎる。
太輔が記憶をなくし、火傷も治りかかっていた頃の記憶だ。
2人きりのトレーラーハウス内でソファーに座りながら、由紀恵から自分の能力について教えられていた。
『―――太輔、あなたの能力(ちから)は細胞を死滅させることができます。あなたに触れられ、焼きつくされた部分は再生しません』
『やき…?』
太輔は、由紀恵がどういう話をしているのか、この時はなにも理解できなかった。
それでも、由紀恵はいつかの話を続ける。
『……記憶が戻り、再び能力(ちから)を使えるようになったら、覚えておきなさい。使う時は、殺す時だと!』
太輔は、D4につかみかかる一歩手前で動きを止めた。
「……………」
戸惑った表情で、太輔は向けられている銃口を見つめる。
「た…、太輔!」
レンが叫ぶと同時に、D4は狙いを定めて引き金を引いた。
ドドドドドッ
「!」
伶はその光景に言葉を失う。
能力者が3人もいたのに、人間の少女ひとりに制圧されたのだ。
成す術もなく被弾した太輔は自身の胸を押さえ、激痛で息を弾ませながら倒れた。レンと奈美も立ち上がることもできない。
わずかな間、太輔を見下ろしていたD4は、母国語に切り替えて振り返り、機を見てこちらに近付く上司に告げる。
「【……軍曹、任務完了しました】」
「【ご苦労】」
レンはうつ伏せのまま、顔を上げてマクファーソンを睨みつける。
(マクファーソン…)
マクファーソンはレンを横目で一瞥したあと、D4の表情を窺った。
制圧したというのに、D4は不満げな表情を浮かべている。
「【どうしたD4、浮かない顔だな】」
「!」
マクファーソンがナイフを取り出した。
ナイフの先は、もう身動きを取ることが出来ない状態になってしまった太輔に向けられる。
「【こいつらの傲慢さが、腹立たしいか? そりゃそうだ…!】」
マクファーソンがナイフを振り上げた時、奈美は最後の力を振り絞り、氷の爪をマクファーソン向かって投げ飛ばした。
「!!」
マクファーソンは無駄な動きを一切見せず、飛んできた氷の爪にナイフの刃を入れて軽く横に一振りすると、氷の爪は真っ二つに割れて弾けたように粉々に砕ける。
「「……!!」」
それを見ていたレンと奈美は驚愕する。能力者の能力を物ともしていない。
マクファーソンはナイフを仕舞うと、レン達を見下ろしながら、冷やかに言った。
「……能力(ちから)があるなら、なぜ最初から使わない。戦場で力の出し惜しみをする奴には、死しか訪れん」
今のレン達には、マクファーソン達を見上げることで精一杯だ。
粉砕された氷の爪の冷気が、その場を冷たく包み込む。
.To be continued