24:あと少し…
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昼下がり、レン達は、基地付近のとある廃ビルにいた。
太輔は廃倉庫の吹き抜けとなっている2階で、ガラスのない窓から、遠くに見える横須賀基地の海に浮かぶ人工島をぼんやりと眺めていた。
「太輔―――!」
自分の名を呼ぶ声にはっとする。
下を見ると、伶が1階から呼んでいる。
「話をするから降りてこい!」
「ああ、すぐ行く―――」
太輔はそう返事したが、再び人工島の方向を見て、ぼんやりとし始めた。
「ったく…」
「ぼえんぼや――んとしやがって」と伶は苛立ちながら、口に咥えた3本の煙草をふかす。
「いいか!? これから“心臓”の奪還に―――、基地に乗り込むんだぞ!」
伶が叱るように怒鳴ると、奈美がバツの悪そうな顔で手を挙げた。
「あの…、私、一応女子高生なんですけど、軍人さんと戦うんでしょうか…」
「オレなんて小学生だ!」
続いて勇太も高く手を挙げる。
「オレは人間なんですが…」と伶は食べるように煙草をムシャムシャと噛んだ。
「考えてみれば、凄いメンバーだな…」
メンバーの唐突な意見に、レンは左手で顔を覆って肩を落とした。
「べつに戦わなくてもいいんだよ」
そう言って、太輔は2階から飛び降り、軽やかに着地する。
「“心臓”さえ取り返せばいいんだから」
これから基地に乗り込むというのに、その顔に恐怖や焦りの色が見られなかった。
伶の周りは煙草の煙が充満し、太輔は「伶兄吸いすぎ」と注意するが、伶は「好きに吸わせておくれ…」と力なく返す。
そのまま、太輔と伶は、肩を並べて廃倉庫内に停めておいた車に向かった。
「か…、簡単に言うなぁ、あいつ…。戦闘のプロのところに行くってのに…」
太輔の言葉に唖然としていた勇太は顔をしかめ、太輔の背中を見つめながら呆れる。
「ははっ、度胸あるじゃん」
廃倉庫の柱に背をもたせかけるレンは軽く笑うと、「いや、単にバカなだけだから」と勇太は否定するように言った。
太輔は車のトランクから、用意された服を引っ張り出し、両手に持ちながらレン達に声をかける。
「―――まずは、これに着替えろってさ! ……どうする? 行く?」
「当たり前だろ?」
最初にレンが太輔に近寄り、潜入用の服を適当につかみ取った。
勇太と奈美と互いの顔を見合わせる。
行けば後戻りはできない。
だが、勇太は太輔に近づき、取り上げるように服をつかみ取る。
奈美も続いて太輔の手から受け取った。
「!」
「最後まで、つきあってやるよ!」
威張りながら言う勇太。
奈美は何も言わなかったが、薄く弧を描いた口元が答えを出している。
そして、レン達は順番に、各々の潜入服に着替え始めた。
*****
太輔はジャージのような服装で、勇太は長袖を半袖の下に着、伶は上着を腰に巻き、純はロングコートに黒い長髪のカツラを手にし、レンはパーカーに着替えていた。
このメンバーは黒で決めていたが、奈美の衣装は、明らかに他のメンバーと比べて浮いていた。
「わ! なんだナミ、そのカッコ!?」
全員が、最後に着替えて戻ってきた奈美の姿に目を丸くした。
奈美が着替えた服装は、白いセーラー服だったからだ。
「な、なにって…、渡されたから着たんだけど…?」
「あれ? 皆普通……」と奈美が戸惑っていると、太輔は腹を抱えて笑い出した。
「着るかフツ―――!! ボケてますな―――っ」
茶化され、奈美は太輔を睨みつける。太輔に渡されたものを素直に着ただけなのに。
「でも、なんで……」と勇太は疑問を口にする。
そもそもなぜセーラー服があるのか。
心当たりがあり、真っ青になった伶は思わず咥えている煙草を落とし、太輔の背中に震える声をかけた。
「た…、太輔、おまえ…、間違ってママの趣味的な衣装持ってきたろ…!」
「若い頃、色々とね」と恥じらいながら言っていた由紀恵の言葉を思い出す。
「「!?」」
奈美と太輔はその言葉に顔を青くした。
「趣味的な衣装って……」
レンも同じく真っ青になる。渡されたのが自分だったかもしれないのだ。
間違いなく原因は自分だと察した太輔は、言い訳を考えた。
だが、いい言い訳が思いつかない。
「あ、あれ、コス……。なっ、謎の女子高生の変装だな!?」
コスプレ、と言いかけ、全くフォローになっていないどころか火に油だ。
「まんまじゃん…」と勇太は呆れてため息をつく。
奈美がコブシを震わせているのを見たレンは、危険を察知して巻き添えを食わないために、伶と勇太の背中を押してそっと避難させた。
直後、後ろから強烈な音が聞こえた。
奈美に渾身の力で殴られた太輔は、「の、脳が…、トモダチ…?」と頭から血を流す。脳みそがはみ出ているように見える。
伶は廃ビルにあった、古くて大きなテーブルにボイスレコーダーと写真を置き、机いっぱいに地図を広げた。
メンバーが全員机の周りに集まったのを確認して、煙草をふかしながら作戦内容を説明し始める。
「本題に入るぞ。作戦自体は至ってシンプル。―――まあ、確かに危険はあるが…、夜の闇に紛れればなんとかなる。“心臓”を移動させるってことは…、安全な金庫から外に出すってことだ…!」
そこでボイスレコーダーのスイッチを入れた。
ボイスレコーダーから、軍人達の会話が聴こえてくる。
伶は太輔達にわかりやすいように日本語に通訳した。
「【地下通路?】」
「【ああ。“心臓”を本国へ移送するには、島から地下通路を通って港へ運ばなければ、艦(ふね)には積めん。あの人工島には、艦が接岸できんからな】」
伶は会話を通訳しながら、地図上に載ってある人工島に「人工島(心臓)」と、黒のマジックペンで印をつけて通訳を続ける。
「【島にアレを搬入した時もそうだったんだよ、ホーナー博士】」
「【そうかぁ。……警備の方は、大丈夫なんだろうね?】」
「【第7艦隊が運ぶんだ。海の上では一番安全な運送業者だろう? 幸い“心臓”のある人工島と港とをつなぐ地下通路の存在は、一部の者しか知らん】」
伶は、地図に地下通路の出口と入口をつなぐ点線を書いた。
「【港の警備を怠らなければ、問題はない…】」
警備が厳重であることを考え、太輔達の“アクロの心臓”奪還作戦は真夜中に決行となる。
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