23:優しそうな人
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
純は、ダンボールに入れた必要な荷物を、潜入に使うFJクルーザーのトランクに載せていく。
「急げ急げ―――! 地図、忘れんなよ! ……………」
伶は全員の支度を促し、ボイスレコーダーから流れる詳細の内容を聴いていた。気持ちを落ち着けるために、煙草を3本口に咥えて同時にふかす。
「ほ、本当に今から行くの!?」
「ああ!」
太輔は振り向かず勇太に即答し、荷物を取りに何度も往復する。
慌ただしい雰囲気に吞まれないよう、レンも張り切って荷物運びを手伝っていた。
(なにが入ってんだ、この箱……)
メンバーが忙しなく動いている時だ。
「?」
純が動きを止め、辺りを見回しているのを見かけた。
「……………」
「じゅ……」
何をしているのかと声をかけようとした時、純は素早く体の向きを変え、手を伸ばし、背後を通ろうとした人物の背中の服をつかんだ。
「きゃっ!?」
純が捕まえたのは、葵だ。
葵は両腕に盗んだ地図を抱えていた。
「は…、放せ純兄―――!」
純に捕まった葵はネコのようにジタバタと暴れ、抱えていた地図が地面に落ちる。
「葵…、なにやってんだ」
騒ぎを聞きつけ、太輔は鍋が入ったダンボールを持って戻ってきた。
「ナベ?」、「必要なのか?」と勇太とレンがツッコむ。
伶は煙草の煙を荒々しく吐きながら怒鳴った。
「てっめえ…、遅れちまうだろが!」
純に捕まったまま葵は怒鳴り返す。
「だって、そんなとこ行ったら、みんな死んじゃうよ! “心臓”なんかほっときゃいいじゃない!」
「葵は来なくていーんだよ! メンバーに入れてねーし」
「あっ…、あたしだって能力者……」
伶に言い返そうとした葵は、「こら」と手を伸ばした由紀恵に抱きかかえられ、優しく地面に下ろされる。
「葵はママとお留守番」
「……………」
その言葉に逆撫でされ、葵は踵を返して走り出した。
「葵!」
太輔は声をかけるが、葵は太輔の横を通り過ぎ、そのままトレーラーハウスへと駆け込んだ。
「ほっとけ。遅れるぞ」
伶は、あとを追おうとした太輔を呼び止める。
「……………」
太輔はじっと葵が駆け込んだトレーラーハウスを見つめ、やがて、そちらへ足を向ける。
傍観していたレンは呼び止めず、太輔の分の荷物を運びながら待つことにした。
荷物をすべて車に積んだあと、潜入メンバーと車の前で太輔を待っていると、トレーラーハウスの中から太輔と葵が出てきた。
葵の目が少し腫れてる。
車の後部座席に乗り込む前に、レンは葵のことが気になった。
葵は、口を尖らせてトレーラーハウスに背をもたせかけている。その表情は不満に満ちていた。太輔は、説得ではなく話をしただけなのだろう、と察する。
(葵の気持ちは、わからなくはない…)
2年前、葵のように怒鳴って、邪魔して、仲間を止められていたら、湖の戦いは起こらずに済んだのかもしれないのに、と。たとえ、仲間に嫌われても止めるべきだった、と思わずにはいられない。
そして、レン・太輔・奈美・勇太・純・伶を乗せたFJクルーザーが横須賀基地へと出発した。
由紀恵は、葵とともに見送ってくれた。
走行中、レンは窓の向こうを見つめながら、由紀恵の言葉を思い出す。
『私は、この子達と一緒に残ります。私は能力者だけど、あなた方のように戦いには向いてないわ。一緒に行っても、足手まといになるだけ…。葵も行かせません。この子は、戦ったことすらないから…。危なくなったら逃げてください。みんな、どうか無事で…』
(優しそうな人だった…。―――でも…、あの目は、まるで……)
由紀恵のすべてを見透かすかのような瞳を、この世界で一番許せない男の瞳と重ねてしまったのだ。
.To be continued