01:やっと会えた
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『オレンジの町』。
旅の女は予定通りに目的地の島に到着したつもりだった。
「え!!? いない!!?」
町の住人から聞かされた事実に、雷に打たれた衝撃を覚える。
桟橋にそれらしい船がなかったから嫌な予感はしていた。
「ああ。2週間くらい前だったか…」
トンカチを片手に住宅の復旧作業をしていた町人が、見せられた手配書から視線を上げて思い出すように言った。
「そんなぁ…。せっかくの手がかりが…。最悪…」
がっくりと肩を落とす。
尋ねられた町人は、そんな旅の女の様子を怪訝な顔で見下ろした。
他人の目から見れば、年は10代後半か20代前半くらいだ。
手持ちは肩掛けの袋だけ。
赤と青の菱形柄で丈の長いバンダナが頭を覆うように巻かれ、肩よりわずかに上のショートヘアの黒髪がバンダナから毛先が少しはみ出ている。
上半身は、青のチューブトップを着てへそを出し、下半身は斜め掛けのベルトとショートパンツ、露出している両脚の一部には、魚の鱗のような赤い刺青があった。
「!」
顔を上げた旅の女と目が合い、町人は小さく動揺した。
その2つの瞳が、宝石のような赤色だったからだ。
整った顔立ちと瞳の美しさに、思わず喉が鳴る。
「……おまえさん、“奴ら”に何の用だ? まさか、仲間じゃないだろうな…!?」
復興も終わっていない町に女一人立ち寄り、他の町人たちも注目していたのか、周囲は警戒を強めた。
辺りの空気が変わり、ざわつき始めた町人たちに気付かず、旅の女はキョトンとした表情で答える。
「ん? いや、まだ仲間じゃないけど」
「“まだ”!!?」
「うわ!?」
目つきを鋭くさせてトンカチを振り上げた町人に、旅の女は反射的に体を反らして避けた。
すると目の前の町人は、旅の女を指さして言い放つ。
「奴らの残党だー!!!」
「何!?」
「見かけねえツラだと思えば!!」
「まだいやがったのかぁ!!」
「もうおれ達は臆しねえぞ海賊が―――!!」
聞きつけた町人たちが各々、工具や武器を手に旅の女に向かって突撃してくる。
ぎょっとした旅の女はすぐに桟橋に引き返して逃走した。
「ちょっと!! だから!! まだ!! 仲間じゃないって!!」
失言に気付かず、逃げながらなだめようとするが、火に油だ。
ポコッ、と投げられたバケツが頭に当たった。
「イタッ」
憤慨する町人たちを振り切って自身のボートに乗り込み、急いで島を離れる。
町人たちはそれ以上追いかけて来ず、桟橋から罵声を浴びせるだけだった。
頭のコブを撫でながら、旅の女は再び折り畳んだ地図を広げて位置を確認した。
「はぁ…。骨折り損に加えて危うくリンチに遭うとこだった…」
探している人物は、噂で聞いた通り、短い期間だが、オレンジの町にいたらしい。
しかし、一足遅かったようだ。
次に向かったと思われる場所を聞き出す雰囲気でもなかったので、また自力で噂を頼りに見つけ出すしかない。
脱力して仰向けに寝転び、地図を見上げる。
「この辺で立ち寄りそうな場所…」
そこで目を留めたのは、“偉大なる航路(グランドライン)”の近くに在る、『ローグタウン』。かつて海賊王が処刑された町だ。
「始まりと終わりの町」と呼ばれていたことを思い出し、一瞬、旅の女の目が寂しげに伏せられた。
「……………まだ数週間しか経過してないのなら、十分追いつける。あいつがまだこの海にいるのなら…!! 最速で追いついてやる!!」
気を取り直してボートから立ち上がり、目指すべき場所を指さして宣言するが、目の前には視界に映る空を半分隠してしまうほどの大波が迫っていた。
「……最っあ…」
言い切る前に、波に呑まれた。
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