00-3:呪いの赤
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数分、それとも数十分が過ぎた頃だろうか。
あたしとバギーは睨み合い、「フン」と顔を背けてから、自分の顔を擦った。
頬がヒリヒリする。
バギーに散々顔をつねられたせいだ。
最初の一撃のコブだってまだ痛む。
その分やり返してやったから互角だ。
「終わったか?」
制止は諦めて見守っていたシャンクスが近づいてきた。
バギーの肩を叩いて諭す。
「バギー、お前はもうちょっと大人になれよ」
「無礼なガキを叱りつけるのも大人の仕事だろうが!」
「ちょっと! 子ども扱いしないでくれる!?」
あたしは肩をいからせてシャンクスに接近して凄んだ。
「『島守』っつったけ? 年はいくつだ?」
普段は年なんて気にしたことなかったが、あたしは両手の指を立てて数え、出した数字を見せつけた。
「……たぶん」
「ぎゃははっ! ハデにガキじゃねーか!」
腹を抱えて笑ったのはバギーの方だ。
ゴッ
無言でスネを蹴ってやった。
「痛て!!」
「アンタ達こそいくつなの!?」
「おれ達どっちも13」
ぴょこぴょこと片足を上げて痛がるバギーの代わりに、シャンクスが自慢げに答える。
右手の指を1本、左手の指を3本立たせた。
(ぐう。2ケタ…)
あたしより指の数少ないはずなのに羨ましい。
「もう1ラウンドいっとくかぁ!? ガキだからって遠慮しねーぞ!!」
「上等よ! 返りうちにしてやる!!」
シャアアア、と威嚇し合う。
傍らのシャンクスは「またかよ…」と左手で顔を覆って呆れていた。
「島守!!」
遠くから唐突に声を掛けられた。
前髪の隙間から姿を捉える。
走ってきたのは同じ島の住人である子ども―――テントーだ。
あたしより年上(あ。シャンクスたちと同じ年か)で、島の役割は『羊飼い』だ。
頭には大きい白の三角帽子を被り、あたしと同じ羊毛の服を着ている。
「テントー!」
その名で呼ばれるのが不快なのか、あからさまに嫌な顔をされた。
いや、それもあるが、あたしのすぐ傍にいるシャンクスとバギーを警戒しているのだろう。
「お前ら…、あいつらの仲間か? 島守に何してる…!?」
早速殺気立っている。
手袋をつけた右手の人差し指を曲げて関節を鳴らした。
「あ? てめーこそ何だケンカ腰に」
「あいつらって船長たちのことか?」
敵意を向けるテントーに、シャンクスとバギーも肩を並べて少し身構える。
あたしはそんな3人の間に割って入った。
「あたしは何もされてない。見てわかるでしょ? 何か、されてたら…」
言わずとしていることがわかったのか、テントーは舌を打つ。
面倒事を招き入れやがって、と言いたげだ。
「仕立屋が呼んでるぞ!」
「ああ…。でしょうね」
叔母のザクロの顔を頭に浮かべた。
久々に激怒しているのではないか。
「仕立屋?」とシャンクスが首を傾げて聞くので、「あたしの叔母さん」と正直に答えた。
「島の役割くらいきっちり守れ! 役割ひとつ欠いただけで命取りなんだからな!」
吐き捨てるように言って踵を返してしまった。
あたしは向けられた背中に舌を出す。
「………んん…」
前髪の先をいじり、何とも言い難い声を漏らした。
さて、どうしたものか。
呼ばれたからには行くしかないのだが。
テントーの様子からして村が襲われたというわけではなさそうだ。
「大変な役割みたいだな、島守」
聞いてたシャンクスはテントーの背中を見送りながら言った。
あたしは肩を竦ませる。
「まあ…。こういう事態以外は最低にヒマなもんだけどね。村の大人より面倒で退屈な仕事だし…」
そうだ、ヒマで、ヒマで、ヒマで、ヒマで…。
怒りが湧いてくるほどだ。
「それで、バギーはどこ行くの?」
いつの間にか気付かれないように別方向に歩いて行こうとするバギーの腕をつかまえる。
「げ」
「げ、じゃない」
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