10:“リコ”
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
リコに連れ去られたバギーは、リコの背中に乗って入り江に向かっていた。
「どこ連れて行く気だ! 船に戻れリコ!」
「ピュロッ」
今更暴れたところで周りは海だ。リコから滑り落ちれば溺れてしまう。
テューバ山の裏手に来ると、ザッギ海賊団の海賊船がバギーの視界に入った。
直後、バギーは仰天して声を上げる。
「なんじゃこりゃあ…!!?」
慌てて自分の口を塞いだ。
目に飛び込んできたのは、ビックトップ号より倍大きな海賊船だった。
朱色の船体の左右からは何十発も撃てそうな物騒な砲身が顔を出し、甲板には船内へと続く中華風の屋形が見当たった。
帆や海賊旗はトラ柄のドクロが描かれ、船首には、鋭い歯が並んだ動物の骨が使用されている。
船大工ではなくとも、腕のいい職人達に作らせるとこうなるのか、とバギーは歯噛みした。
「ハデ好きめ…っ」
悪態をつくバギーを乗せ、リコはゆっくりと海賊船に近付く。
「なるほどな。おれ達の海賊船だと攻めたところで危ないって判断したんだな、リコ」
「ピュロロ…」
その返事を肯定ととったバギーは「だからっておれ様をこんなところに連れてきたってなァ…」と文句を言いかけたところで、呻き声に気付いた。
入り江の岩陰から窺うと、海賊船のすぐ傍で苦しそうに蹲っている男がひとりと、煩わしそうにそれを見下すザッギ海賊団のクルーがひとりいた。
蹲る男は、フルットの父親だった。
「役立たずめ。フラフラと鬱陶しい! しっかり働け!」
「頼むよ…。もう少し休ませてくれ…。職人にとって寝不足は天敵なんだ…。こんなものじゃなくて、誰かに楽しく使ってもらえる楽器を作りたいんだよ…!」
「こんなものだと…? 完成間近だからって調子に乗ってんじゃねェぞ…!!」
フルットの父親は容赦なく腹を蹴り上げられ、吐きそうになって咳き込んだ。
クルーはせせら笑い、その背中を何度も踏みつける。
「お前の女房なんていつでも殺せるんだぜ。てめェもガキもだ!!」
「うう…っ」
「ははははっ! ザッギ船長に逆らうなァ!!」
ゴンッ!
「ぐは…」
倒れたのは嘲笑していたはずのクルーの方だった。
「え…」
「よっしゃ不意打ちハデに成功!」
切り離した両手で手頃な岩をつかみ、クルーの頭をどついたバギー。
周りに他の見張りはなく、チャンスとばかりにフルットの父親に声をかける。
「ザッギってのはどこだ? 財宝のありかも知ってるなら教えろ!」
「あなたは確か…広場にいた……」
フルットの父親はルビーと一緒にいたバギーの姿を覚えていた。
「あ、ありがとう…。ザッギはたぶん、この船を一望できる場所にいるはずだ。えーと、財宝はおそらく…船の中かと…」
「なるほどそうか」
バギーは思案する。
(先に船長を叩いて部下と海賊船を無力化してから、じっくりといただくとするか!!)
とんでもなく悪い顔を浮かべているが、背中を向けているのでフルットの父親からは見えない。
一方でフルットの父親は突然訪れた希望に目を輝かせていた。
(今まで助けも呼べなかったのに…。もしかしてこの方は、救世主…!?)
