07:もう一度、宴を
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「――――って言った先からゴボゴボ!!」
「泳いでるのに大口開けない方がいいよ」
ある程度道を進んでから、川を通って湖に入ることにした。
ルビー、バギー、リッチーは丸太につかまりながらゆっくりと川の流れに従って下っていく。
流れはきつく、逆行してタルの小屋に戻るのは難しい。
「ぎゃあああ」
「ガウウウウウ」
流れに身をまかせっぱなしにしていたら、10メートルの滝から落下した。
すぐにルビーは赤鱗の脚で泳ぎながらバギーとリッチーを水面上まで引っ張り上げ、もう一度丸太につかまらせる。
バギーは文句を言おうと口を開けたが、その前にルビーの片手に塞がれた。
「見つけた」
滝の落下先は湖に繋がっていた。
バギーはルビーの視線を追い、明かりの灯された2隻の船を発見する。
ビックトップ号と、パッローネ海賊団の船だ。
ぶつからないギリギリの距離で並び、木版がかけられて互いの甲板への行き来が可能にされていた。
ルビー達はなるべく音を立てないように泳ぎながら近づく。
丸太の先端が、コン、とパッローネの船にぶつかるまで近づいた時だ。
「おい、何か音しなかったか?」
パッローネのクルーが微かな音に気付いて甲板から水面を見下ろす。
つられて他のクルー達も覗いた。
水面には、1本の丸太が浮いているだけだ。
「丸太だ。流れてきたんだろ」
なんだ、と肩を落とすクルー達。
「あいつらの船長、やってくると思うか?」
「いやいや、来ねぇだろ。今頃、尻尾まいて逃げてるんじゃねーか」
「それか、島の罠に引っかかって死んじまってるかもな」
「そうだとしたら、おれたち、死体が身につけてる宝の鍵を取りに行かされるんじゃねーか?」
「うげ…」
「パッローネ船長の今の機嫌じゃ、あいつら、夜明け前に殺されちまうかもなぁ。ライオンにも逃げられちまったらしいし」
「丸焼きにして食べるつもりだったのになぁ。美味いのか? ライオンって」
「うははっ。知るかよ」
ルビー達は丸太から離れ、パッローネの船の陰に隠れていた。
「あぶねぇ…」
クルー達の話を聞いてリッチーは真っ青になっている。
ルビーは甲板の会話に耳を澄ませた。
「せんちょ、パッローネの船から侵入しようよ。敵船の物資漁るのに忙しいみたいだし」
ビックトップ号で鉢合わせを懸念して提案する。
バギーは少し焦った様子で「だったら急ぐぞ」と促した。
「根こそぎ取られる前に取り返してやる…ッ!!」
ルビーはバギーの切り離した足を、船体の側面にある開けっ放しの窓に放り込み、浮遊したバギーの身体にリッチーと共にしがみついて窓から船内に侵入し、パッローネのクルーがいないか確認しながらこっそりと進む。
「!」
廊下の奥にある扉が開こうとした。
扉の隙間からクルー達の声が聞こえる。
「ヤバッ」
「こっちに逃げ込むぞ!」
咄嗟に、切り離したバギーの右手がすぐ傍にあった扉を開け、ルビー達は転がり込むように入った。
幸い、部屋は無人だ。
奥からやってきた足音も疑う事なく部屋の前を通過する。
「ここは…」
ルビーは部屋を見回した。
部屋の奥には長方形のテーブルが配置され、左の壁には書棚があり、右の壁には、たくさんのワインボトルが飾られた、木製のワインラックが並んでいた。
すべてコレクションだろう。
ルビーとバギーは嫌な予感がした。
「ここってもしかして船長室じゃ…」
「せんちょの部屋にちょっと似てるしね」
「おれ様の部屋の方がデカい」
フン、と鼻を鳴らすバギー。
「あいつの弱みがないか探してやろうぜ」
「わっるい顔してるね。最高」
リッチーが思わずビビるくらいのニヤリと笑うバギーに、ルビーは親指を立てた。
早速、船長専用の机を罪悪感もなく漁り始める。
「うわ。食べかけのアメが入ってた」
後ろでリッチーが腹の虫を鳴らしたので「リッチー、食べちゃダメ」と注意した。
「テーブルの上もビスケットのカスまみれだな。んがあああッ。なんかベチョっとしやがった!」
「最悪…」
「んのヤロウッ、机の中くらいキレーにしやがれってんだ!」
バンッ、とバギーは怒りに任せて乱暴に引き出しをしめる。
「?」
そこでルビーは、机の下に何か落ちているのを見つけた。
「せんちょ、ちょっと一緒に屈んで」
屈みたくても、ガムで互いの体が引っ付いたままでは屈みにくいのだ。
「何か見つけたのか?」
拾ったのは、くしゃくしゃに丸められた新聞の一面だ。
「“アクターズ、ザッギ海賊団を襲撃…”」
海賊船を半壊させて財宝を根こそぎ奪い、姿を消したそうだ。
日付に目をやる前に、覗き込んだバギーが「半年前の記事だな」と言った。
「この前は海軍がやられちまったらしいが。海軍からも海賊からも目の敵にされちまって、相変わらず命知らずな奴らだぜ」
関わりたくないのか、苦い顔をする。
そんな横顔を見つめるルビーの目は丸くなっていた。
「…せんちょ、“アクターズ”を知ってるの? ッ!?」
ビシッ、とデコピンを食らう。
「馬鹿にしてんじゃねーぞ。知らねえほうがハデにどうかしてるだろ。おれは直接遭ったことはねーけどな。10年以上前から世界のあちこちで暴れまわってる、名前どころかまともに姿も確認できてない正体不明の5人組で、政府も血眼になって探してるくらいは有名な奴らだ」
「5人組…。まあ…、そっか…」
「一時期、なりを潜めていたらしいが、最近になって過激さを増して戻ってきたみたいだな」
「せんちょ!!」
思い出しながら言うバギーにルビーは声を張り上げた。
びっくりすると同時にリッチーと一緒にルビーによって床に押さえつけられる。
「!!?」
何かが頭上を通過し、壁に連続で突き刺さったのが見えた。
壁に突き刺さっていたのは、螺旋状の大きく鋭い針だ。釘のように見える。
もし気付かずに立ちっぱなしだったら今頃穴だらけだった。
「貴様ら、船長の部屋で何をしている」
静かに部屋に入ってきたのは、パッローネ海賊団副船長のサポーレだ。
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