10:“リコ”
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「ピュロロ…ッ!」
入り江では、ザッギ海賊団の漁網によって捕まったリコが、数人がかりで無理矢理岸に引き上げられていた。
「離してやれよ!!」
「かわいそうだろ!!」
甲板の上から職人の男達が声をかけるが、近くにいたクルーに容赦なく殴られ、黙らされる。
「うるせェ奴らだな!!」
「ガーリィーさんが欲しがってたシャチだ!! こいつがのこのこと馬鹿みたいに戻ってきたのが悪いんだろうが!!」
暴力に逆らうことができない職人達は、奥歯を噛みしめて黙って見ていることしか許されない。
「例のシャチじゃナイか!」
「ザッギ船長!!」
球体の武器―――シチテンハッキュウ。
それに乗ったまま近付いてきたザッギは不気味な笑みを浮かべ、リコを見下ろす。
「皮はガーリィーにくれてやるとして、骨はどうしてやろうか…。どこに飾ってほしいナイか?」
「ビュヤ―――!!!」
ザッギの姿を目にした瞬間、リコは唸りながら歯を剥いて威嚇した。
ザッギから見れば無駄な抵抗だ。くつくつと笑い、「そうだ」と閃く。
「我の船長室に飾ってやるしかナイ!!」
「さすがですザッギ船長!!」
「我らがキャプテン・ザッギ!!」
クルー達が盛り上がる中、聞いていた職人達は苦虫を嚙み潰したような顔を浮かべた。
「ザッギ…!!!」
「「「「「!!?」」」」」
そこにいるはずのない声に、視線がそちらへ集中する。
「フォニアムさん!!?」
先に声を上げたのは、フルットの父親だった。
岩陰から姿を見せたのは、松葉杖をついたフォニアムだった。
フォニアムにとってはテューバ山は庭のようなものだ。松葉杖をつきながらも、出来るだけ近道を通って入り江に現れたのである。
「ザッギ…。お前達は…何とも思わないのか…。海賊だと知らなかったとはいえ、半年前のあの日、壊れかけた船と一緒に流れ着いたお前達を助けたのは、この町の人間だぞ!!!」
ザッギ達がモニカ島に流れ着いた時、海賊船含めてクルー達もぼろ雑巾のようだった。
船員を何十人も失ったことは事実だったが、本性を表すまで、「海賊」とは一言も明かさなかった。
ぎりぎりまで弱者を装ったザッギ達は、十分に動けるまで回復したあと、すぐさま町の女達を人質に取り、職人達の腕を見込んで海賊船と武器を作らせた。
思い出すだけで屈辱と憤怒でフォニアムの体が震える。
大切な思い出があるこの場所を使用されているので尚のことだった。
ザッギは、腸が煮えくり返るほどのフォニアムの怒りでさえ鼻で笑って一蹴する。
「感謝はしてるぜ? バカなお前らが我らの治療をしてくれたうえに、こうやって手伝ってくれてるおかげでまた海に出られるナイ…。お前らが作った船と武器でもう一度海で暴れさせてもらうナイ!!」
「ゲスめ…!!」
「黙らナイか! またこのシャチを庇って撃たれたいのか…!?」
「黙るのはお前だ!! どうせおれ達を解放する気などないくせに…!! みんなもわかっているだろう!?」
「「「「「……………」」」」」
フォニアムの言葉は図星だったが、誰も口に出さなかった。
どちらにしても、身内を人質にとられているのだ。安易に逆らうことなどできはしない。
「あとお前さっきから偉そうにタメ口で気に入らねェじゃナイか!!」
シチテンハッキュウが数弾発砲する。
「!!! ぐ…っ!!」
当たりはしなかったが、フォニアムは驚いて尻もちをついた。
「当たりやすい体勢になったな!」
「やめてくれ!!!」
間に入るように駆け付けたのは、フルットの父親だった。
