06:死んで守った
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
満天の星空の下、半壊した石造りの建物の中で5人の男達はたき火を囲み、皮革の水筒の中身を回し飲みしていた。
『美味ぇ…!』
『ああ…っ。酒だ…。間違いなく…本物の酒だ…ッ!』
『何年ぶりだろう! 目元まで染み渡るぜ…』
涙を浮かべるほど、男達は久方ぶりの酒の味に感極まっていた。
『ちゃんと全部飲み干せよ。隊長共に見つかったら、五体満足で酒を飲むこともできなくなる』
水筒の持ち主は、書き込みを終えて手記を閉じ、仲間達の喜ぶ姿を見回しながら言った。
『ヴィンセント、どうやって持ち込んだんだ』
『持ち込みすらできねぇだろ。酒類は全部禁止になってんだからな!』
水筒の持ち主―――ヴィンテージ・ヴィンセントは口角を上げながら答える。
『持ち込んだんじゃない。作ったんだ。ブドウを見つけたからな。おれの家は酒造家だ。前に話したろが。……まあ、昔の話だけどな。その酒も、即席すぎて売り物するほどでもねぇ。親父が飲んだら吐き捨てられた挙句にゲンコツ喰らってるとこだ』
ヴィンセントは、懐かしさで切なそうに目を細めた。
数年前に禁酒令が発令されてからは、各国の多くの酒造家たちは働く場所を失い、路頭に迷っていた。
ヴィンセントとその家族も法律に従うしかなかった。
『禁酒令なんて気の迷いだ。きっとすぐに酒を造れるようになれるさ』
仲間の一人がヴィンセントの肩を叩く。
『ああ。故郷に帰ったら、誰に反対されようと、とびっきり美味い酒をつくってやる』
『おれ達も誘ってくれよな』
『もちろん』
『おれの妻も呼んでくれ。その辺のヤロウ共より酒豪なんだ』
『だったらおれの息子も!』
距離を詰めてくる仲間達にヴィンセントは大口を開けて笑った。
『ははははっ! お前らの家族の分もいっぱいつくってやるから。朝を越えても飲み切れないほどな』
遠くで号令の声がかかった。
大勢の人間の足音と叫びが響き渡る。
先に立ち上がったヴィンセントは、壁に立てかけた戦斧を手にした。
『だから今夜も生き延びろ。勝っても負けても、生きてさえいれば、美味い酒が飲めるぞ…!!』
男達は各々武器を携え、雄叫び、戦火の中へと突っ込んだ。
.