21:見つけた
夢小説設定
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夜の横須賀で、前回クレイと交渉をしたあの古びた廃倉庫に、黒ずくめの小田とチャイナ服を着た雨宮がやってきた。
崩れた壁の後ろに車を隠し、車から降りた雨宮は先に歩いて廃倉庫に向かう。
小田は、いつの間にか存在していた雨宮の設定に違和感を拭いきれずにいた。
(レインて…、そんな設定(なまえ)あったんだ…。ビミョ―――)
少し恥ずかしくなる。
「行くわよ、マシュー。Mr.北条がいないからって、気は抜かないでよ」
先に行く、論を胸に収納したことで気が強くなっている雨宮は、小田に背を向けながら恥ずかしげもなくそう言った。
(マシュ――!? ボクもか! しかも、レンちゃん男役!?)
小田は心の中でツッコむ。
「固っ…」
雨宮の巨乳役のため液状化している論は、とても苦しそうだ。
(貧乳じゃ、レインになれないのかなぁ…。論君も大変だ)
小田は論に同情する。
小田より先に、雨宮は廃倉庫に足を踏み入れた。
以前と変わらず、廃倉庫の中は薄暗い。
「【Mr.クレイ? レインよ】」
呼びかけながら辺りを見渡し、奥で座っている人物を見つけた。
暗いせいでよくわからなかったが、廃倉庫の隅に座っているその姿は、クレイのシルエットだ。
雨宮は黙ったままのクレイにゆっくりと近付く。
「【まだ日本にいたのね。国に帰ると言っていたから、私、てっきり―――】」
隠れていた月が雲から顔を出し、クレイの姿が月明かりに照らされはっきりと見えた。
クレイの顔には何者かから暴行を受けたような痕があり、胸の中心にはナイフが突き刺され、座った状態で息絶えている。
その足下には、携帯電話が落ちていた。
拷問を受けた末に電話をかけさせられ、通話を終えた瞬間にトドメを刺されたのだろう。
「…!!」
雨宮の表情は凍りつき、後ろに一歩下がったが、背後にいた者にぶつかり、同時に口を手で塞がれた。
「!? っ…」
あとからやってきた小田は、ただならぬ雰囲気に気付き、慌てて入口の陰に隠れる。
雨宮が体をよじらせて藻掻いていると、雨宮の口を塞いでいる者がもう片方の手を伸ばした。その手には、雨宮の目前に見せつけるように、鋭利なナイフが握られている。
「【やぁ、Missレイン】」
ドッ…
外国人の男の声とともに、雨宮の胸の中心に、ナイフを根元まで突き刺された。
「!?」
小田は思わず飛び出しそうになる。
胸から血が噴き出す雨宮は、そのまま崩れるように地面に倒れた。
雨宮を刺した男は、小田が写真で見た、鼻のない軍人だ。
鼻のない軍人は、手首に付着した血を眺めている。
「【熱い…】」
雨宮を刺したナイフからは、赤い血が滴り落ちていた。
「【やはり、ナイフはいい】」
そう言って、ナイフを自身の脇に挟み、血を拭き取る。
「【銃なんぞじゃ、この温度は味わえないからな】」
鼻のない軍人が呟いたあと、廃倉庫の奥から2人の兵士がやってきた。
「【マクファーソン軍曹、2人の死体はどうしましょう】」
鼻のない軍人―――マクファーソンは冷たく言い放つ。
「【放っておけ。どうせ日本の警察は、なにもできん】」
クレイの死体に近付き、その胸に刺さっているナイフを抜き取った。
「【“アクロの心臓”は、我が国のものだ】」
そう言いながら、マクファーソンは不敵な笑みを浮かべる。
一部始終を隠れて見ていた小田は、入口の陰からその様子を見ながら慄然していた。
(あの鼻のない人…、論君の写真に写ってた人だ! あ…、雨宮さ~~ん!!)
*****
同時刻、雨宮の家の部屋で、レンはテーブルの前に座りながらボイスレコーダーが録音した基地内の声を聴いていた。
「【~~~】」
軍人達の会話が、ボイスレコーダーから流れる。
英語で交わされる会話の内容は、今のレンの耳にはよく聞き取れた。
(2年前のこと思い出すの紛らわすために始めた英語が、こんなトコで役に立つとはな…。あいつがあたしがどれだけ上達したか知ったら、びっくりすんだろな…)
思い浮かべて口元に弧を描いた時だった。
「【~~~】」
「!?」
聞き捨てならない会話が聞こえ、顔を強張らせる。
聞き間違いでもしたのかというように、もう一度、気になる言葉のところまで巻き戻し、再生ボタンを押して聴き直した。
「【~~~】」
「…っ! マジかよ…!」
危うく、ボイスレコーダーを握り潰してしまいそうだった。
流れてくる会話の内容は、レンの焦りを容赦なく倍増させる。
(この2年間…、ムダにしてたまるか…!)
奥歯を噛みしめ、すぐに雨宮に連絡をしようと携帯電話でコンタクトを取ろうとした。
しかし、呼び出し音が鳴るばかりで、向こうは一向に出ようとしない。
(繋がらない…!?)
「なんで…」
感情のままに、コブシを思いっきり机に叩きつけた。
その勢いで、机の上に置いておいたコーヒーの入ったカップが落ち、粉々に割れる。
「!!」
割れたカップから床に広がるコーヒーに映る、自身の姿を見つめた。
同時に、嫌な予感を覚える。
「……雨宮…、早く帰って来い…!」
やがて、待ちきれなくなったレンはレザージャケットに着替え、リュックを手に外に出ようと立ち上がった。
同時に、ジャケットのポケットから着信音が鳴り、取り出してサブ待受画面を見ると、小田の名前がある。
おそるおそる通話ボタンを押し、耳に当てた。
「……お…、小田? ……どうした…?」
捲し立てる小田の声を聞き、レンはリュックを片手に部屋を飛び出す。
2度と、あの悪夢が繰り返されないことを願わずにはいられない。
.To be continued