驚くフォニアムに背を向け、両腕を広げてザッギと向かい合わせになる。
「フォニアムさんだって奥さんを取り返すためにアンタ達に貢献してきたんだ!! こんな仕打ちはあんまりじゃないか!!」
「島の宝なんだ!! 殺さないでくれ!!」
「この人がいたからおれ達は…!!」
ポルン、ザクスの父親に続き、他の職人達も集まってきた。クルーに阻まれても力づくで振り切ってフォニアムの元へ駆けつける。
「島の宝ァ? ………なるほど…。確かに腕は一人前だ。重宝しナイとな…。我らの海賊船で船大工をやってくれるな?」
「……………」
フォニアムの答えはもちろんノーだ。
しかし、答えた瞬間に職人達もろともハチの巣にされてしまうだろう。
「……町の人間を殺さないでくれるなら……。…そして…、頼む…、おれの親友を返してくれ…!」
「ダメだ!! アレは我のお気に入り。まだわかってナイようだな…。相手にしているのは天下の海賊様だぞ。交渉ではなく命令だ。船大工をやれ…!! 船に乗ればいつでも“親友”と一緒だぞ。わかってナイな!」
「…っ!! 貴様…っ!!」
「反抗的な目だな。やはり何人か殺してわからせるべきか。テメェの立場をな!!」
ザッギがレバーを操作すると、球体の左右横の枠組み部分から穴が空いた。
銃弾が飛び出すことを知っていたフォニアムは周りに「お前達!! 逃げろ!!」と声を張り上げる。
「ピュロ―――ッ!!!」
「うわ!!」
「こいつ!!」
漁網に包まれ、クルー達にしがみつかれながらも思い切りジャンプしたリコは、後ろからシチテンハッキュウに体当たりした。
「ぐっ!!?」
背後からの奇襲に対応できず、ザッギはシチテンハッキュウごと半回転してあらぬ方向に銃弾を発射し、ザッギの味方に向けて乱射してしまう。
「ぐあああ!!」「ぎゃああッ」「ひぃぃ!!」
「お前達ィ!!」
自分達を守る行動に、フォニアムと職人達はリコを凝視した。
「ピュロ!」
「お前…」
フォニアムは眉根を寄せ、リコの首にかけられたネックレスに目を留め、「守ってくれたのか…。アイツを守れなかったおれを…!」と頭を垂れて涙を流す。
「クソが…!! 悪いな、ガーリィー…。皮をズタズタにしそうだ…!! 許さナイ…!!!」
味方を削られ、ザッギのこめかみに大きな青筋が浮き上がった。
標準がリコに定められる。リコの漁網にしがみついていたクルー達は急いでリコから離れた。
フォニアムと職人達が「やめろ」「待て」と怒鳴ったが、ザッギは知ったことではない。
「死ねよクソシャチィ!!!」
バラララッ!!
リコを狙って乱射される銃弾。
「!!」
リコに着弾する寸前、飛び出してきた人影が腕を交差して守りの姿勢をとり、代わりに銃弾を喰らった。
突然の侵入者に、乱射を止めたザッギは声を荒げる。
「何者だ!!?」
「ただの見習い」
ザッギの目の前に現れたのは、ルビーだった。弾丸がおさまったことで姿勢を戻す。
背筋を伸ばして立つその体には、もろに受けたはずの弾痕が見当たらない。
なぜほとんど無傷なのか、と疑問を浮かべるザッギだったが、ルビーは自分の体を軽く叩いてホコリを払う仕草をしたことによって絶句する。
払い落されたのは、ホコリではなく、今しがた撃ち込んだはずの銃弾だった。硬い物にぶつかったのか、どの弾も先端から潰れている。
ニヤリと笑ったルビーの口からは、鋭いギザギザの歯が見えた。
「町の人はあたしに近付かない方がいいよ。“こっち”だと、いつもより力加減が出来ないからね…」
パキパキ、とガラスにヒビが入るような音を立てながら、ルビーの首の付け根から両腕にかけ、青い鱗に覆われていく。
「青鱗(アズール)」
.To be continued