23:優しそうな人
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「小田ちゃん達、記者だったんだ」
「あたしは記者じゃなくてただの手伝いだけど」
小田は所持していた鞄の中から、横須賀基地内の写真が入った封筒を取り出し、写真を太輔達に見せた。
太輔達は興味津々に写真を見ている。
伶はレンから受け取ったボイスレコーダーを流して、軍人達の会話を聴いていた。
「……にしても、よく基地の中入れたね!」
太輔は写真を手に、小田に驚きの表情を向ける。
「レンちゃんと論君が協力してくれたんだ。写真も……」
「論とレンが!?」
声を上げてレンに振り向くと、レンは笑みを浮かべながら言った。
「その時、回しっ放しにしてたレコーダーなんだ」
「スゲエな…!」
太輔は論の能力を思い出す。
液状化して基地の中に入り込むにはうってつけだろう。
「じゃあ…」と視線をレンに移した。花火を点火したのも、能力なのだろうと察する。
「気になってたけど、レンの“能力(ちから)”ってなに?」
「……あたしの“能力(ちから)”は―――」
2年前に初めて会った時も明かしたことはなかった。
レンは手のひらを開き、野球ボールサイズのプラズマを作り出して見せつけた。
「!!」
太輔達は、レンの手のひらに作り出されたプラズマを凝視する。
「“電気”…っつーの?」
「純兄と同じ“能力(ちから)”…!?」
太輔が声を上げると、反対にレンが驚かされた。
同じように驚いている純に振り向き、目を合わせる。
「同じ?」
「純兄も、似たような能力(ちから)が使えるんだ」
太輔が説明すると、離れた場所にいる純が何度も頷き、ぎこちなく口にした。
「でも…、俺は…、そうやって…ボール状に固めることは……できない…」
「……………」
レンは宙へ放り投げてプラズマを消し、怪訝そうにじっと手のひらを見つめる。
「同じ能力(ちから)? あり得るのか、そんなこと…」
「―――シッ!」
突然、レコーダーに集中していた伶が声を発した。
その場にいる全員が黙ってボイスレコーダーから流れる軍人達の会話に耳を澄ます。
“We’re gonna ship“tha heart”back home.”
“We’ll leave port 0200 on tha 21th.”
「……なんて?」
英語が苦手な太輔は会話の内容が呪文に聞こえた。
「……“心臓”を日本(ここ)から移動するってよ。しかも出港は、明日深夜! 厄介なことになった…」
そう言いながら、伶は煙草の煙を大きく吐く。
その場にいる全員の顔に焦りの色が見えた。
急を要する事態だ。
そこで、しゃがんでレコーダーを聞いていたレンは立ち上がり、全員に真剣な眼差しを向けて口を開く。
「急がねえとな。ちょうどいい。このままあたしも同行させてもらうけど…、いいか?」
太輔達の視線がレンに集まった。
「! レンちゃんまで…。危険だって言って……」
小田は慌てて止めるが、レンは「小田」と鋭く発して首を横に振る。
「だったらいつ動けばいいんだ? 今しかねえんだよ」
このために2年間動いてきたのだ。
逃すはずもなく、由紀恵に振り向いて確認する。
「あたしだって能力者なんだ。みんなの手伝いぐらいはできるさ。……頼むよ…」
由紀恵はレンの瞳をじっと見据えた。
その瞳が、不意に勝又と重なり、レンは「え…」とこぼす。
「このコも……」
一瞬、そう呟いた由紀恵の瞳が、哀れみを浮かべた。
そこで伶が口を出す。
「元・勝又の仲間らしいけど、問題ねえよな?」
警戒されているのは当然の事実だ。
あからさまな伶の言い方に、レンはため息をつく。
「反対されても、あたしは単独でも基地に行くつもりだけど」
腰に手を当て、伶を軽く睨んで挑発的に返した。
決意は揺るがない。
「……………」
由紀恵も黙ってしまった。
「オレ、賛成」
「!」
太輔が手を挙げ、全員の視線が太輔に移る。
「この情報が手に入らなかったら、“心臓”を奪還する計画も立てられなかったし、目的が一緒なら同行してもいいと思う」
「太輔…」
少し嬉しそうなレンの様子に、煙とため息をついた伶も首を縦に振った。
「……味方は多いほうが助かる。とにかく今は時間がない。とっとと支度しよう。それでいいだろ、ママ」
「……そうね。早い方が助かるわ」
素っ気なく返したあと、由紀恵は背を向けて行ってしまう。
レンは、「ありがとな」と太輔と伶に礼を言うと、成り行きを見守っていた小田に歩み寄る。
「レンちゃん…」
「……と、いうことだ小田。必ず帰ってくるから…」
「―――雨宮のこと、頼んだ」と肩を落とす小田の背中を軽く叩いた。
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