海賊とは考えず、何か勘違いしている。
「早速、ザッギってのに会いに…」
「ピュロ―――ッ!!!」
瞬間、リコが入り江中に反響するほどの鳴き声を上げた。
「!!?」
バギーとフルットの父親は何事かとそちらに振り返る。
「リコ!! やめろ大声を出すな!!」と慌てて「しーっしーっ」と人差し指を口に当てるバギー。
「リコ…?」とフルットの父親は不思議そうな顔をした。
「ピュヤ―――ッ!!!」
「!? リコ、お前…、泣いてんのか?」
リコは真上を見上げ、何かを訴えるように泣き喚いている。
「何だ!」
「どうした!?」
騒ぎを聞きつけてクルー達のばたばたと慌ただしい足音が近付いてきた。
バギーは面倒だと言わんばかりにナイフを取り出そうとしたところ、フルットの父親は小声で尋ねる。
「他にお仲間は?」
「船でこっちに向かってるはずだ。そんな話をしてる時にリコ(あいつ)に無理やり連れてこられたんだ!」
「それまで隠れててください! おれ達は常に見張られていますが、あなたなら身を潜めても怪しまれないはずだ。通れるかはわかりませんが、この場所には目立たないところに穴がいくつもあります!」
そう言いながらフルットの父親は自分の見張りを岩陰まで引きずって一時的に隠した。
バギーは遠慮なくそれに従い、移動する。
「おうよ! 遠慮なくそうさせてもらうぜ!」
「お前も隠れろ! また撃たれるぞ!」
フルットの父親はリコに呼びかけるが、興奮しているのかリコは聞き入れずザッギ海賊団の船から離れようとしない。
ザッギ海賊団のクルーどころか、船作りを強要されている他の町民までが何事かと欄干や船内の窓から身を乗り出した。
「おい! あいつって…!」
「何で戻ってきたんだ…!?」
船内で武器作りをさせられていたザクスとポルンの父親達が、窓から顔を出して目を見張る。
バギーはその場にいる全員の視線がリコに向けられている隙に、子どもが通れるサイズの穴を見つけていた。
どう見ても身を潜めるには小さすぎる穴だったが、体をバラバラに出来るバギーには関係がなかった。
「おれの船が来たところで、あんな物騒な海賊船とやりやってたらひとたまりもないぜ。どっちにしてもザッギの首をとらねェことには…。この穴がザッギって奴のところまで繋がっていれば問題ねェんだが…。他の奴らの目がそっちに集中してる隙におれ様がハデに大将の首をとってやろーじゃねェか!!」
ぽん、と首を切り離し、続いて上から下をバラバラにさせて穴を通る。
足で歩けて潜れるルートなら、垂直でない限り問題はなかった。
迷路のような構造で、上り坂もあれば下り坂もあり、たまに水路のような場所へと抜けた。
ある程度進んだところで、どこかから笑い声が聞こえる。
「完成したナイか!!」
「はい!! ザッギ船長!!」
聞き逃さなかったバギーは、上りとなっている通路を進んだ。
なんとか生首を出せる穴を見つけて窺うと、少し開けた場所で、球形のジャングルジムみたいなものに入るザッギと、わくわくした表情で凝視する数人のクルー達がいた。バギーが覗いている穴は天井に近く、気付かれにくい位置にある。
(なんだありゃあ…?)
見ると、球形のジャングルジムみたいなものは、ザッギひとり乗り込める大きさだ。鋼鉄のやや太い枠組みのため、外側からも本人の姿は確認できる。中には椅子と、その目の前にレバーが何本も設置されていた。
椅子に座ったザッギが試しにレバーを引くと、球体が横にゆっくりと回転し、さらに操作すると縦に回転して転がった。中の人物は座った状態で安定しているので、外側だけの枠組みだけが動く仕組みだ。
「ぎゃははっ。ガキの遊具みたいな乗り物じゃねーか」
バギーは小声で嘲笑する。
しかしザッギは吊り上げた笑みを緩めない。
「おい、ナイフでもいいから勢いよく投げてみろナイ」
「い、いいんですか…?」
「問題ナイ!」
心配そうに顔を見合わせたクルー達は、それぞれナイフや剣を構え、言われた通り勢いよくザッギに向けて投げつけた。
小さなナイフが枠を通り抜けてしまえば中にいるザッギに当たってしまうのだが、投擲された瞬間にザッギがレバーを操作すると、球体はとんでもない速さで横回転し、刃物をすべて弾き飛ばしてしまった。盾となった枠組みは一切傷ついていない。
「!!!??」
飛んできた回転ナイフがバギーの生首を縦に割った。バラバラでなければ不幸な事故だっただろう。
「さーらーに!!」
高揚しているザッギが別のレバーを引くと、嫌な予感を察知したクルー達は一斉に近くに岩の後ろに飛び込んだ。
バララララララッ!!!
球体の左右横の枠組み部分から穴が空き、銃弾が飛び出す。回転を加えれば縦横無尽の機関銃となった。
バギーも弾が当たりそうになったので生首を引っ込める。
ザッギの周りの岩壁は無数の弾痕が残った。
「ははははは!! いいじゃナイか!! 我の海賊船も完成した暁には、町の人間を、この“シチテンハッキュウ”の試し撃ち台にしてくれるナイッ!! そして…!! ―――誰が見ても人かゴミか判別できなくなるくらいグチャグチャのハチの巣にしてやるぜ、アクタ―――ズ!!!!」
半年で積みに積み上げた恨みが込み上げ、高笑いと共に叫ぶザッギ。
恐れおののくクルー達。
バギーはすでに脱兎の如く逃走していた。
(ムリでェ~~~~~す!!! ハデに勝てるわけねェだろおおうぐァァァァ~~~~~~っ!!!)
.